最終更新:2026年10月8日
海外FXのブローカーを選ぶときに読まれるのは、たいていスプレッドとレバレッジと出金日数です。そのどれにも出てこない条項が、口座を持ったあとに効いてきます。
ここでは、執筆時点で調べた30社の利用規約・顧客契約から、公開ページの説明には出てこないのに、利用者の資金に直接かかわる条項を項目ごとに並べています。どれも条項番号を添えてあるので、原文で確かめられます。
利益の取消:約定した利益を、あとから無効にできる条項が30社中26社にあります
約定して口座に入った利益を、会社の側があとから取り消せる、と書いた条項です。条文の射程は社ごとに違います。禁止された手法で得た利益だけを指す社と、「当社が適当と認める場合」まで広げる社に分かれます。
いちばん限定して書いているのは TitanFX と ThreeTrader の2社です。ThreeTrader 規約 第9.7条(b) は「同社が支払う側となる取引」を最初から無効として扱える、と書いています(顧客が30日以内に決定的な証拠を出した場合を除く)。自分が払う側の取引だけを無効にする、という読み方になります。
社ごとの条文は30社の利益取消条項に並べました。
休眠口座手数料:金額まで規約に書いてあるのは12社でした
使っていない口座から、毎月引かれていく手数料です。休眠と判定されるまでの期間は、60日から12か月まで開きます。口座を放置して忘れていると、残高がここで減ります。
FXGT 利用規約 第16.9.1条は、90日間の無取引で初回20ドル、その後30日ごとに10ドル。ThreeTrader 規約 第6.4条(d) は、残高500ドル未満かつ6か月以上未使用の場合に月次の口座維持手数料を課すことがある、としています。金額を書かずに「課すことがある」とだけ置く社もあります。
期間と金額の一覧は30社の休眠口座手数料にあります。
免責と責任制限:サーバー障害や通信の遅延で損をしても、会社は責任を負わないと書いてあります
約定しなかった、スリッページが出た、ログインできなかった。こうした場面を名指しで免責している条項が、どの社にもあります。見るべきは、何を免責しているかより、例外があるかどうかです。
XMTrading 利用規約 第84.2〜84.4項は、電子・機械設備および通信回線の障害を挙げ、結果的・付随的・特別・直接・間接の損害までを対象にしています。会社側の重過失や故意を例外にする但し書きが見当たらない社もありました。
条文ごとの比較は30社の免責条項に置きました。
利益相反:「当社はお客様の取引の相手方です」と書いた社が30社中20社あります
注文を市場に流しているとは限りません。会社が自分で相手方になる、と条文に書いている社が20社ありました。この形だと、利用者の損が会社の益になります。
TitanFX 利用規約 第4.2条・第4.3条は「当社は、お客様との取引においてお客様の代理人または代表者としてではなく、取引主体として行動する」と書いています。さらに1社、BigBoss 第14.1条は、顧客と反対のポジションを取る権利まで条文にしています。
この構図自体は海外FXでは珍しくありません。隠れているのが問題で、書いてあること自体は問題ではない、という立場で並べています。社ごとの条文は30社の利益相反条項に。
顧客資金の扱い:「分別管理」と書いてあっても、中身は9通りでした
同じ「分別管理」という言葉が、まったく違うことを指しています。分別・信託・所有権移転は、それぞれ別のことです。オムニバス口座を認めるかどうか、預け先が破綻したときどうなるかも、社ごとに違いました。
信託保全と分別管理は別物です。日本の国内業者に義務づけられている信託保全と同じものだと読むと、前提が変わります。9通りの分類は30社の顧客資金の条項に書きました。
紹介報酬の出どころ:2社が「あなたが追加で払う場合がある」と規約に書いています
紹介者(IB)への報酬は、どこから出ているのか。多くの社は、そもそも出どころを書いていません。書いている社のうち2社は、通常のスプレッドを超える支払いを求められる場合がある、としています。
紹介経由で口座を開いたときに、自分のコストが変わりうるということです。条文を置いている社と、置いていない社の内訳は紹介報酬は、どこから出ているのかにまとめました。
規約の改定:同意したはずの規約は、通知だけで変わります。猶予は0日から2か月まで
規約は、顧客の事前同意なしに変わります。違うのは猶予日数です。通知から2か月の猶予を置く社もあれば、掲載した時点で発効と書く社もあります。
読んでいて手が止まったのは、ここです。実際に1社で、日付はそのままなのに版番号だけが上がっていました。更新日の表示を見ているだけでは、変わったことに気づけません。EAを動かしたまま放置していると、禁止手法の定義が変わっていた、ということが起こりえます。
社ごとの猶予日数は30社の改定条項と猶予日数に。この表は2026-10-03に8社ぶんを分類し直しています。
準拠法と裁判所:争う場所は、口座を開いた時点で決まっています
規約の末尾に、どこの法律で、どこの裁判所で争うかが書いてあります。多くはオフショアの裁判所です。日本に窓口があっても、争う場所は別です。
日本語のサポートがあることと、日本の裁判所で争えることは、別の話になります。日本の窓口でできること・できないことも分けて書きました。社ごとの準拠法と裁判地は30社の準拠法と裁判所にあります。
規約用語:同じ言葉が、社ごとに違うものを指しています
分別管理と信託保全、マージンコールとストップアウト。混同されやすい言葉を、規約の定義のまま並べました。
ほかの8本は、この用語を前提に書いています。読んでいて意味が取れなくなったら、規約用語に戻ってください。
どこから読むか
目的別に、入口を3つ置いておきます。
- 口座を開く前なら|取引の相手方と顧客資金の扱い。この2つは、あとから変えられない前提にあたります
- すでに口座を持っているなら|利益の取消と休眠口座手数料。いま効いている条項です
- 言葉の意味でつまずいたら|規約用語から。他の8本は、この用語を前提に書いています
禁止取引は別にまとめています
スキャルピング・両建て・アービトラージについては、条項の数が多いので禁止取引に分けました。この2つはつながっています。禁止の定義が広い社ほど、利益取消条項の射程も広くなるからです。
読み方
このサイトが確かめているのは、契約書にどう書いてあるかだけです。出金拒否などの被害があったかどうかは確認していません。条項があること自体は、その会社が危険だという意味ではありません。
見るべきは、条項があるかないかより範囲が書いてあるかどうかだと思っています。何をどこまで取り消せるのか、異議を申し立てる手続があるのか。そこを書いている社は、執筆時点ではごくわずかでした。
規約の全体像を横に並べたページも用意しています。顧客資金の扱い、取引の相手方は誰か、規約はいつ変わるか、準拠法と裁判所、免責と責任の制限、紹介報酬の出どころ。どれも30社を同じ言葉で検索して、条項番号つきで並べたものです。
預けた資金そのものが規約でどう扱われるかは、顧客資金の扱いに30社ぶん並べました。分別・信託・所有権移転の3つは、別のことを指しています。
調べ方そのものは規約の確かめ方に、判断の基準は調査方針と足切り基準に書いています。