最終更新:2026年10月10日

このページの結論

「両建て可」は、どの範囲までかを書いていないと答えになりません。同じ口座の中、同じブローカーの複数口座をまたぐ場合、他社の口座との間。この3つは別々に定められていて、30社のうち4社が複数口座間を、3社が他社との間を明文で禁止していました。同一口座内は可としながら、複数口座間は禁止しているブローカーがあります。

両建て(ヘッジ)は、海外FXブローカーの公開ページで「可」と書かれていることが多い項目です。ところが規約を開くと、どの口座とどの口座の間なのかで扱いが変わります。

30社の利用規約・顧客契約・公開ページを読み、両建てに関する記載を3つの層に分けて並べました。公開ページの案内は「ブローカーがそう書いている」という事実として扱い、規約の条文と分けています。

「両建て可」は、どの口座とどの口座の間ですか

買いと売りが置かれている場所で、規約の扱いが変わります。同一口座内は可としながら、複数口座をまたぐと禁止している社があります。

層1同一口座内口座A買い売り同じ口座の中で、買いと売りを同時に持つ「可」と書いた13社層2同じ業者の複数口座口座A買い口座B売り同じブローカーのA口座で買い、B口座で売る明文で禁止4社層3他社の口座との間X社の口座買いY社の口座売りX社で買い、Y社で売る明文で禁止3社

外の層に行くほど、書いている社が減ります。そして5社は、禁止条項ではなく「操作行為」「疑わしい取引行為」の定義のほうにヘッジを入れています。公開ページの「両建て可」だけを見ていると、この5社は可に見えます。30社ぶんの条項番号は下の表にあります。

層1:同一口座内

可と明記

13社

規約または公式の説明に、両建てができると書いてある会社です。

禁じる条項が見当たらない

4社

禁止行為の列挙を読んでも、両建てに当たる記述がありませんでした。可と書いてあるわけではありません。

記載が見当たらない

6社

規約のどこにも両建てに触れた条項が見つかりませんでした。判断の材料がない状態です。

条件つきで濫用に当たりうる

7社

両建てそのものではなく、使い方によっては禁止戦略に当たると読める条項がある会社です。

✕ が付いているのは、複数の口座にまたがる形について記述がある 7社です。禁止とは限りません。相殺しないと書いているだけの会社も、ヘルプで禁止と書いている会社もあります。「可と明記」の側にいる会社も含まれます。会社名を押すと、読んだ本文がそのまま出ます。

証拠金の扱いが、可否よりも効きます

「可」の13社でも、必要証拠金の計算が違います。

  • Exness——両建て時の必要証拠金(Hedged margin)は0%(ヘルプセンター Standard account)
  • Axi——MT4・MT5で同一銘柄を両建てすると標準証拠金要件の半分
  • Vantage Trading——顧客契約 第3.7項が同一口座内の両建てを認め、完全な両建ては必要証拠金をゼロにできるとします
  • iFOREX——証拠金計算上「正味」で扱い、一方の決済は残るポジションと同量の新規注文とみなされます
  • Land Prime——口座タイプや銘柄によってヘッジ証拠金が適用される場合があり、ロスカット基準に達すればヘッジポジションも決済されると注記
  • WeTrade——HMR期間中に片側を決済して証拠金不足になる場合、システムが決済を拒否します

両建て中もスプレッド・スワップ・手数料が発生する場合があることは、Land Prime が明記しています。「証拠金ゼロで持てる」ことと「コストがかからない」ことは別です。

Axi はプラットフォームで答えが変わります

MT4とMT5では両建てが可能です。ところが同社独自のプラットフォームでは不可で、反対ポジションは自動的に相殺されます。

同じブローカーの同じ口座でも、どの画面から注文を出すかで結果が変わる。ここは読んでいて手が止まりました。公開ページのFAQだけを見ていたら、まず気づけません。

層2:同じブローカーの複数口座をまたぐ場合

4社が明文で禁止しています。

ブローカー 条項 内容
HFM 顧客契約書 24.3.3条 複数口座をまたぐ両建て・相殺を禁止。同社の公式FAQは「全銘柄でヘッジ取引が可能です」
IS6FX 利用規約 第12条 「当社内で複数口座を持ってヘッジ取引を行うこと」を禁止行為に列挙
XS.com 第31条 複数口座にまたがる両建てを、指標発表前や窓開け前に閉じる行為を禁止戦略に列挙
iFOREX 顧客契約 第7.1.14項 別口座間・関連法人の口座での同時保有を市場濫用として禁止

2026年9月に追加した10社に、複数口座をまたぐ両建てを明文で禁じた条項は見当たりませんでした。近いのは VT Markets で、プロモーション一般規約が「口座をまたいだ両建てにクレジットボーナスを使うこと」を禁じ、そこで生じた利益を削除する権利を留保しています。ボーナスを使わない両建てには触れていません。NordFX の第5.21項は、複数の口座を使って意図的にマイナス残高を作る行為を禁じていますが、こちらは両建てではなくゼロカットの濫用を対象にした条文です。

HFMは、同じ会社の中で答えが分かれています。公式FAQは「全銘柄でヘッジ取引が可能です」と書き、完全ヘッジでマッチした数量の証拠金がゼロになると説明します。顧客契約書 24.3.3条は、複数口座をまたぐ両建て・相殺を禁止しています。層が違えば、どちらも正しい。ただし「可能です」だけを読むと、そうは読めません。

禁止していないが、別の形で効くブローカー

TitanFX は複数口座間の両建てを禁止していません。ただし取扱商品ページに、「2つの口座で両建て取引を行った場合」はゼロカットの対象外と書かれています。

禁止ではなく、損失を自分でかぶることになる、という定め方です。禁止事項の一覧を探しても見つかりません。

層3:他社の口座との間

ここを禁止しているのは3社でした。

  • iFOREX——第7.1.14項に「他社との間で」同一または類似銘柄のロングとショートを同時に保有する行為が含まれます
  • IS6FX——第12条が「2つ以上の業者に入金してヘッジ取引を行うこと」を明記
  • XS.com——第31条に「当社の口座か他社の口座かを問わず」という文言があります。30社を読んでも、ここまで書いているのはこの1社だけでした

他社の口座で何をしているかを、ブローカーが確認する手段はふつうありません。それでも条項として置かれているのは、発覚したときに根拠として使える状態にしておくためだと読めます。

禁止条項ではなく、定義条項に置かれている5社

ThreeTrader、Vantage Trading、MYFX Markets、FXGT、XMTrading は、両建てを禁止とは書いていません。ただし規約の「操作行為」「疑わしい取引行為」「濫用」の定義の中にヘッジが入っています。

  • ThreeTrader——第9.7条(c)が「内部または外部のヘッジ」を操作行為の列挙に含めています。公開ページに可否の記載は見当たりません
  • Vantage Trading——顧客契約 第3.7項で同一口座内の両建てを認める一方、「疑わしい取引行為」の定義 a) に同一・類似の原資産の買いと売りを同時期に持つことを例示しています
  • MYFX Markets——日本語のよくあるご質問は「ヘッジングに制限はありません」。コモロ名義の Client Agreement 第23.2(b)項は、他者と協調した内部ヘッジ(internal hedging in coordination with other parties)を濫用の例に挙げます
  • FXGT——利用規約 第2.6条が「当社のシステムを手動またはAI・自動売買システムにより abuse, hedge, または manipulate しようとする行為」を、アービトラージ・スナイピング・スキャルピング・ピップハンティングと並べています。別の条項は濫用行為の例として他者と共謀した内部ヘッジ(internal hedging in collaboration with others)を挙げ、該当すれば当該取引と損益を無効にできるとします
  • XMTrading——利用規約が他者と連携した内部ヘッジ(internal hedging in coordination with other parties)とゼロカットの濫用を、本規約の違反を構成する行為として挙げ、その場合はゼロカットを適用しない権利などを留保します

Vantage は、同じ契約書の中で認めと例示が並んでいます。第3.7項を読めば可、定義条項を読めば疑わしい取引行為。どちらも同じ文書です。

IS6FX は条件つきで濫用に当たりうる形

利用規約 第7条は、同一または類似の銘柄で同時期に買いと売りのポジションを保有すること(異なる口座を通じた場合を含む)を、当社の利益を不当に取ることを目的とする場合に該当するとしています。

「目的とする場合」という条件が付いていますが、その目的を誰がどう判断するかは、第12条が定めています。「禁止行為に該当するかどうかの判断は当社が行い、その内容と根拠を利用者に説明することを要しない」。

両建てと判断されたとき、利益はどうなるのか

調べた30社のうち26社が、取引の無効化や利益の取消を行える条項を持っています。両建てが禁止行為に当たると判断された場合も、この条項が使われます。

  • HFM——顧客契約書 24.4条(h)は「口座を閉鎖し、禁止された取引手法から生じた利益を没収し、当初の入金額を返還する」
  • iFOREX——該当の兆候または疑いがある場合、関連口座のすべての取引を無効にしてキャンセル
  • Vantage Trading——第1.4項 v) により、疑わしい取引行為が疑われる場合、口座の停止・損失の回収・注文の無効化と関連する利益の取消しを即時に行えると規定。取消しの対象範囲や金額の上限は書かれていません
  • ThreeTrader——第9.7条(b)は無効化できるとしつつ、顧客が30日以内に決定的な証拠を提出した場合を除くという但し書きを置いています

両建ての条項を確かめる順番

  1. どの層の話かを決める。同一口座内なのか、複数口座なのか、他社を挟むのか。自分がやろうとしていることを先にはっきりさせます
  2. 公開ページの「両建て可」が、どの層について書かれているかを見る。層を書いていない記載が多数あります
  3. 規約の禁止行為と定義条項の両方を開く。禁止と書かれていなくても、定義の側に入っていることがあります
  4. 証拠金の扱いを見る。ゼロなのか、半分なのか、正味なのか。ロスカット時にヘッジポジションも決済されるかどうかも確認します
  5. ゼロカットの適用範囲を見る。TitanFXのように、両建てを理由に対象外とする定めがあります

この手順を5か所に整理したものが海外FXの口座を開く前に、自分で規約を確かめる方法にあります。

FXGTとXMTradingは、あとから見つけました

この2社は、最初は「記載が見当たらない」に分類していました。規約を 両建て・hedging の2語で検索して、0件だったからです。

引き直したときに使った語は hedg(語幹)・opposite position・offsetting position・locked position の4つです。FXGTは「abuse, hedge, or manipulate」という動詞の並びの中に、XMTradingは「internal hedging in coordination with other parties」という句の中に入っていました。どちらも「両建て」という見出しの下には置かれていません。

禁止条項を探すとき、その言葉が見出しに出ているとは限りません。濫用行為の列挙の中に、動詞としてまぎれていることがあります。同じ理由で、いま「見当たらない」としている社にも、まだ見落としがある可能性があります。

この比較で分かること、分からないこと

分かるのは、規約と公開ページに何が書いてあるかだけです。条項が実際にどう運用されているかは分かりません。禁止条項があることは、そのブローカーが危険だという意味ではありません。複数口座や他社をまたぐ両建ては、本来はゼロカットや約定の仕組みを狙う手法として想定されているものです。

それでも3つの層に分けて並べる意味はあると考えています。「両建て可」の4文字が、どの層について書かれたものかを、読者の側で判断できるようにするためです。

スキャルピングの条項はスキャルピングの扱い、アービトラージの定義はアービトラージの定義、3論点の一覧は禁止取引のまとめにあります。

このページの内容は、各ブローカーの利用規約・顧客契約・公開ページから取ったものです。調査基準日は各ブローカーの記事に記載しています。規約は予告なく改定されます。3か月に一度読み直し、変更があれば各記事の更新履歴に記録しています。確認できなかった項目は、推測で埋めずに「記載が見当たらない」と書いています。

両建ての扱いは3層に分かれました。定義の具体性まで含めて絞るなら、30社の比較表と4条件を満たした2社にまとめてあります。合格は「おすすめ」という意味ではありません。その理由も、そのページに書いています。

ご利用にあたって

外国為替証拠金取引は、為替相場の変動により損失が生じるおそれがあります。レバレッジをかけた取引では、預けた証拠金を超える損失が発生する可能性もあります。本記事は調査結果と事実の記録であり、特定のブローカーでの口座開設や取引を推奨するものではありません。最終的な判断はご自身の責任でお願いします。

本記事に記載した内容は調査基準日時点で確認できたものです。取引条件や規約は予告なく変更される場合があるため、実際のご利用前に必ず公式サイトと利用規約の原文をご確認ください。