最終更新:2026年10月8日

海外FXブローカー30社の利用規約と入出金のルールを、私が1社ずつ読みました。その途中で、同じように見えて中身が違う言葉に何度もつまずきました。このページは、そのときに区別しておかないと読み違える言葉を書き出したものです。

一般的なFX用語の辞典ではありません。規約の文面を前にして「この言葉とあの言葉は別だ」と気づくために置いています。数字はすべて、執筆時点で調べた30社を母数にしました。それぞれ、実際に確かめたページへのリンクを付けてあります。

先に、混同しやすい5組

定義をひとつずつ覚えるより、どれとどれが別物なのかを先に押さえるほうが早いと思います。私が読み違えかけたのは、この5組でした。

  • 分別管理と信託保全|分別管理は、会社の中で顧客の口座を分けているだけです。会社が破綻したときに資金が戻るかどうかは、別の仕組みの話になります。
  • マージンコールとストップアウト|前者は通知、後者は強制決済です。水準の数字も別々に決まっています。
  • ブランド名と契約先法人|広告や口コミで見る名前と、あなたが契約する相手の法人名は、同じとは限りません。
  • ライセンスと契約先法人|ライセンスを持っている法人と、日本に住む人が契約する法人が違うことがあります。
  • ゼロカットと追証|単純な反対語ではありません。ゼロカットは会社が規約で置いた約束で、条件や裁量が付いていることがあります。

契約する相手にまつわる言葉

ブランド名
広告や口コミで見かける、サービスの呼び名です。ブランド名は法人名ではありません。同じブランドでも、住んでいる国によって契約する法人が変わることがあります。名前を知っていることと、契約する相手を確かめたことは別です。
契約先法人
日本に住む人が実際に契約する相手の法人です。規約の前文か第1条に書かれていることが多く、ブランド名とは別に確かめる必要があります。
私が調べた30社では、金融庁の警告書に載っている商号と規約の契約先法人が別の法人になっていた社が6社ありました(IC Markets・Traders Trust・Exness・BigBoss・Axi・WeTrade。2026年9月25日時点)。残る7社は、契約先法人の名前を確かめられませんでした。ただし理由は2つに分かれます。
4社は規約を読んでも法人名が書かれていません(FXDD・Milton Markets・MYFX Markets・EMCTrading)。3社は、規約のほうが日本居住者をサービスの対象外としています(FXCC・NordFX・Tickmill)。読み取れないことと、そもそも日本居住者向けの契約先が置かれていないことは、別の話です。どちらにしても、金融庁の一覧と突き合わせることはできません。
ライセンス(登録簿での照合)
公開ページが掲げているライセンスを、当局の登録簿で引き直して確かめることです。ライセンスを持つ法人と、日本居住者の契約先法人が別である例がありました。会社の登記番号をライセンス番号として掲げている例もあります。
金融庁の無登録業者一覧
金融庁が警告書を出した無登録業者の一覧です。取引条件の評価は一切されていません。掲載の有無は事実として全記事に書きますが、足切り条件には含めていません。載っていないことは、安全の証明でもありません。
IB(紹介業者)・アフィリエイト
Introducing Broker。ブローカーに顧客を紹介し、その顧客の取引に応じて報酬を受け取る仕組みです。このサイトの口座開設リンクもこれにあたります。報酬の有無は口座開設リンクについてに書き、点数にも足切りにも関係させていません。
足切り4条件
点数をつける前に見る、記載の整合性の最低線です。契約先法人が規約に明記されているか。公開ページと一次資料に食い違いがないか。出金日数を具体的に開示しているか。禁止される取引手法が具体的に定義されているか。4つすべてを満たしてはじめて合格で、30社のうち2社でした。
食い違い
公開ページの表記と、規約など一次資料の記載が違うことです。1件でもあれば足切りは不合格になります。件数は比較表の列に出しています。

お金の置き場所と、損失の止まり方

分別管理
顧客から預かった資金を、会社自身の資金と分けて管理することです。信託保全とは別物です。分別管理は同じ会社の中で口座を分けているだけなので、会社が破綻したときに資金が戻る保証にはなりません。
信託保全
顧客の資金を信託銀行など第三者に預け、会社が破綻しても顧客へ返される仕組みです。公開ページでは「信託保全」と読める書き方をしていても、規約には分別管理としか書かれていない例がありました。
TTCA(所有権移転型担保)
Title Transfer Collateral Arrangement。顧客が預けた資金の所有権そのものを会社へ移す取り決めです。分別管理とは正反対で、資金は会社の財産として扱われます。IronFXの取引規約 第17.1条がこの形でした。
投資家補償基金
会社が破綻したときに、一定額まで顧客に補償する制度です。私が調べた30社では、28社が対象外、2社は判定できず、対象になる社はありませんでした(補償基金の調査)。
マージンコール
証拠金が足りなくなってきたときに出される通知です。強制決済そのものではありません。30社を並べた記録では、水準の数字を公開していない社が半分ほどありました。
ストップアウト
証拠金維持率がある水準を割ったときの強制決済です。マージンコールの次に来ます。水準の数字を確認できたのは30社中25社で、同じ会社でも口座タイプによって水準が変わる社がありました。
ゼロカット(負残高保護)
口座残高を超える損失を顧客に負わせない、と会社が定めた仕組みです。法律で義務づけられたものではなく、規約に書かれた約束にあたります。規約では「損失を消す」ではなく「顧客の責任の上限」という書き方が多く、口座ごとか全口座合算かも社によって違いました。BigBossは補填の原資を「有効証拠金がいちばん多い他の保有口座」と定め、それでも足りない分を請求する権利を残しています。
追証(追加証拠金)
一般には、証拠金が所定の水準を下回ったときに、追加の証拠金を差し入れるよう求められることを指します。国内のFXでは、期限までに入金できなければ強制決済という運用が一般的です。
海外FXの文脈では、口座残高がマイナスになった分を請求されることを指して使われることが多く、この意味での請求をしないと約束したものがゼロカットです。ただし規約では裁量や条件つきで書かれることがあるので、社ごとに読む必要があります。
変動レバレッジ
口座残高や保有ロット数に応じて、最大レバレッジが自動的に下がる仕組みです。30社中14社にありました。引き金が「残高または保有ロットのいずれか」という社もあります。

やってはいけないと書かれていること

両建て
同じ銘柄で、買いと売りを同時に持つことです。同じ口座の中では可でも、複数の口座をまたぐ場合や他社との間は禁止という社がありました。どの範囲の話なのかを分けて読む必要があります。
スキャルピング
ごく短い時間で売買を繰り返す手法です。明確に禁止する社と、拒否や制限ができるという裁量の条項だけを置く社がありました。「制限なし」と書いてある公開ページと、規約の条項が一致しない社もあります。
アービトラージ
価格差を利用した取引です。レイテンシ・アービトラージやボーナス・アービトラージを名指しで禁止する社があります。何をアービトラージと呼ぶかの定義が社ごとに違い、スキャルピングや両建てを含めている社もありました。
レイテンシ(レイテンシー)
価格配信の遅れのことです。ブローカーの提示価格が市場より遅れる瞬間を狙う手法を「レイテンシ・アービトラージ」と呼び、30社のうち17社が規約で触れていました。
利益取消条項
特定の取引で得た利益を、会社の判断で取り消せると定めた条項です。記載のある社では、何が対象になるのかの基準まで書かれていないことが多くありました。

お金を出し入れするときの言葉

第三者名義
口座の名義人と違う名前の銀行口座やカードのことです。記載のある社はすべて不可でした。家族の口座も同じ扱いになります。
カード返金ルール
カードで入金した分は、まずそのカードに戻すという原則です。マネーロンダリング対策として各社が共通して置いています。戻せる期間に上限のある社もありました。
休眠口座手数料
一定の期間取引がない口座から引かれる手数料です。金額まで規約に書いてあったのは12社で、休眠と判定されるまでの期間は60日から12か月まで開きがありました。
KYC(本人確認)
Know Your Customer。口座開設時や出金時に、身分証や住所を確認する手続きです。追加の書類を求めているあいだ出金を保留できる、と規約に定める社が多くありました。
AML(マネーロンダリング対策)
Anti-Money Laundering。資金洗浄を防ぐための規制と、それに沿った社内手続きです。「入れた方法に、入れた順番で戻す」という出金ルールは、たいていこの名目で置かれています。

争いになったときの言葉

準拠法
その契約をどの国の法律で解釈するかを決めた定めです。日本に住んでいても、日本の法律が適用されるとは限りません。30社の準拠法と裁判所を並べました。
管轄(裁判管轄)
争いになったとき、どこの裁判所で審理するかを決めた定めです。準拠法とは別に書かれます。口座を開いた時点で、争う場所は決まっています。

数字を読むときの言葉

契約サイズ(コントラクトサイズ)
1ロットが何単位にあたるかです。ゴールドでは1ロット=100オンスが多いのですが、数字を公開しているのは30社中15社、そのうち単位まで書いていたのは6社でした。単位が分からない「100」は、オンスなのかグラムなのか決められません。
スプレッド
買値と売値の差です。公開されている値は「最小」や「平均」であることが多く、実際に約定したときの差とは別物です。このサイトでは公表値と実測を分けて書いています。
スワップ(スワップポイント)
ポジションを翌日に持ち越すときに発生する、金利差の受け払いです。規約で「予告なく変更できる」と定める社がありました。
スリッページ
注文した価格と、実際に約定した価格の差です。相場が急変したときのスリッページについては責任を負わない、と定める社があります。
CFD(差金決済取引)
Contract for Difference。現物を受け渡さず、値動きの差額だけを決済する取引です。海外FXのゴールド(XAUUSD)もCFDで、取引の相手方はブローカー自身になります。

ゴールドの取引条件の言葉

必要証拠金やpipsの計算など、ゴールドの取引条件の表を読むための言葉はゴールドの1pipsはいくらかにまとめました。この一覧と重なる項目は、そちらに合わせています。

この一覧の使い方

言葉の定義そのものより、どれとどれが別物なのかを押さえるほうが実用的です。分別管理と信託保全、ストップアウトとマージンコール、ブランド名と契約先法人。この3組を混ぜないだけで、公開ページの読み方が変わります。

ここに書いた数字は、執筆時点で調べた30社を母数にしたものです。各社の調査基準日は、それぞれのブローカー記事に書いてあります。規約は3か月に一度読み直し、記載が変われば定義の側も直します。言葉の一般的な意味と、私が調べた範囲で分かったことは、分けて書くようにしました。