サーバーが落ちて損をしても請求先はありません

最終更新:2026年10月7日

海外FXのブローカーのサーバーが落ちて決済できなかった。価格が飛んで想定外の値で約定した。そのとき会社に責任を問えるのか。答えは、どの規約にも同じような形で書いてあります。

30社の顧客契約から、免責と責任制限の条項を1社ずつ読みました(2026-09-25に読み直し)。各社の条項は下の表に条項番号つきで並べています。通信の遅延とシステム障害を免責に挙げているのが28社、間接損害が26社、逸失利益が24社。EMCTradingは規約文書が公開されていないので、判定できません。

そのうえで3社が、賠償額に上限を置いていました。金額で書いている社と、計算式で書いている社があります。足切り基準(このサイトでいう最低条件です)を満たした2社のうち1社も、この3社に入っています。

結論:何が免責されているか

免責の対象 社数 備考
通信の遅延・伝送の失敗 28社 TradeQuoは条項が見当たらず。EMCTradingは規約非公開
システム障害・技術的トラブル 28社 同じ2社を除く
間接損害・派生的損害 26社 AXIORY・FXCCは語がなく、Axiは予見可能性で線を引く。EMCTradingは規約非公開
重過失・故意・詐欺は免責の対象外という但し書き 11社 8社は特定の条項にだけ置いている(表の△)。10社は見当たらない
逸失利益・機会損失 24社 Tickmill・HYCM・EBCは記載なし。AXIORY・BigBossは限定的
賠償額に上限を置いている 3社 IS6FX・IC Markets・XMTrading
規約非公開 1社 EMCTrading

社数は下の一覧表の○の数を数えたものです。△は「特定の場面の条項にだけ置いている」という意味で、社数には入れていません。たとえば明白な誤り(Manifest Error)の条項だけに重過失の但し書きがあり、一般の免責条項にはない、という書き方がいくつもありました。

30社の条項一覧

左から、条項番号、通信の遅延、システム障害、間接損害、重過失の但し書き、逸失利益、賠償額の上限です。○は一般の免責条項に書いてあるもの、△は特定の場面の条項にだけあるもの、×は探して見つからなかったものです。

ブローカー 条項 通信の遅延 システム障害 間接損害 重過失の但し書き 逸失利益 上限
AXIORY 利用規約 第23条(TECHNICAL ISSUES)ほか ○ 23条(b) 接続不良または不通(顧客側・AXIORY側の双方を含む) ○ 23条(a) ハードウェア・ソフトウェアの障害・機能不全 × 間接損害という語が見当たらない △ 6.1(e) 表明保証の条項で、責任制限の但し書きではない △ 14.8 建玉を断った場合に限り、実損と逸失利益の責任を負わない ×
XMTrading 利用規約 第84.2〜84.4項(Disclaimer and limitation of liability) ○ 84.3 電子・機械設備および通信回線(電話・ケーブル・インターネット)の障害 ○ 84.3 同項 ○ 84.2 結果的・付随的・特別・直接・間接 △ 20.5 明白な誤りの条項に限る。84条には但し書きなし ○ 84.2 LOST PROFITS・TRADING LOSSES ○ 84.4 直近6か月の収益額を超えない
HFM 顧客契約 第40.3項・第42条・第5.3項 ○ 42条 telecommunications failures or disruptions(不可抗力事由) ○ 42条 system outages/11.5 プラットフォームのバグ・不具合 ○ 5.3・2.2「direct or indirect loss」 ○ 40.3(a) 会社の重過失・詐欺・意図的な義務不履行を除く ○ 40.3(c) loss of opportunity(機会損失) ×
Axi 顧客契約 第12.1項(EXCLUSION OF LIABILITY) ○ 12.1(i) プラットフォームの不稼働、データの遅延・誤り・欠落 ○ 12.1(i) システムとデータのエラー、ソフトウェアのウィルス △ 間接損害の語はなく、12.1(b)「合理的に予見できなかった損失」で線を引く ○ 12.1(e) 当社の詐欺・過失・故意の懈怠を除く(過失一般まで例外) ○ 12.1(a) loss of profits・loss of revenue・loss of opportunity ×
EBC Financial Group ウェブサイト利用規約 第4.3項(日本居住者の顧客契約は掲載が見当たらず) ○ 通信の障害・歪み・遅延(ウェブサイト利用規約) ○ 4.3.1 ウェブサイトの不具合・アクセス不能/4.3.3 機器・ソフトウェア ○ 4.3「direct or indirect loss」 × × ×
ThreeTrader お客様規約 第25.9項・第2.3項・重大な誤りの条項 ○ 25.9(a) 送信エラー/(b) データの遅延 ○ 25.9(a) 技術的な不具合・機能不全 ○ 2.3・重大な誤りの条項(consequential losses) △ 重大な誤りの条項は「当社の詐欺がない限り」で、重過失は例外に入っていない ○ 重大な誤りの条項(loss of profits) ×
FXGT 利用規約 第9.3〜9.4項・第24条・第28.18項 ○ 9.4 インターネットまたは電力の障害に起因する提供不能 ○ 9.3 メンテナンスでシステムが使えない期間の損失/28.18 技術的な不具合 ○ 28.18(コピートレードの節) × gross negligence・wilful の語が見当たらない ○ 28.18 loss of profits・loss of business(同じ節) ×
TitanFX 利用規約 第3.14項・第5.23条・第14.6条 ○ 3.14(a) 送信エラー・インターネット障害/(b) データの遅延 ○ 3.14(a) 技術的な不具合・誤作動・システムエラー ○ 5.23 間接的もしくは派生的損失 ○ 14.6・5.23 詐欺・故意の不正行為・重過失を除く ○ 5.23 逸失利益 ×
BigBoss 顧客契約 第5.7条・第5.9条(英語) ○ 5.7 equipment, communication and systems failure and breakdowns ○ 5.7・5.9 ハードウェア・ソフトウェア・通信回線の障害 ○ 5.7「directly or indirectly」/consequential damage × 会社側の重過失・故意を例外にする但し書きが見当たらない △ 5.7 は「loss, actual or projected」。loss of profit の語はない ×
Exness 顧客契約 第13.4項・附属「Technical Issues」1.3〜1.5 ○ Technical Issues 1.4 通信の中断・遅延・問題 ○ 同1.3 顧客のシステム障害/1.5 メンテナンスによる利用不能 ○ 13.4 consequential, special or indirect losses △ 市場環境の条項に「過失または故意の場合を除く」。13.4 に但し書きはない ○ 13.4 loss of profits・loss of opportunity ×
iFOREX 顧客契約 第14.10項・第8.2項 ○ 不可抗力の列挙に「伝送・通信・コンピュータ設備の故障または障害」 ○ 同(電源の中断、電子・通信機器の障害) ○ 14.10 whether direct or indirect/consequential loss × 14.10 は「contract, tort, negligence, or otherwise」と過失まで含めて免責 ○ 14.10 loss of profits(見込み利益の不受領を含む)・8.2 ×
Tradeview 顧客契約(注文の受付を断る条項)・取引規約 ○ 伝送・通信設備の故障による価格や注文の遅延 ○ systems failures・不正アクセス・盗難 ○「directly or indirectly」/取引規約に lost opportunity × ○ lost profits・trading losses(取引規約にも lost profits, lost opportunity) ×
WeTrade 顧客契約 第15.1項(Indemnification)・第3.9項 ○ 3.9 指示や連絡ができなかった場合(当社の詐欺・故意の懈怠・重過失によるときを除く) ○ 技術的な問題による価格の遅延(3.13)ほか ○ 15.1「directly or indirectly」/direct, indirect or consequential losses ○ 15.1 詐欺・重過失・故意の不正行為を除く ○ loss of profit・loss of revenue(制裁条項ほか) ×
Vantage Trading 顧客契約 第14条・第21条(日本語訳) ○ 14条(b) 取引プラットフォーム・システム・ネットワーク接続・通信における遅延、欠陥または障害 ○ 14条(b)/10条 ソフトウェアの不具合 ○ 直接的または間接的な損失(リスクの条項) △ 設備の損失について「当社の過失または故意の不履行に直接かつ単独で起因する場合を除き」 ○ 21条 逸失利益を含む直接的・間接的・結果的損失 ×
IS6FX 利用規約(Mauritius)「Company Liability」・利用規約(Comoros) ○ ウェブサイトと取引プラットフォームの中断・伝送の停止 ○ 同 ○ whether direct or indirect(loss of business を含む) ○ 重過失・故意の不作為・詐欺を除く ○ loss of profit・loss of opportunity ○ 重過失・故意・詐欺の請求であっても、賠償の総額は当該口座の入金額から出金額を引いた額が上限
Land Prime ウェブサイト利用規約(Website Terms) ○ 電子・機械設備および通信回線(電話・ケーブル・インターネット)の障害 ○ 同 ○ direct, indirect, incidental, special or consequential damages × ○ loss of profits ×
XS.com クライアントサービス契約 第6.7項・第7.20項 ○ 6.7(a) インターネットその他の電子媒体経由の指示・通信による損失 ○ 6.7(b) ウィルス・欠陥・機能不全による機器やソフトウェアの損害 ○ 6.7(a) consequential loss △ 7.20 明白な誤りの条項に但し書き。6.7 には但し書きなし ○ 7.20 loss of profits, income or opportunity ×
Milton Markets 利用規約(バージョン6.2)第23.1項ほか ○ 23.1(a) 送信の失敗または遅延 ○ 23.1(a) システムの障害・類似の技術的エラー ○ 重大なエラーの条項「間接的または結果的な損失を含む」 × 重過失・故意を例外にする但し書きが見当たらない ○ 同条「利益の損失」 ×
MYFX Markets [コモロ名義]顧客契約 第19.1項(EXCLUSION OF LIABILITY) ○ 19.1.9 プラットフォームの不稼働、データの遅延 ○ 19.1.9 システムとデータのエラー ○ consequential losses(別条)。19.1.2 は予見可能性でも線を引く ○ 19.1.5 当社の詐欺・過失・故意の懈怠を除く ○ 19.1.1 loss of profits・loss of revenue・loss of opportunity ×
EMCTrading 規約文書が公開されていないため判定できない — — — — — —
VT Markets 顧客契約 第12.4〜12.6項 ○ 12.5 ○ 12.5 ○ 12.4 × 但し書きなし(12.6は法定の権利のみ留保) ○ 12.4 ×
Tickmill 顧客サービス契約 第21.3項・第26.2.1項 ○ 26.2.1(a) ○ 26.2.1(a) ○ 21.3 ○ 21.3 重過失・故意の懈怠 × 記載なし ×
Traders Trust クライアントサービス契約 第27.3項・第20.1項(e) ○ 20.1(e) ○ 20.1(e) ○ 27.3 △ 27.3は詐欺のみ/20.1(e)は悪意・故意の懈怠 ○ 27.3 ×
IC Markets 利用規約 第20.4〜20.6項 ○ 20.4(g) ○ 20.4(g) ○ 20.5 △ 詐欺と死亡・人身傷害のみ ○ 20.5 ○ 20.6 取引手数料・コミッション・スプレッドの4倍
FXDD 利用規約 第35.14項(a)(b) ○ 35.14(a)(b) ○ 35.14(a) ○ ○ 詐欺・故意の懈怠・重過失 ○ ×
DecodeFX 利用規約 第25.9項(a)(b) ○ 25.9(a)(b) ○ 25.9(a) ○ ○ 重過失・故意の懈怠 ○ ×
NordFX クライアント契約 第9.1〜9.3項 ○ 9.2 ○ 9.3 ○ 9.1 ○ 9.1 詐欺・重過失・故意の不正行為 ○ 9.1 ×
FXCC 投資サービス一般条件「Technical Risks」 ○ ○ × 語がない × negligence の語が文書に1度も出ない ○ ×
HYCM 顧客契約 第14.1項・第14.4項 ○ 14.4 ○ 14.4 ○ 14.1 ○ 14.1 詐欺・重過失・故意の不正行為 × 一般条項に名指しなし ×
TradeQuo 顧客サービス契約 第8.1.1項・第8.1.2項 × 見当たらない × 見当たらない ○ 8.1.2 × 記載なし ○ 8.1.2 ×

賠償額に上限を置いている3社

免責条項を読んでいて、いちばん手が止まったのはここです。会社に責任が認められた場合でも、払う額に天井を置いている条項が3社にありました。書き方は3社とも違います。

IS6FXは、口座への入金額から出金額を引いた額が上限です。利用規約(モーリシャス)の Company Liability の条項で、「当社の重過失、故意の不作為または詐欺の請求について」もこの上限が適用されると読める書き方になっています。重過失を例外にしておいて、その例外に上限をかけています。

IC Marketsは、その取引について支払った取引手数料・コミッション・スプレッドの4倍です。利用規約 第20.6項。スプレッドが0.2pipsの取引で会社に責任が生じたとして、上限はその4倍。取引で出た損失の大きさとは関係のない数字です。同じ条文は「当事者の関係と商品の性質からして合理的である」と続けています。

XMTradingは、請求の原因となった事象の直前6か月間にこの契約から生じた収益の総額が上限です。利用規約 第84.4項。同じ項の前段には「本契約に基づく責任は、本契約から生じた収益のみから充足される」とあります。読者が払った手数料の範囲で払う、という建て方です。

この3社のうち XMTrading は、足切り4条件を満たした2社のうちの1社です。足切りは契約先法人・記載の一致・出金日数・禁止取引の定義の4点で見ているので、この条項は判定に入っていません。合格は「おすすめ」ではない、というのはこういうところにも出ます。

原文(英語)を見る ― 出典:IS6FX 利用規約(Mauritius)Company Liability の条項

Without derogating from the above, the Company’s aggregate liability towards the Client in respect of claims of the Company’s gross negligence, deliberate omission or fraud will be limited to the aggregate amount of the deposits less withdrawals made by the Client in the relevant Account.

通信とシステムの障害を、免責に挙げていない1社

TradeQuoです。顧客サービス契約には責任の章(第8条)がありますが、そこにあるのは「当社に責任がある事情で実損が生じたら実損を請求できる」「逸失利益と間接損害は賠償しない」の2点だけ。回線やサーバーの障害を名指しで外した条文が見つかりませんでした。不可抗力の条項も見当たりません。

同社のリスク開示 第8項には、クライアント側のハードウェア・ソフトウェア・インターネット接続の障害は顧客が負う、という記載があります。ただしそれは顧客の機器の話で、会社側の設備の話ではありません。書いていないことが有利とも不利とも言えません。書いていないので分からない、というのが確認できたことです。法的文書18本すべてを検索して探しました。

重過失の但し書きが、思ったより少ない

「当社の重過失または故意による場合は、この免責は適用しない」という但し書きは、読者にとっていちばん効く一文です。これを一般の免責条項に置いているのは11社でした。8社は特定の場面の条項にだけ置いていて、10社は見当たりません。

置き場所のちがいが、いちばんはっきり出るのが XMTrading です。第20.5項(明白な誤り)には「当社の詐欺、故意の懈怠または重過失による場合を除く」とあります。一方、一般の免責条項である第84.2項と第84.3項には、その但し書きがありません。価格の誤りには但し書きがあり、サーバーが落ちた場合にはない、という構造です。

逆に広いのが Axi と MYFX Markets で、どちらも「当社の詐欺、過失または故意の懈怠」と書いています。重過失ではなく過失一般を例外にしているので、但し書きとしては強いほうです。2社は同じ文面を使っています。

iFOREXは反対で、第14.10項が「契約、不法行為、過失その他の理由の如何を問わず」と書いています。過失を例外にするのではなく、過失を含めて免責する書き方です。FXCCの投資サービス一般条件には、negligence(過失)という語が1度も出てきません。

ゼロカットと、この条項の関係

免責条項は、ゼロカットやストップアウトとセットで効きます。「執行が遅れて損失が膨らんだ」場合、その遅れは免責される側にあるからです。

iFOREXのリスク警告は、そこを続けて書いています。極端なボラティリティ、流動性の低下、システムメンテナンス、技術的障害のときに執行が遅延または利用できなくなる場合がある、と。その状況で何が起きても、責任は負わない設計です。

ここから何が言えるか

言えないことから書きます。免責条項があること自体は、どの業界でも普通です。これがあるから不当だ、とは書きません。また、日本の消費者契約法がこうした条項をどう扱うかは、私には判断できません。

言えるのは3つです。

  • システム障害で損をしても、規約上は請求先がありません。19社が明示的に外しています
  • 「重過失・故意・詐欺は除く」は、ほぼ全社にあります。争える余地があるとすれば、条文上はここです
  • 上限を金額で書いた社が1社あります。IS6FX。入金額から出金額を引いた額が天井です

同じことを自分で確かめるには

  • 顧客契約で LIMITATION OF LIABILITY/EXCLUSION OF LIABILITY/Indemnity/責任の制限/免責 を探す
  • 免責の一覧に loss of profit(逸失利益)/indirect・consequential(間接・派生)/system failure/delay があるかを見る
  • gross negligence(重過失)・wilful default(故意)・fraud(詐欺)を除外する但し書きがあるかを見る。なければ、免責の範囲はさらに広くなります
  • shall not exceed/limited to があれば上限つきです。金額の決め方まで読む

争う場所そのものは準拠法と裁判所、資金の扱いは顧客資金の扱いにまとめてあります。

このページについて

2026年9月25日に、規約アーカイブに保存してある30社の文書から、免責と責任制限の条項を1社ずつ読み直しました。各社の記事に書いた調査基準日の版です。

確認できなかったこと。社数は、上の一覧表の○の数を数えたものです。○と△の線引き(一般の免責条項にあるか、特定の場面の条項だけか)は、私が条文を読んで付けました。条文ごとの範囲の広さまでは比べていません。2026年9月20日までの集計では通信の遅延を20社、システム障害を19社としていましたが、これは先に調べた20社だけの数で、しかも備考の除外社数と合っていませんでした。今回の読み直しで30社に揃え、社名を全部出す形に変えました。

EBC Financial Groupで読めたのはウェブサイト利用規約で、日本居住者の契約先の顧客契約は掲載が見当たりません。EMCTradingは規約が非公開です。これらの条項が日本の法律でどう扱われるかは、私には判断できません。「見当たらない」は、私が探して見つけられなかったという意味です。規約は3か月に一度読み直し、変更があれば直して更新履歴に残します。

免責の条項は、どの業界にもあります。そこではなく記載の整合性で絞るなら、30社の比較表と4条件を満たした2社にまとめてあります。合格は「おすすめ」という意味ではありません。その理由も、そのページに書いています。