最終更新:2026年10月7日
海外FXブローカーの公式サイトを下までたどると「コモロ」「アンジュアン」「MISA」といった言葉が並んでいることがあります。私はこの3つを最初、同じような意味だと思っていました。調べてみると、片方は島の名前で、もう片方は機関の名前でした。
この記事では、コモロ中央銀行が2025年12月に出した公告を読んだうえで、その公告から確認できることと、確認できないことを分けて書きます。そのあとで、執筆時点で調べた30社のうちコモロ系の表示がある4社について、ライセンスを持つ法人と、日本の利用者が契約する法人を別々に確認した結果を並べます。
コモロ中央銀行の公告を確認する
発行はコモロ中央銀行(Banque Centrale des Comores)、掲載元はコモロ財務省(Ministère des Finances du Budget et du Secteur Bancaire)です。日付は2025年12月10日。表題は「オフショア銀行業務の違法な営業について」(SUR L’EXERCICE ILLEGAL D’ACTIVITES BANCAIRES OFFSHORES)です。
先に書いておきます。この公告が扱っているのは、銀行と金融機関の認可です。FX業者の登録について書かれた文書ではありません。ここを外すと、以降の読み方がまるごとずれます。
公告は2段構えでした。前半で名指しされているのは銀行です。コモロの当局に認可されたと称している、として次の社名が並びます。
- EXIM CREDIT BANK、DAFRI BANK、DTS CIRCLE BANK(後の2行は Comoros International Banking Authority〈CIBA〉を通じて、と書かれています)
- WEALTH BANK LTD、GSB GOLD STANDARD BANK LTD、BLISS BANK、CORIOLIS BANK CORPORATION、REVOLLET INTERNATIONAL LIMITED、Ray Next Bank Limited、TRI BANK、FORBES PRIVATE BANK(Mwali International Services Authority による認可とされるもの)
- FOREIGN FINANCE BANK、INTERNATIONAL FINANCE BANK LTD、ROCHESTER BANK、MICRO CAPITAL BANK、SOLEIL CHATERED BANK(「アンジュアンのものとされる当局」による認可とされるもの)
後半で、「銀行・金融機関の認可を出すと称する架空の組織(structures fictives)」として次の5つが挙がります。「架空(fictives)」がかかっているのは、この5つの組織そのものです。
- Mwali International Services Authority(M.I.S.A)
- Anjouan Offshore Finance Authority
- Anjouan Corporates Services
- Comoros Services LTD
- Comoros International Banking Authority(CIBA)
原文(フランス語)を見る ― コモロ中央銀行公告(2025年12月10日)
La Banque Centrale des Comores signale également à la vigilance du public, les structures fictives ci-après, qui prétendent délivrer des agréments de banques et d’établissements financiers en Union des Comores.(…)Ces prétendues autorités ainsi que toutes les entités offshores qu’elles ont agréées octroient des agréments et offrent des produits et services bancaires et financiers dans l’illégalité à travers des plateformes et sites internet en ligne.
そのうえで公告は、コモロで営業する銀行・金融機関の認可は中央銀行の専管事項である(l’agrément des banques et établissements financiers exerçant aux Comores est de son ressort exclusif)と述べ、これらの組織とそれらが認可したオフショア法人をモロニ・ムツァムドゥ・モヘリの検察にすでに告発したとしています。
出典:COMMUNIQUE DE LA BANQUE CENTRALE DES COMORES SUR L’EXERCICE ILLEGAL D’ACTIVITES BANCAIRES OFFSHORES(コモロ財務省サイト/2026-09-17確認、2026年9月20日に原文を再確認)
アンジュアン・オフショア金融庁とMISAは、別の島の別の機関です
ここを整理しないと、以降の話が読めません。「アンジュアン」は機関の名前ではなく、コモロ連合を構成する島の名前です。
- アンジュアン島|島の名前。この島の名を冠した機関が Anjouan Offshore Finance Authority(アンジュアン・オフショア金融庁)です
- ムワリ島(モヘリ島)|こちらも島の名前。この島の名を冠した機関が Mwali International Services Authority、略して MISA です
つまりアンジュアンとMISAは並べられるものではありません。並ぶのは「アンジュアン・オフショア金融庁とMISA」、あるいは「アンジュアン島とムワリ島」です。日本語のブローカー紹介で「アンジュアンライセンス」「MISAライセンス」と並べて書かれることがありますが、前者は島の名前、後者は機関の略称です。
なお MISA に定まった日本語訳は見当たらなかったので、この記事では原語のまま書いています。
この公告から確認できること、できないこと
ここは分けておきます。
確認できること。コモロ中央銀行が、上の5つの組織を名指しして「架空」と書き、これらの組織とそれらが認可したオフショア法人が「違法に」銀行・金融のサービスを提供していると書いたこと。そして、銀行・金融機関の認可権限は中央銀行にあると明言したこと。この3つは、公告に文字として書かれています。
確認できないこと。この公告はオフショア銀行業務の違法な営業について書かれた文書であって、個別のFXライセンスを一件ずつ調べて無効だと宣言した文書ではありません。名指しされた法人はすべて銀行の名前で、私が執筆時点で調べた30社は1社も出てきません。「中央銀行が、これらの組織が出したFXライセンスをすべて無効だと結論した」とは、この公告からは読み取れません。そこまで書くと、公告にないことを公告の結論として書くことになります。
言えるのは、ライセンス番号を掲げている側の説明と、その国の中央銀行が出した文書が、正面からぶつかっているという事実までです。どちらが正しいかを私が判定できる立場にはありません。
当局ごとに何が義務づけられているかはライセンス比較に6当局ぶん並べてあります。当局の水準が、そのまま会社の評価になるわけでもありません。
ライセンスを保有する法人と、自分が契約する法人
ここがこの記事でいちばん実用的な部分だと思っています。私が3社を調べたときにやったのは、次の順番です。
- どの機関がそのライセンスを発行・管理しているのか
- そのライセンスを保有している法人はどこか(登録簿や公式ページで名前を確認する)
- 日本に住む人が実際に契約する法人はどこか(利用規約・顧客契約の第1条あたりに書いてあります)
- 2と3は同じ名前か
- 同じでない場合、その2社の関係を一次資料で確認できるか
- そのライセンスが、自分の結ぶ契約にどう関係するのか(契約書がそのライセンスに触れているか)
ライセンス表示を見るときに確かめるのは、番号があるかどうかではありません。そのライセンスを持っている法人の名前が、自分が契約する法人の名前と一致しているかどうかです。
一致しない場合、その関係がどうなっているのかは別途、一次資料で確認する必要があります。手順は規約の確かめ方に書きました。各社の契約先法人は全社比較の表にまとめてあります。
30社のうち4社に、コモロ系の表示がありました
MYFX Markets
公式サイトの最下部にコモロ連合オフショア金融庁(ライセンス番号 L15835/MYFX)とセーシェル金融庁(SD202)の2つを並べています。
2026年9月10日14時18分にアンジュアンの登録簿(anjouanofa.org)で L15835/MYFX を照会した時点では、「有効期限2025年10月3日/STATUS NOT ACTIVE」と表示されました。これは照会した時点の表示であって、いま現在もそう表示されるかどうかを私は確認していません。セーシェルFSAの資本市場の登録簿では MYFX GROUP LIMITED を Securities Dealer として確認できますが、登録簿にライセンス番号の表示欄がなく、SD202 は照合できていません。
この社は、法的文書のページに顧客契約が2本並んでいます。コモロ法人 MYFX Group 名義の Client Agreement と、セーシェル法人 MYFX GROUP LIMITED 名義の Client Service Agreement です。日本の居住者がどちらと契約するのかを示す記載を、私は見つけられませんでした。つまりこの社については、ライセンス保有法人と契約法人が同じなのか違うのかを、そもそも比べられていません。
MYFX Marketsの調査記事に詳しく書いています。
IS6FX
グループのライセンスとして Mwali International Services Authority(MISA)を掲げています。保有しているのは IS6 Technologies Ltd (Comoros)、番号は T2023309。
一方で、日本居住者の契約先はセントビンセント・グレナディーンの IS6 Technologies Ltd (SVG) です。日本の口座開設フォームがリンクする「利用規約(Comoros)」の第1条が、サービス提供者をこのSVG法人と書いています。公式サイトの最下部に並ぶ5法人のうち、ライセンス番号の記載がないのはこのSVG法人だけでした。
ライセンスを保有する法人と、契約する法人が別だということです。IS6FXの調査記事に条項番号つきで書いています。
BigBoss
公式サイトの会社概要に INTERNATIONAL BROKERAGE and CLEARING HOUSE LICENSE(BFX2024045)と記載があります。2026-10-03に読み直したところ、口座開設フォームがリンクする顧客契約の当事者も同じ Big Boss Ltd.(コモロ)になっていました。コモロ系の4社のうち、ライセンス保有法人と契約主体が一致しているのはこの社だけです。
ただし、顧客契約は2通が同時に配信されています。口座開設フォームがリンクするのはコモロ名義(2026年9月7日版・全37ページ)で、もう一方の agreement.pdf(全38ページ)の当事者はセントビンセント・グレナディーンの Prime Point LLC(登録番号 380LLC2020)です。当事者の法人名も登記国も違う契約書が、同じサイトで両方開けます。
BigBossの調査記事を参照してください。
FXCC
投資サービス一般条件の表紙が、Central Clearing Ltd はムワリ国際サービス機構(MISA)の認可と規制を受け、ライセンス番号は BFX2024085 だと書いています。所在地はコモロ連合モヘリ島フォンボニのボノボ通りで、日本語の利用規約ページも同じ社名と所在地を載せています。
この番号は、BigBoss が掲げる BFX2024045 と同じ「BFX」+西暦+連番の形です。発行主体として書かれている機関も同じ MISA です。
ただし日本語サイトのフッターの「制限地域」には、日本の居住者にはサービスを提供していないと書かれています。ライセンス保有法人と契約法人が別かどうか以前に、会社の説明では日本居住者が契約する形になっていません。
FXCCの調査記事に書いています。
4社を並べて分かったこと
4社を同じ項目で並べます。「発行主体とされる機関」は、各社が自分でそう書いているという意味で、私がその機関の実在や権限を確かめたという意味ではありません。
| 社名 | 発行主体とされる機関 | ライセンスを保有する法人 | 番号 | 日本居住者が契約する法人 |
|---|---|---|---|---|
| IS6FX | Mwali International Services Authority(MISA) | IS6 Technologies Ltd (Comoros)(登録番号 HY00623405) | T2023309 | IS6 Technologies Ltd (SVG) |
| BigBoss | 会社概要に機関名の記載が見当たりません | Big Boss Ltd.(コモロ) | BFX2024045 | Big Boss Ltd.(コモロ)(2026-10-03に確認。9月8日時点は Prime Point LLC・セントビンセント) |
| MYFX Markets | 公式サイトの最下部の表記は「コモロ連合オフショア金融庁」 | MYFX Group(コモロ/会社番号15835) | L15835/MYFX | 特定できていません |
| FXCC | Mwali International Services Authority(MISA) | Central Clearing Ltd | BFX2024085 | フッターは日本居住者にサービスを提供していないと記載 |
確認資料と確認日:IS6FX は利用規約(Comoros)・公式サイトの会社情報・MISAのブローカー一覧(2026年9月9日)。BigBoss は利用規約の前文・公式サイトの会社概要(2026年9月11日)。MYFX Markets は2本の顧客契約・公式サイトの最下部の表記・アンジュアンおよびセーシェルの登録簿(2026年9月10日)。登録簿の表示は時間とともに変わります。
4社とも、違う形でした。
- IS6FX|コモロ系のライセンスを保有しているのはグループ内の別法人で、日本の利用者が契約する法人ではありませんでした
- BigBoss|2026-10-03に読み直した時点では、ライセンスを保有する法人と契約の当事者が一致していました。ただし9月8日時点では Prime Point LLC(セントビンセント)で、同じ会社の中で入れ替わっています
- MYFX Markets|契約する法人そのものを特定できていません。比べる材料が足りていない、というのが正確なところです
- FXCC|フッターに、日本居住者にはサービスを提供していないと書かれています
「4社ともこうでした」とまとめたくなるところですが、まとまりませんでした。同じ当局の名前が出ている4社が、契約主体の見え方では4通りに分かれた、というのがこのページの結果です。
これは「コモロだから」起きていることではなく、ライセンス表示と契約主体がずれるという、当局を問わず起きうる形です。執筆時点で調べた30社を同じやり方で見ているのは、この形が他でも出てくるかを確かめるためです。
まとめ
コモロ中央銀行は2025年12月10日の公告で、Anjouan Offshore Finance Authority と Mwali International Services Authority(MISA)を含む5つの組織を「架空(fictives)」と書き、これらの組織とそれらが認可したオフショア法人が「違法に」銀行・金融のサービスを提供しているとしました。銀行・金融機関の認可は中央銀行の専管事項だとも明言しています。ただしこれは銀行と金融機関の認可についての文書で、名指しされているのはすべて銀行の名前です。個別のFXライセンスの有効性を一件ずつ判断した文書ではありません。
そして、執筆時点で調べた30社のうちコモロ系の表示があるのは4社。その4社が、4通りに分かれました。ライセンスを持つ法人と契約の当事者が一致していたのがBigBoss(2026-10-03時点)、保有しているのが別法人だったのがIS6FX、契約する法人を特定できなかったのがMYFX Markets、日本居住者には提供していないとフッターに書いているのがFXCCです。
読者にお伝えしたいのは、コモロが安全か危険かという話ではありません。ライセンスの名前と番号だけを見るのではなく、どの機関のライセンスなのか、それを保有しているのはどの法人か、自分が契約するのはどの法人か、の3つを分けて確認する。そのうえで、そのライセンスが自分の契約にどう関係するのかまで見られれば、いちばん確かです。確認の順番は上に書いたとおりです。
この記事は、コモロ中央銀行の公告とアンジュアンの登録簿、各社の公開ページと利用規約から書いています。名指しや掲載があることは、その会社に違法性があると確定したという意味ではありません。このサイトは出金拒否などの被害の有無を確認していません。