最終更新:2026年11月2日

海外FXのブローカーを選ぶときに読まれるのは、たいていスプレッドとレバレッジと出金日数です。そのどれにも出てこない条項が、口座を持ったあとに効いてきます。

ここでは、執筆時点で調べた30社の利用規約・顧客契約から、公開ページの説明には出てこないのに、利用者の資金に直接かかわる条項を項目ごとに並べています。どれも条項番号を添えてあるので、原文で確かめられます。

利益の取消:約定した利益を、あとから無効にできる条項が30社中26社にあります

約定して口座に入った利益を、会社の側があとから取り消せる、と書いた条項です。条文の射程は社ごとに違います。禁止された手法で得た利益だけを指す社と、「当社が適当と認める場合」まで広げる社に分かれます。

いちばん限定して書いているのは TitanFX と ThreeTrader の2社です。ThreeTrader 規約 第9.7条(b) は「同社が支払う側となる取引」を最初から無効として扱える、と書いています(顧客が30日以内に決定的な証拠を出した場合を除く)。自分が払う側の取引だけを無効にする、という読み方になります。

社ごとの条文は30社の利益取消条項に並べました。

休眠口座手数料:金額まで規約に書いてあるのは12社でした

使っていない口座から、毎月引かれていく手数料です。休眠と判定されるまでの期間は、60日から12か月まで開きます。口座を放置して忘れていると、残高がここで減ります。

FXGT 利用規約 第16.9.1条は、90日間の無取引で初回20ドル、その後30日ごとに10ドル。ThreeTrader 規約 第6.4条(d) は、残高500ドル未満かつ6か月以上未使用の場合に月次の口座維持手数料を課すことがある、としています。金額を書かずに「課すことがある」とだけ置く社もあります。

期間と金額の一覧は30社の休眠口座手数料にあります。

免責と責任制限:サーバー障害や通信の遅延で損をしても、会社は責任を負わないと書いてあります

約定しなかった、スリッページが出た、ログインできなかった。こうした場面を名指しで免責している条項が、どの社にもあります。見るべきは、何を免責しているかより、例外があるかどうかです。

XMTrading 利用規約 第84.2〜84.4項は、電子・機械設備および通信回線の障害を挙げ、結果的・付随的・特別・直接・間接の損害までを対象にしています。会社側の重過失や故意を例外にする但し書きが見当たらない社もありました。

条文ごとの比較は30社の免責条項に置きました。

利益相反:「当社はお客様の取引の相手方です」と書いた社が30社中20社あります

注文を市場に流しているとは限りません。会社が自分で相手方になる、と条文に書いている社が20社ありました。この形だと、利用者の損が会社の益になります。

TitanFX 利用規約 第4.2条・第4.3条は「当社は、お客様との取引においてお客様の代理人または代表者としてではなく、取引主体として行動する」と書いています。さらに1社、BigBoss 第14.1条は、顧客と反対のポジションを取る権利まで条文にしています。

この構図自体は海外FXでは珍しくありません。隠れているのが問題で、書いてあること自体は問題ではない、という立場で並べています。社ごとの条文は30社の利益相反条項に。

顧客資金の扱い:「分別管理」と書いてあっても、中身は9通りでした

同じ「分別管理」という言葉が、まったく違うことを指しています。分別・信託・所有権移転は、それぞれ別のことです。オムニバス口座を認めるかどうか、預け先が破綻したときどうなるかも、社ごとに違いました。

信託保全と分別管理は別物です。日本の国内業者に義務づけられている信託保全と同じものだと読むと、前提が変わります。9通りの分類は30社の顧客資金の条項に書きました。

紹介報酬の出どころ:2社が「あなたが追加で払う場合がある」と規約に書いています

紹介者(IB)への報酬は、どこから出ているのか。多くの社は、そもそも出どころを書いていません。書いている社のうち2社は、通常のスプレッドを超える支払いを求められる場合がある、としています。

紹介経由で口座を開いたときに、自分のコストが変わりうるということです。条文を置いている社と、置いていない社の内訳は紹介報酬は、どこから出ているのかにまとめました。

規約の改定:同意したはずの規約は、通知だけで変わります。猶予は0日から2か月まで

規約は、顧客の事前同意なしに変わります。違うのは猶予日数です。通知から2か月の猶予を置く社もあれば、掲載した時点で発効と書く社もあります。

読んでいて手が止まったのは、ここです。実際に1社で、日付はそのままなのに版番号だけが上がっていました。更新日の表示を見ているだけでは、変わったことに気づけません。EAを動かしたまま放置していると、禁止手法の定義が変わっていた、ということが起こりえます。

社ごとの猶予日数は30社の改定条項と猶予日数に。この表は2026-10-03に8社ぶんを分類し直しています。

準拠法と裁判所:争う場所は、口座を開いた時点で決まっています

規約の末尾に、どこの法律で、どこの裁判所で争うかが書いてあります。多くはオフショアの裁判所です。日本に窓口があっても、争う場所は別です。

日本語のサポートがあることと、日本の裁判所で争えることは、別の話になります。日本の窓口でできること・できないことも分けて書きました。社ごとの準拠法と裁判地は30社の準拠法と裁判所にあります。

契約の言語:日本語で読んだ条文が、効く条文とは限りません

準拠法と並んで末尾に置かれていることが多いのが、言語の定めです。執筆時点で調べた30社のうち20社が、英語版が優先すると書いています。日本語で読めた条文は参考訳、という建てつけです。

一方で契約書の本体を日本語で読めるのは4社だけでした。そのうち3社は、同じ日本語の文書のなかで英語が優先すると断っています。TitanFXは第1.4条で、日本語のPDFの1ページ目に日本語でそう書いています。

社ごとの条項番号と、書いてある場所の違いは30社の言語についての定めに。番号のない冒頭に置いている社が5社、顧客契約ではなく別の文書に置いている社が4社ありました。

雛形:同じ条文が、別の会社の規約に同じ番号で入っています

30社を1社ずつ読んでいると、同じ文に何度も当たります。条文が番号ごと一致する組み合わせが8つありました。いちばん範囲が広い組は、終了条項から口座のセキュリティまで丸ごと同じです。

並べて分かったのは、雛形が会社単位ではなく、条文の部分単位で流通していることでした。Axiの第2.2条はVantageとVT Marketsと同じで、言語の第21.4条(b)はMYFX Marketsと同じ。終了条項はどちらとも違います。

8系統の内訳と条項番号は雛形の系統を条項番号で並べましたに。同じ雛形を使っていることは、同じ運営だという意味ではありません。資本関係は調べていません。

ライセンス表示:掲げられた番号が、当局の登録簿で引けないことがあります

準拠法や言語の定めと違って、ライセンスの表示は規約ではなく公開ページに出てきます。執筆時点で調べた30社ぶんを当局の登録簿で引き直したら、同じ形が3つ出てきました。

いちばん多いのは、法人名は登録簿に載っているのに、掲げられた番号が載っていない形です。番号が偽物だという意味ではありません。当局が登録簿に番号の欄を置いていないだけ、という可能性がいちばん高いと思います。ただ、読者が自分で確かめる道は閉じています。

2つめはライセンスの持ち主と契約の相手が別の形、3つめは番号ではないものが番号として並んでいる形です。Axiは顧客契約の冒頭で、当局がこの業務を規制も監督もしていないと自ら書いていました。社ごとの内訳は30社のライセンス表示を登録簿で引き直しましたに。ライセンスの有無は、点数にも足切り(このサイトでいう最低条件です)にも使っていません。

個人情報と録音:サポートに打ったチャットも、条項の対象に入っています

規約の条項とは別に、口座を開くと身分証と住所確認書類を出します。その扱いは、個人情報保護方針ではなく顧客契約のほうに書いてありました。

いちばん広いのはXMTradingの第37.1条です。通話・電子メッセージ・メール・チャット・ミーティングが並び、録音は会社の単独所有物で、内容は決定的な証拠として受け入れる、とあります。Exness 第7.6条とLand Prime 第32条は、警告音なしでも録音しうると書いています。

保存期間は書き方で意味が逆になります。EBCの第7.1条は「最大7年」、XS.comとTraders Trustは「最低7年」。年数の記載が見当たらない社も5社ありました。社ごとの条項番号は個人情報と録音の条項に。読んだ個人情報保護方針10本には、録音のことが1社も書いていません。

通貨換算:円口座でドル建ての銘柄を触ると、会社が選んだレートで換算されます

XAUUSDはドル建てです。口座の基準通貨が円なら、損益はどこかで円に換算されます。そのレートが誰のものかは、顧客契約に書いてあります。

いちばんはっきり書いていたのはXMTradingでした。第53.3条は「会社が選ぶ合理的なレートで換算する」とし、そのうえで「レートにマークアップを足す権利がある」と書いています。Exness 第23.1条は「事前の通知なく」換算できるとし、Axiは定義の段階で「インターバンクレートとスプレッドを考慮したレート」と書いています。

見出しを独立して置いている社は5社でした。VantageとVT Marketsは第3.3条が同一の条文で、spotをsportと綴った誤記まで同じでした。社ごとの条項番号は通貨換算の条項に。

スプレッド:広告は最小値の話、規約は「保証しない」側の話です

規約を読めた29社のうち、「会社の裁量で変えられる」「最大・最小を保証しない」と明文で書くのは13社でした。iFOREXは日本語の契約に「スプレッドの変更は、いつでも予告なしに行われること」と書いています(第10.1.5条)。

逆に規約本文に「スプレッド」の語が一度も出てこない会社も5社ありました。5つの型への分類はスプレッドは規約で何を約束されているかに。

苦情処理:返事を待っているあいだに、明細への異議の期限が切れます

約定や残高がおかしいと思ったとき、期限は2種類あります。こちらが異議を述べる期限と、会社が答える期限です。長さがまるで違いました。

異議の期限はBigBossが第7条で1日、iFOREX 第11.2条とWeTrade 第14.5条が2営業日、MYFX Markets 第6.14条が3営業日、Land Primeは48営業時間です。過ぎると記録は確定的で拘束力を持つ、と書かれています。

一方で会社の最終回答は21営業日や30営業日が並び、XS.comは極度に複雑な場合90営業日まで延長できます。つまり返事を待っているあいだに、こちらの期限は過ぎます。社ごとの日数は苦情処理と異議の期限に。

規約用語:同じ言葉が、社ごとに違うものを指しています

分別管理と信託保全、マージンコールとストップアウト。混同されやすい言葉を、規約の定義のまま並べました。

ほかの15本は、この用語を前提に書いています。読んでいて意味が取れなくなったら、規約用語に戻ってください。

どこから読むか

目的別に、入口を3つ置いておきます。

禁止取引は別にまとめています

スキャルピング・両建て・アービトラージについては、条項の数が多いので禁止取引に分けました。この2つはつながっています。禁止の定義が広い社ほど、利益取消条項の射程も広くなるからです。

読み方

このサイトが確かめているのは、契約書にどう書いてあるかだけです。出金拒否などの被害があったかどうかは確認していません。条項があること自体は、その会社が危険だという意味ではありません。

見るべきは、条項があるかないかより範囲が書いてあるかどうかだと思っています。何をどこまで取り消せるのか、異議を申し立てる手続があるのか。そこを書いている社は、執筆時点ではごくわずかでした。

規約の全体像を横に並べたページも用意しています。顧客資金の扱い、取引の相手方は誰か、規約はいつ変わるか、準拠法と裁判所、契約の言語、雛形の系統、免責と責任の制限、紹介報酬の出どころ。どれも30社を同じ言葉で検索して、条項番号つきで並べたものです。

預けた資金そのものが規約でどう扱われるかは、顧客資金の扱いに30社ぶん並べました。分別・信託・所有権移転の3つは、別のことを指しています。

調べ方そのものは規約の確かめ方に、判断の基準は調査方針と足切り基準に書いています。

読んだ時点の規約が、いまも同じとは限りません。各社の規約ページを毎日取得して、変わった行を規約の変更記録に残しています。改訂の通知と効力そのものについては、規約はいつ変わるのかに条項番号つきで並べました。