最終更新:2026年10月8日

海外FXの口座を開くとき、たいていの人はスプレッドとレバレッジを見ます。そのあとに効いてくるのが、この条項です。約定して口座に入った利益を、あとからブローカー側が取り消せる、と書いてある条項のことです。

執筆時点で調べた30社の利用規約・顧客契約を読み、この条項を探しました。26社にありました。残る4社のうち、Tickmill・FXCC・HYCM は保存した規約に該当する条項が見当たらず、EMCTrading は規約文書そのものが公開されていないため判定していません。条項番号を添えてあるので、原文で確かめられます。

読んでいて手が止まったのは、2社の書き方でした。取り消せるのは「当社がお客様に支払う側の取引」だと、条文にそう書いてあります。あとで触れます。

利益の取消は、飛んだ相場のあとに起きる段階の一つです。前の段階から順に並べたものはロスカットされたあと、口座では何が順番に起きるかにあります。

30社の利益取消条項

ブローカー 型 条項と内容(規約から)
AXIORY 誤りの訂正 規約 Paragraph 14.6・21.2・24.2(i)。市場の失敗やアービトラージ、技術的問題、流動性提供者によるキャンセルなどの場合に、約定済み取引の変更・取消を行う権利を留保
XMTrading 誤りの訂正 利用規約20条「Manifest errors」により、明白なエラーによる取引について会社が対応する権利を留保
FXGT 禁止手法 利用規約 第2.6条・第8.6条・第8.8条により、該当する取引とそこから生じた利益を無効にできる(nullify all related Transactions and any resulting profits)
ThreeTrader 会社の裁量 規約 第9.7条(b):第9.7条に該当すると同社が信じた場合、同社が支払う側となる取引を最初から無効として扱うことができる(顧客が30日以内に決定的な証拠を提出した場合を除く)。同(c)資金の留保、(e)口座閉鎖も規定されている。
HFM 禁止手法 顧客契約書24.4条(a)〜(h)。取引の無効化・取消、損益の巻き戻し、口座凍結、罰則金の賦課、そして(h)「口座を閉鎖し、禁止された取引手法から生じた利益を没収し、当初の入金額を返還する」。出金済みの場合は関連口座から差額を没収できるとも記載
EBC Financial Group 禁止手法 注文執行方針 第6.2項により、ボーナス関連の禁止行為に該当した場合、ボーナスの没収・顧客資金の保留・ペナルティの賦課が可能とされている。
Axi 会社の裁量 6.2条(d)「we consider it necessary to cancel or reverse a trade that has already been executed, including where we reasonably believe that trade was placed in connection with any of the conduct described in sub-clauses (e) to (i) below」。あわせてヘルプセンターに「レイテンシー・アービトラージと判断された取引は取り消されます」と記載。
Tradeview 会社の裁量 あり。顧客契約 第15条・第16条に該当すると同社が単独の裁量で判断した場合、口座の凍結・閉鎖、取引の無効化、利益の留保および回収ができると規定
TitanFX 誤りの訂正 利用規約 第5.23条・第5.26条。重大な誤謬に基づく取引について契約開始時点から無効とすることができ、第5.26条では「当社がお客様に対して金銭を支払う義務が生じる取引である場合、当社はその取引を契約の開始時点から無効とみなす」と記載
BigBoss 誤りの訂正 利用規約 第5.9条に誤ったクォート時の修正・調整の規定、第11.1〜11.2条にポジション清算権の規定
Exness 禁止手法 顧客契約書11.2(O):アルゴリズムによるレイテンシーの悪用や、自動化されたシステム過負荷によって得たと当社が合理的に判断した利益を、調整・取消・無効にできる
XS.com 禁止手法 クライアントサービス契約 第7.27条。プライスレイテンシー・アービトラージに該当した場合、(i)執行価格の修正・調整、(ii)関連する取引をすべて取り消し、(iii)予告なしの口座解約、(iv)入金額の5%(上限200ドル)の管理手数料、のいずれか/すべてを行う権利を留保
Vantage Trading 禁止手法 第1.4項 v) により、疑わしい取引行為が疑われる場合、口座の一時・永久停止、損失の回収、注文の無効化と関連する利益の取消しを即時に行えると規定されています。取消しの対象範囲・金額の上限・異議申立ての手続を定めた条項は見当たりません。
IS6FX 会社の裁量 利用規約 第12条は「禁止行為に該当するかどうかの判断は当社が行い、その内容と根拠を利用者に説明することを要しない」と規定しています。第7条は市場濫用にあたる取引を列挙したうえで、当社が是正措置をとれるとしています。取消しの対象範囲・金額の上限・異議申立ての手続を定めた条項は見当たりません。
Milton Markets 禁止手法 第24.33条(b)に、アービトラージ戦略の疑いがある場合に口座を閉鎖し初期預金を返還する権利を留保する旨の記載
Land Prime 禁止手法 顧客同意書は、レイテンシー・アービトラージに依拠した取引や、窓開けを異常に利用した取引を裁量で取り消せるとしています。決済システムの脆弱性を突いて得た利益(チャージバックなど)は取消しまたは同額の請求。さらに「wilful one direction trading」から得た利益を裁量で差し引くことがあり、その解釈権は当社が専有すると規定しています。異議申立ての手続を定めた条項は見当たりません。
iFOREX 禁止手法 あり。取引条件「許可されない取引行為」および顧客契約 第7.1.14項・第7.1.15項に該当する兆候または疑いがある場合、関連口座で行われたすべての取引を無効にしてキャンセル(利益と損失を含む)、ボーナスの削除、口座のブロック。ボーナス規約の一般規約にも同趣旨の規定
WeTrade 禁止手法 第3.13項により、アービトラージまたはスキャルピングに該当するとWeTradeが判断した取引は、絶対的な裁量で決済・差替え・反転できると規定されています。利益の取消しについて、対象範囲・金額・異議申立ての手続を定めた条項は見当たりません。
EMCTrading 規約が公開されていない 規約ページが存在せず、口座開設フォームからリンクされる「顧客同意書」の href が空のため、条項にあたれません(2026-09-09 取得)
MYFX Markets 誤りの訂正 [コモロ名義]顧客契約 第7.18条(Material Error)。重大な誤りがあった場合、(a)公正な価格に条件を修正、(b)取引と生じたポジションをクローズ、(c)契約を当初から無効にする、(d)何もしない、のいずれかを選べる。7.18(m)で、この権利は合理的かつ誠実に、認識後すみやかに行使すると定めています
VT Markets 会社の裁量 顧客契約 第1.4条(v)。疑わしい取引と判断した場合、口座の一時的または恒久的な停止、損失の回収、注文の無効化と関連する利益の取消を、即時に行えると定めています
Tickmill 条項が見当たりません 38ページの顧客サービス契約に、確定した利益の取消を定めた条項が見当たりません
Traders Trust 禁止手法 クライアントサービス契約 11.11〜11.13。リスクレスな利益を狙う戦略や、会社が濫用と判断した戦略について、取引の取消・スプレッドの調整・損益の削除ができると定めます。11.13 は初回入金額の最大10%(上限1,500 USD)の事務手数料も請求できるとしています
IC Markets(IC) 禁止手法 利用規約 第12.6条「Risk-Free or Asymmetric Profiteering」に該当すると判断された取引について、第12.1条が資金の留保・控除・回収と口座の閉鎖を定めます。第6.7条は理由を問わず注文を拒否でき、第28.1条は理由の通知なく口座を停止できるとしています
FXDD 禁止手法 利用規約 第67.3条(c)。流動性の濫用によって得たと会社が記録できる過去の取引利益を、顧客との関係が続いているあいだいつでも口座から回収できると定めています
DecodeFX 禁止手法 利用規約 第8.7条。スキャルピングにあたると疑う場合に「cancel previously realised profits or losses」=すでに確定した損益を取り消すことができると定めています。あわせて第9.7条は、(a)〜(s)の19項目のいずれかに当たると信じた場合、通知なく取引の一部または全部を当初から無効にできると定めます(顧客が7日以内に決定的な証拠を出した場合を除く)。19項目にはVPS・仮想マシン・VPN・同一IPからの複数口座も含まれます
NordFX 禁止手法 クライアント契約 第9.4条。レイテンシ・アービトラージに依存する取引を取り消すことがあると定めています
FXCC 条項が見当たりません 22ページの投資サービス一般条件に、利益の取消を定めた条項が見当たりません
HYCM 条項が見当たりません スキャルピングを規約の重大な違反と定める第3.14条はありますが、利益の取消を明示した条項は見当たりません
TradeQuo 禁止手法 顧客サービス契約に、会社が資金を凍結し取引を取り消せるとする条項があります。詳細は別文書の「濫用取引の取扱ポリシー(Abuse Handling Policy)」に置かれています

「型」はこちらで分類したものです。規約にこの区分があるわけではありません。表の内容は、各社の規約から取った記録をそのまま載せています。

約定済みの利益を取り消せる条項は、26社にありました

30社の利用規約と顧客契約を読んで、条項の書き方で3つの型に分けたものです。

51653
明白な誤りを直す型 5社禁止手法に当たったときの型 16社会社の裁量とだけ書く型 5社該当する条項が見当たらない 3社規約が公開されておらず判定できない 1社

いちばん多いのは、禁止手法に当たると会社が判断したときの型です。「稼ぎすぎたから」ではありません。利益の額や勝率を条件にした条項は、保存してある規約アーカイブを全文検索しても見つかりませんでした。

条項の型は、3つに分かれます

1つめ:明白な誤りを直す型(5社)

AXIORY、XMTrading、BigBoss、TitanFX、MYFX Marketsがこの型です。誤ったレートで約定した取引を、なかったことにできるという書き方をします。XMTradingは第20条の見出しがそのまま「Manifest errors」です。BigBossは第5.9条で誤ったクォート時の修正・調整を定めています。

これは、どちらかといえば理解しやすい条項です。システムが壊れた値を出したときに、それを直せないほうが困ります。ただし「明白な誤り」に当たるかどうかを判定するのは、ブローカー側です。

2つめ:禁止手法に当たったときの型(16社)

いちばん多い型です。FXGT、HFM、iFOREX、Milton Markets、WeTrade、Vantage Trading、Land Prime、Exness、EBC Financial Group、XS.com。スキャルピング、両建て、アービトラージ、レイテンシーの悪用といった手法に該当すると判断されたときに、そこから出た利益を消せるという組み立てです。

HFMの第24.4条(h)は踏み込んでいて、口座を閉じ、禁止された取引手法から生じた利益を没収し、当初の入金額だけを返すと書いてあります。出金済みの場合の扱いにも触れています。

この型を読むときは、どの手法が禁止されているかとセットで見る必要があります。禁止の定義が広い社ほど、この条項の射程も広くなるからです。アービトラージの定義にスキャルピングや両建てを含めている社があるのは、そのためです。

3つめ:会社の裁量とだけ書く型(5社)

IS6FX、Tradeview、ThreeTrader、Axi、VT Markets。該当するかどうかの判断が会社側にあることを、条文で明示しています。

IS6FXの第12条は、そこをいちばんはっきり書いています。禁止行為に該当するかどうかの判断は当社が行い、その内容と根拠を利用者に説明することを要しない。説明を求める権利のほうを、あらかじめ外してある書き方です。

「当社が支払う側の取引」だけを無効にできる、と書く2社

TitanFXとThreeTraderの条文には、ほかの28社にない一文が入っています。

当社がお客様に対して金銭を支払う義務が生じる取引である場合、当社はその取引を契約の開始時点から無効とみなす

出典:TitanFX 利用規約 第5.26条

ThreeTraderも同じ形です。第9.7条(b)は、同社が支払う側となる取引を、最初から無かったものとして扱えると定めています(顧客が30日以内に決定的な証拠を提出した場合を除く、という留保が付いています)。

逆側は書かれていません。つまり、同じ原因で発生した取引でも、顧客が損をしたほうは無効にならない。条文をそのまま読むと、そう読めます。

誤解のないように書いておきます。これは出金拒否があったという話ではありません。このサイトは被害の有無を確認していません。確かめたのは、契約書にどう書いてあるかだけです。ThreeTraderが30日以内の異議申立てを条文に残しているのは、むしろ手続を書いている側です。

反証の猶予を書いているのは2社で、7日と30日に分かれます

取り消される側が何かできるのか。反証の手続きと期限を書いているのは、調べた30社のうち2社だけでした。どちらも条番号は第9.7条です。

  • DecodeFX|通知から7日以内に「違反していない決定的な証拠(conclusive evidence)」を出した場合は、無効にしない
  • ThreeTrader|同じ条番号で30日以内

条番号も見出しも同じなので、同じ雛形だと思います。そのうえで一方は猶予を7日に縮め、もう一方は30日のままです。差は4倍以上あります。

残りの社は、反証の手続き自体を書いていません。「当社が信じた場合」で条文が完結しています。反証できないという意味ではなく、規約の側に手順が置かれていない、ということです。

「決定的な証拠」が何を指すかは、どちらの条文にも書かれていません。立証の基準を示さずに立証責任だけを顧客に置く形は、2社に共通しています。

取り消せる範囲と上限を書いている社は、ありませんでした

26社の条項を並べて、共通して欠けているものがあります。何をどこまで取り消せるのか、その範囲と上限です。

  • 対象になるのは該当した取引だけか、口座全体の損益か
  • すでに出金した分まで遡るのか
  • 顧客が異議を申し立てる手続と期限はあるか

Vantage TradingとWeTradeについては、取消しの対象範囲・金額の上限・異議申立ての手続を定めた条項が見当たらない、と記録に残しています。期限つきの異議申立てを条文に書いていたのは、執筆時点で調べた30社ではThreeTraderの30日だけでした。

HFMは逆に、出金済みの場合にどうなるかまで書いています。書いてあること自体は利用者に不利な内容ですが、読めば分かる状態にはなっています。このサイトが見ているのは、そこです。

稼ぎすぎると口座を凍結されるのか:条項が条件にしているのは、利益の額ではありません

「稼ぎすぎると口座を凍結される」という書き込みをよく見かけます。保存してある規約アーカイブ360本・約880万字を全文検索したかぎりでは、利益の額や勝率を条件にした条項は見つかりませんでした(2026-10-04に検索)。

条件になっているのは、利益の得方のほうです。いちばん具体的に書いているのは NordFX でした。

クライアント契約 第13.6.3条は、利益を得る方法として5つを並べています。

  • 13.6.3.1 NordFXのソフトウェアの脆弱性を利用すること
  • 13.6.3.2 受け取ったボーナスの不正な利用
  • 13.6.3.3 パートナー・リベートプログラムの不正な利用
  • 13.6.3.4 アービトラージ取引
  • 13.6.3.5 1社または複数社に開いた2つ以上の口座で多方向の取引を行うニューストレード

この場合の措置も、同じ条項に書かれています。契約を一方的に終了し、その方法で得た利益をブロックし、当初入金額を超えない範囲の残高を返す。続く13.6.3.6は「口座の有効証拠金・余剰証拠金・通常の取引量に不釣り合いな数量の取引」を挙げます。

原文(英語)を見る ― 出典:NordFX クライアント契約 第13.6.3条(2026-09-23取得)

In this case, NordFX may unilaterally terminate this Client Agreement, block profit, the method of obtaining of which account/accounts and return to the Client the balance of funds not exceeding the amount of the initial deposit.

同じ形は他社にもあります。Milton Markets 第24.33条(b)は、アービトラージ戦略の疑いがある場合に口座を閉鎖し、初期預金を返還する権利を留保します。HFM の顧客契約 第24.4条(h)は、口座を閉鎖し、禁止された取引手法から生じた利益を没収し、当初の入金額を返還すると書きます。

3社に共通しているのは、戻るのが「当初入金額まで」だという書き方です。利益を取り消すだけでなく、口座ごと閉じる側まで条項が用意されています。

利益そのものに触れた条項をもう1つ挙げると、Vantage Trading は第三者からの支払いを確認した場合に、支払いを取り消し、未決済ポジションを決済し、得られた利益を無効とし、取引口座を閉鎖する権利を書いています。入金の名義が問われる話で、利益の額とは関係がありません。

読んだ範囲で言えることは1つです。条項が見ているのは「いくら儲けたか」ではなく「どう儲けたか」で、その判断をするのは会社側です。「疑いがある場合」で足りると書く社があることは、アービトラージの定義のほうに並べました。

確認できなかった2社

MYFX MarketsとXS.comについては、この項目を記録できていません。該当する条項がないという意味ではなく、私がまだ確かめていない、という意味です。確かめたら、この表を直して更新履歴に残します。

EMCTradingは「記載が見当たらない」と記録しています。こちらは規約を読んだうえで、それらしい条項が見つからなかった、という意味です。

まとめ

執筆時点で調べた30社のうち26社が、約定済みの利益を取り消せる条項を持っています。型は3つに分かれ、いちばん多いのは禁止手法に当たったときの型でした。

口座を開く前に見ておくなら、順番はこうだと思います。まずどの手法が禁止されているかを読み、次にこの条項で、該当したときに何が起きるかを読む。2つはつながっています。

この記事は、各社の利用規約・顧客契約から取った記録をもとにしています。調査基準日は記事ごとに違うため、各社の条項の取得時点は全社比較からそれぞれの記事で確認してください。規約は3か月に一度読み直し、変更があれば直して更新履歴に残します。

約定済みの利益を取り消せる条項は26社にありました。同じ物差しを30社に当てた結果は、30社の比較表と4条件を満たした2社にまとめてあります。合格は「おすすめ」という意味ではありません。その理由も、そのページに書いています。