
最終更新:2026年10月23日
「入金に使った業者が止まった」「同じ方法でしか出金できないと言われた」で来られた方へ。私が確かめたのは、規約と公開ページに何が書いてあるかだけです。どの決済業者が止まるかは予想していません。
・規約は3つの層に分かれています
・「入金と同じ方法で返す」10社
・返せないときどうするか、書いていたのは2社
海外FXの入出金には、たいてい会社と自分のあいだに決済業者が入ります。クレジットカード、電子ウォレット、国内の銀行送金を仲介する業者です。
この層が止まると何が起きるか。出金の受け取り先が消えます。規約の多くが「入金に使ったのと同じ方法で返す」と定めているからです。マネーロンダリング対策としては合理的な定めですが、その方法が使えなくなった場合の話は、別に書いてある必要があります。
30社を読み直して分かったのは、規約が3つの層に分かれていることでした。そして3層目まで書いている会社は2社でした。
規約は3つの層に分かれています
第1層:入金額の分は、入金に使った方法に返す。10社で確認しました。
第2層:入金額を超える分、つまり利益は、別の方法になる。4社が明記しています。
第3層:その方法が使えないとき、会社はどうするか。2社だけが書いています。
読んでいていちばん効くと思ったのは第2層でした。カードや電子ウォレットで入金した人は、出金が2本に分かれます。入金額の分はその方法へ、利益の分は銀行口座へ。片方の受け取り先が消えると、片方だけが止まります。
第1層:「入金と同じ方法で返す」10社
| 会社 | 書いてあること | 根拠 |
|---|---|---|
| XMTrading | 同じ送金人・同じ決済方法に送金する権利がある(義務ではない) | 利用規約 第62.6条 |
| FXGT | 入金元・同じ決済方法・同じ送金人に返す | 利用規約 第15.10.2条(ii) |
| Traders Trust | カードでの支払いは、支払いに使った同じカードへ | 顧客サービス契約 第26.1条 |
| iFOREX | 入金が本人のものと確認できない場合、受領したのと同じ方法で送金者に返す | 顧客契約 第9.2.3項 |
| WeTrade | 返金は原則として、入金に使った同じ決済方法で処理する | 返金・返品規約 第2項 |
| IC Markets | 資金は通常、入金時に利用したものと同じ方法で返金される | 顧客契約 第14.8条/出金ポリシー(公開ページ) |
| Vantage | 入金に使用された口座と同じ口座にのみ出金処理を行う | 入出金規約(公開ページ) |
| XS.com | 入金額の全額を、入金時と同じ方法・同じ順序で出金する必要がある | 入出金ページ(公開ページ) |
| Tickmill | カード入金の総額と同額までの出金は、同じカードに戻る | 入出金の条件(公開ページ) |
| Milton Markets | 入金と同じ方法で出金を申請する必要がある | 入出金ページ(公開ページ) |
根拠の列を分けたのは、重さが違うからです。規約の条項は契約の一部です。公開ページの案内は、会社がいつでも書き換えられます。このサイトでは公開ページの説明を判定の根拠にしませんが、実務の運用を知るには役に立つので、分けて載せました。
XS.com の「同じ順序で」という書き方は、調べた範囲でここだけでした。複数の方法で入金した場合に、どの順に出金するかまで決めていると読めます。カードで入れて電子ウォレットでも入れた人は、出す順番を自分で選べないことになります。
第2層:利益分は別の方法になる、と書いている4社
| 会社 | 書いてあること | 根拠 |
|---|---|---|
| Tradeview | カード・電子ウォレット入金では出金額が元の入金額を超えられない。利益は銀行送金など別の方法で送る | 出金ポリシー |
| TitanFX | 入金額を超える取引利益の出金は、顧客が選択する利用可能な支払方法に応じて処理される | 入出金規約(日本語PDF) |
| IC Markets | 元の入金額を超える金額は、カードへの出金(カードのコピーが必要)または銀行送金などの代替方法 | 出金ページ(公開ページ) |
| VT Markets | 元の入金額を超える金額を、同じカードに出金することはできない | 入出金ポリシー(公開ページ) |
Tradeview の出金ポリシーは、受け取り先の名義にも触れていました。
Profits made in excess of the deposited amount will be transferred to a nominated bank account; which must be held in the same name as your trading account.(出金ポリシー)
利益を受け取るには、取引口座と同じ名義の銀行口座が必要ということです。家族の口座や法人の口座では受け取れません。これは決済業者が止まったときに限らず効いてきます。
IC Markets が「カードのコピーが必要」と書いているのも、読み落としやすい点だと思います。利益をカードに戻すには追加の書類が要る、ということです。
第3層:返せないときどうするか、書いていたのは2社
ここがこの調査の山でした。入金に使った方法に返せないとき、会社がどうするかを書いていたのは2社です。
XMTrading の利用規約第62.6条がいちばんはっきりしています。
原文(英語)を見る ― 出典:XMTrading 利用規約 第62.6条
If we are unable to remit the funds, or any partial amount thereof, to the same remitter from, and by the same payment method through which such funds were initially received by us, we reserve the right (but shall under no circumstances be obliged) to transmit the funds via an alternative payment method selected by us, at our sole discretion, in any currency we deem fit (regardless of the currency in which the initial deposit was made).(利用規約 第62.6条)
読みどころが3つあります。一つめ、このケースを想定した条項が実際に存在すること。30社のうち2社だけです。
二つめ、代替手段で送るのは権利であって義務ではないこと。括弧のなかで「いかなる状況においても義務を負わない」と断っています。ここは読んでいて手が止まりました。想定して条項まで書いたうえで、義務にはしないという書き方です。
三つめ、通貨も会社が選べると書いてあること。元の入金通貨と違う通貨で返ってくる可能性がある、という意味です。為替の差は読者が負います。
FXGTは利用規約第15.10.2条(ii)に同じ趣旨を置いています。会社が承認し検証した代替の決済方法で送金する権利を留保する、という書き方です。ただし第15.10.1条(i)により、ここでいう「返金」は、入金したがまだ一度も取引していない顧客に限られます。取引を始めたあとの出金には及びません。
残りの会社に書いていないことは、返してくれないという意味ではありません。書いていないだけです。実務では、業者が止まれば別の方法で出すのが普通だと思います。ただ規約に根拠がないと、揉めたときに読者の側から主張する材料がありません。
決済業者が止まったと聞いたら
条項を読んで、順番が決まりました。
① 入金履歴を保存する。どの方法でいくら入れたかが、第1層と第2層の境目を決めます。会社の記録と自分の記録が合わないと、話が長くなります。マイページの履歴は、口座が閉じると見られなくなります。
② 取引口座と同じ名義の銀行口座を用意しておく。利益分の受け取り先として要求する会社があります。名義が違うと受け取れません。
③ 同意した版の規約を、日付つきで手元に落とす。第3層を書いている2社も、書き換えは自由です。
④ 書面で問い合わせ、送った日時を残す。チャットで済ませると、あとから参照できないことがあります。
出金そのものが止まっている場合は、見る条項が変わります。出金を止められると定めた条項に30社ぶんを並べました。会社が日本から撤退する話であれば、撤退の予告は何日もらえるのかのほうです。ほかの型はいま起きていることから、規約のどこを見ればいいかにまとめています。
この調査の限界
どの決済業者が止まるかは予想していません。ここに書いたのは、止まったときに規約がどうなっているかだけです。特定の業者について危ないとも安全とも書いていません。
決済業者の側の規約は読んでいません。読んだのはブローカー30社の規約と公開ページです。業者とブローカーのあいだの契約がどうなっているかは公開されていないので、分かりません。
第1層で名前が挙がっていない会社に、同じ定めがないとは限りません。私が読んだ文書のなかに見当たらなかった、というだけです。入出金の案内はログイン後にしか出さない会社もあります。
HYCM と MYFX Markets は、robots.txt が私の取得を断っているため読んでいません。この2社は未確認です。EBC は顧客契約そのものが公開文書に見当たらず、EMCTrading は顧客同意書へのリンクが空でした。
調査基準日は2026年10月22日です。条項番号が動いていたら、記事を直して更新履歴に残します。一社ずつの詳しい調査は30社の比較表にあります。