このページの結論

「両建て可」は、どの範囲までかを書いていないと答えになりません。同じ口座の中、同じブローカーの複数口座をまたぐ場合、他社の口座との間。この3つは別々に定められていて、20社のうち4社が複数口座間を、3社が他社との間を明文で禁止していました。同一口座内は可としながら、複数口座間は禁止しているブローカーがあります。

両建て(ヘッジ)は、公開ページで「可」と書かれていることが多い項目です。ところが規約を開くと、どの口座とどの口座の間なのかで扱いが変わります。

20社の利用規約・顧客契約・公開ページを読み、両建てに関する記載を3つの層に分けて並べました。公開ページの案内は「ブローカーがそう書いている」という事実として扱い、規約の条文と分けています。

層1:同一口座内

扱い ブローカー
可と明記 TitanFXAxiHFMEBC Financial GroupExnessWeTradeVantage TradingLand PrimeMYFX MarketsXS.com(10社)
禁じる条項が見当たらない TradeviewiFOREX(2社)
記載が見当たらない XMTradingAXIORYBigBossFXGTEMCTradingThreeTrader(6社)
条件つきで濫用に当たりうる IS6FX(1社)

証拠金の扱いが、可否よりも効きます

「可」の10社でも、必要証拠金の計算が違います。

  • Exness——両建て時の必要証拠金(Hedged margin)は0%(ヘルプセンター Standard account)
  • Axi——MT4・MT5で同一銘柄を両建てすると標準証拠金要件の半分
  • Vantage Trading——顧客契約 第3.7項が同一口座内の両建てを認め、完全な両建ては必要証拠金をゼロにできるとします
  • iFOREX——証拠金計算上「正味」で扱い、一方の決済は残るポジションと同量の新規注文とみなされます
  • Land Prime——口座タイプや銘柄によってヘッジ証拠金が適用される場合があり、ロスカット基準に達すればヘッジポジションも決済されると注記
  • WeTrade——HMR期間中に片側を決済して証拠金不足になる場合、システムが決済を拒否します

両建て中もスプレッド・スワップ・手数料が発生する場合があることは、Land Prime が明記しています。「証拠金ゼロで持てる」ことと「コストがかからない」ことは別です。

Axi はプラットフォームで答えが変わります

MT4とMT5では両建てが可能です。ところが同社独自のプラットフォームでは不可で、反対ポジションは自動的に相殺されます。

同じブローカーの同じ口座でも、どの画面から注文を出すかで結果が変わる。ここは読んでいて手が止まりました。公開ページのFAQだけを見ていたら、まず気づけません。

層2:同じブローカーの複数口座をまたぐ場合

4社が明文で禁止しています。

ブローカー 条項 内容
HFM 顧客契約書 24.3.3条 複数口座をまたぐ両建て・相殺を禁止。同社の公式FAQは「全銘柄でヘッジ取引が可能です」
IS6FX 利用規約 第12条 「当社内で複数口座を持ってヘッジ取引を行うこと」を禁止行為に列挙
XS.com 第31条 複数口座にまたがる両建てを、指標発表前や窓開け前に閉じる行為を禁止戦略に列挙
iFOREX 顧客契約 第7.1.14項 別口座間・関連法人の口座での同時保有を市場濫用として禁止

HFMは、同じ会社の中で答えが分かれています。公式FAQは「全銘柄でヘッジ取引が可能です」と書き、完全ヘッジでマッチした数量の証拠金がゼロになると説明します。顧客契約書 24.3.3条は、複数口座をまたぐ両建て・相殺を禁止しています。層が違えば、どちらも正しい。ただし「可能です」だけを読むと、そうは読めません。

禁止していないが、別の形で効くブローカー

TitanFX は複数口座間の両建てを禁止していません。ただし取扱商品ページに、「2つの口座で両建て取引を行った場合」はゼロカットの対象外と書かれています。

禁止ではなく、損失を自分でかぶることになる、という定め方です。禁止事項の一覧を探しても見つかりません。

層3:他社の口座との間

ここを禁止しているのは3社でした。

  • iFOREX——第7.1.14項に「他社との間で」同一または類似銘柄のロングとショートを同時に保有する行為が含まれます
  • IS6FX——第12条が「2つ以上の業者に入金してヘッジ取引を行うこと」を明記
  • XS.com——第31条に「当社の口座か他社の口座かを問わず」という文言があります。執筆時点で調べた20社では、ここまで書いているのはこの1社だけでした

他社の口座で何をしているかを、ブローカーが確認する手段はふつうありません。それでも条項として置かれているのは、発覚したときに根拠として使える状態にしておくためだと読めます。

禁止条項ではなく、定義条項に置かれている3社

ThreeTraderVantage TradingMYFX Markets は、両建てを禁止とは書いていません。ただし規約の「操作行為」「疑わしい取引行為」「濫用」の定義の中にヘッジが入っています。

  • ThreeTrader——第9.7条(c)が「内部または外部のヘッジ」を操作行為の列挙に含めています。公開ページに可否の記載は見当たりません
  • Vantage Trading——顧客契約 第3.7項で同一口座内の両建てを認める一方、「疑わしい取引行為」の定義 a) に同一・類似の原資産の買いと売りを同時期に持つことを例示しています
  • MYFX Markets——日本語のよくあるご質問は「ヘッジングに制限はありません」。コモロ名義の Client Agreement 第23.2(b)項は、他者と協調した内部ヘッジ(internal hedging in coordination with other parties)を濫用の例に挙げます

Vantage は、同じ契約書の中で認めと例示が並んでいます。第3.7項を読めば可、定義条項を読めば疑わしい取引行為。どちらも同じ文書です。

IS6FX は条件つきで濫用に当たりうる形

利用規約 第7条は、同一または類似の銘柄で同時期に買いと売りのポジションを保有すること(異なる口座を通じた場合を含む)を、当社の利益を不当に取ることを目的とする場合に該当するとしています。

「目的とする場合」という条件が付いていますが、その目的を誰がどう判断するかは、第12条が定めています。「禁止行為に該当するかどうかの判断は当社が行い、その内容と根拠を利用者に説明することを要しない」。

該当したとき、利益はどうなるのか

調べた20社のうち18社が、取引の無効化や利益の取消を行える条項を持っています。両建てが禁止行為に当たると判断された場合も、この条項が使われます。

  • HFM——顧客契約書 24.4条(h)は「口座を閉鎖し、禁止された取引手法から生じた利益を没収し、当初の入金額を返還する」
  • iFOREX——該当の兆候または疑いがある場合、関連口座のすべての取引を無効にしてキャンセル
  • Vantage Trading——第1.4項 v) により、疑わしい取引行為が疑われる場合、口座の停止・損失の回収・注文の無効化と関連する利益の取消しを即時に行えると規定。取消しの対象範囲や金額の上限は書かれていません
  • ThreeTrader——第9.7条(b)は無効化できるとしつつ、顧客が30日以内に決定的な証拠を提出した場合を除くという但し書きを置いています

確かめる順番

  1. どの層の話かを決める。同一口座内なのか、複数口座なのか、他社を挟むのか。自分がやろうとしていることを先にはっきりさせます
  2. 公開ページの「両建て可」が、どの層について書かれているかを見る。層を書いていない記載が多数あります
  3. 規約の禁止行為と定義条項の両方を開く。禁止と書かれていなくても、定義の側に入っていることがあります
  4. 証拠金の扱いを見る。ゼロなのか、半分なのか、正味なのか。ロスカット時にヘッジポジションも決済されるかどうかも確認します
  5. ゼロカットの適用範囲を見る。TitanFXのように、両建てを理由に対象外とする定めがあります

この手順を5か所に整理したものが海外FXの口座を開く前に、自分で規約を確かめる方法にあります。

この比較で分かること、分からないこと

分かるのは、規約と公開ページに何が書いてあるかだけです。条項が実際にどう運用されているかは分かりません。禁止条項があることは、そのブローカーが危険だという意味ではありません。複数口座や他社をまたぐ両建ては、本来はゼロカットや約定の仕組みを狙う手法として想定されているものです。

それでも3つの層に分けて並べる意味はあると考えています。「両建て可」の4文字が、どの層について書かれたものかを、読者の側で判断できるようにするためです。

スキャルピングの条項はスキャルピングの扱い、アービトラージの定義はアービトラージの定義、3論点の一覧は禁止取引のまとめにあります。

このページの内容は、各ブローカーの利用規約・顧客契約・公開ページから取ったものです。調査基準日は各ブローカーの記事に記載しています。規約は予告なく改定されます。3か月に一度読み直し、変更があれば各記事の更新履歴に記録しています。確認できなかった項目は、推測で埋めずに「記載が見当たらない」と書いています。

ご利用にあたって

外国為替証拠金取引は、為替相場の変動により損失が生じるおそれがあります。レバレッジをかけた取引では、預けた証拠金を超える損失が発生する可能性もあります。本記事は調査結果と事実の記録であり、特定のブローカーでの口座開設や取引を推奨するものではありません。最終的な判断はご自身の責任でお願いします。

本記事に記載した内容は調査基準日時点で確認できたものです。取引条件や規約は予告なく変更される場合があるため、実際のご利用前に必ず公式サイトと利用規約の原文をご確認ください。