
最終更新:2026年10月23日
「使っている会社が日本から撤退するらしい」で来られた方へ。私が確かめたのは、規約に書いてある予告期間と、終了したあと残高がどう戻るかだけです。どの会社が撤退するかは予想していません。
・予告は何日もらえるのか(26社の条項番号)
・終了したあと、残高はどう戻るのか
・請求できる期限がある会社
海外FXの会社が日本向けのサービスをやめる、という話は何度も起きています。会社そのものが止まることもあれば、会社は続いて日本居住者の受け入れだけをやめることもあります。
そのとき知りたいのは、たぶん一点です。自分の口座にあるお金は、いつまでに、どうやって戻るのか。これは規約の「契約の終了」の条項に書いてあります。執筆時点で調べた30社の規約を当たり、条項に到達できた26社ぶんを原文で読みました。
読んでいていちばん意外だったのは、会社側の予告期間がゼロの会社が10社あったことです。「書面で通知すれば直ちに終了できる」と書いてあり、何日前という定めがありません。その一方で、2か月の予告を明記している会社が1社ありました。同じ業界で、ここまで差が出るとは思っていませんでした。
結論:確かめられたことと、確かめていないこと
確かめたこと。26社について、会社の側から契約を終了できる条項と、そこに書かれた予告期間を読みました。条項番号を添えてあるので、原文にあたれます。
もう一つ確かめたこと。終了したあと残高をどう返すかの定めです。入金元に返すと書く会社、顧客名義の口座にしか返さないと書く会社、債務が片づくまで送金を後ろに倒せると書く会社に分かれました。
確かめていないこと。どの会社が日本から撤退しそうか。これは分かりません。予告期間が長いことは、撤退しないことの保証ではありません。会社が規約どおりに動くかどうかも、規約を読んだだけでは分かりません。
予告は何日もらえるのか:26社の条項
予告期間の長い順に並べました。「即時」は、会社が書面で通知すればその場で終了できると書いてある会社です。「確認」の◎は規約の原文を直接読んだもの、○は原文は読めたが条項が入り組んでおり別条と併せて読む必要があったものです。
| 会社 | 会社側の予告期間 | 条項 | 確認 |
|---|---|---|---|
| Tickmill | 2か月(私的利用)/1か月(商用利用) | 第24.2条 | ◎ |
| DecodeFX | 30日 | 第18.5条 | ◎ |
| ThreeTrader | 30日 | 第18.5条 | ◎ |
| TradeQuo | 15日(サービス提供の中止は1か月前) | 第12.3条・第12.8条 | ◎ |
| BigBoss | 15日 | 第17.10条 | ◎ |
| NordFX | 15暦日 | 第13.5条 | ◎ |
| TitanFX | 14日 | 第21.2条(c) | ◎ |
| AXIORY | 7日 | 第21.3条 | ◎ |
| IS6FX | 7日 | 第15条 | ◎ |
| Milton Markets | 7営業日 | 第22.2条(b)(i) | ○ |
| Traders Trust | 7日 | 第24.1条 | ◎ |
| XMTrading | 7暦日(債務不履行のときは即時) | 第89.2条・第89.3条 | ◎ |
| Exness | 5暦日 | 第10.1条 | ◎ |
| Axi | 即時 | 第13.2条 | ◎ |
| FXDD | 即時 | 第11.8条 | ◎ |
| HFM | 即時(通知なしも可) | 第44.2条・第44.3条 | ◎ |
| IC Markets | 即時 | 第10.8条 | ◎ |
| Land Prime | 即時 | 第29条 | ◎ |
| Tradeview | 即時 | 第28条 | ◎ |
| Vantage | 即時 | 第9.3条(a) | ◎ |
| VT Markets | 即時 | 第9.3条(a) | ◎ |
| WeTrade | 即時 | 第18.1条 | ◎ |
| XS.com | 即時 | 第6.12条 | ◎ |
| FXGT | 予告期間の定めが見当たりません | — | ◎ |
| iFOREX | 予告期間の定めが見当たりません | — | ◎ |
| FXCC | 会社側の解約権そのものが見当たりません | — | ○ |
いちばん長いのはTickmillの2か月
Tickmill の顧客サービス契約第24.2条は、顧客の側はいつでも書面で即時に終了できる、と書いています。会社の側は違います。取引プラットフォームを私的利用している顧客には2か月、商用利用している顧客には1か月の予告が必要と分けて書いてあります。
Tickmill Ltd is entitled to terminate the Client relationship with two months’ notice where clients are using the Trading Platform for Private use and with one month’s notice where clients are using the Trading Platform for Commercial use.(顧客サービス契約 第24.2条)
執筆時点で調べた26社で、2か月を明記していたのはこの1社だけでした。個人と商用で予告期間を分けている会社も、ここだけです。
30日が2社、しかも条項番号まで同じ
DecodeFX の第18.5条と ThreeTrader の第18.5条が、どちらも30日の書面予告でした。番号まで一致したので、私はまず自分の取り違えを疑って両方を読み直しました。別の会社の、別の文書です。
We may terminate this Client Agreement and close your Account and any Position at any time by giving you thirty (30) days’ written notice.(ThreeTrader お客様規約 第18.5条)
条項の並びまで似ているので、同じ雛形が流通していると見るのが自然だと思います。これは不正でも手抜きでもありません。業界共通の文書を使っているだけです。ただ、読む側としては「この会社が考えて書いた条件」と「雛形のままの条件」を区別できないことは、知っておいて損がないと思います。
予告ゼロが10社
Axi・FXDD・HFM・IC Markets・Land Prime・Tradeview・Vantage・VT Markets・WeTrade・XS.com の10社は、何日前という定めを置いていません。Vantage の日本語版規約はこう書いています。
本契約は、お客様またはVantage Tradingのいずれからでも、相手方に対する書面による通知により、直ちに終了させることができます。(お客様規約 第9.3条(a))
VT Markets の第9.3条(a)は、これと同じ内容の英文です。条文の構成も一致します。ここも同じ雛形です。
HFM は2段構えでした。第44.2条で両当事者が書面通知で即時に終了できるとし、そのうえで第44.3条がこう書いています。
The Company may at its sole discretion terminate this Agreement for any reason with immediate effect without notice to the Client.(顧客規約 第44.3条)
ここで誤解を避けておきたいことがあります。予告ゼロと書いてあることは、ある朝いきなり閉じられるという意味ではありません。実際に市場から撤退するときは、営業上の判断として事前に案内を出すのが普通です。
規約が定めているのは、会社が法的に負っている下限です。下限がゼロであることと、実際の運用がゼロであることは別の話です。ただ、下限がゼロの会社と2か月の会社では、何かあったときに読者が立てる主張の足場が違います。
定めが見当たらない3社
FXGT と iFOREX は、会社側からの終了について何日前という定めが見当たりませんでした。FXCC は、会社側の解約権そのものが見当たりません。
書かれていないことは、好意的にも不利にも読めます。「予告なしで切れる根拠がない」とも読めますし、「何も約していない」とも読めます。私はどちらとも判定しません。見当たらなかった、という事実だけを書きます。
終了したあと、残高はどう戻るのか
撤退のときに効いてくるのは、予告期間よりもこちらだと思います。返金先を限定している会社が7社ありました。
| 会社 | 返金先の定め | 条項 |
|---|---|---|
| AXIORY | 入金と同じ方法で返す | 第21.9条 |
| Exness | 顧客名義の口座にのみ | 第10.6条(E) |
| FXGT | 入金元に返す | 第7.6条 |
| IC Markets | 申込書で指定した銀行口座 | 第14.8条 |
| Land Prime | 顧客以外への返金はしない | 第17条 |
| TradeQuo | 本人または正式な代理人へ、純入金額を上限として | 第12.5条 |
| Traders Trust | カードで入金した分はそのカードへ | 第26.1条 |
この定めは、平常時は面倒の原因になりますが、撤退のときは守りになります。「入金と同じ方法で」と書いてある会社は、受け取り口座をめぐって揉めにくい。一方で、入金に使った決済業者が先に止まっていると、同じ方法には返せません。
そのときどうするかを書いていたのは、執筆時点で調べた30社で2社でした。XMTrading の利用規約第62.6条は、同じ送金人・同じ決済方法に送金できない場合、当社が選んだ代替の決済方法で、当社が適切と判断する通貨で送金する権利を留保する、と書いています。そのうえで「いかなる状況においても義務を負わない」と括弧で付け足しています。
もう1社はFXGTです。利用規約第15.10.2条(ii)に、入金元・同じ決済方法・同じ送金人に返すのが原則だが、何らかの理由で会社がその支払いを進められない場合は、会社が承認し検証した代替の決済方法で送金する権利を留保する、と書いてあります。
ただしこの条項には範囲の限定があります。第15.10.1条(i)により、ここでいう「返金」は、入金したがまだ一度も取引していない顧客に限られます。すでに取引した口座の出金については、この代替手段の定めは及びません。条項があることと、自分の状況に使えることは別です。
送金を後ろに倒せると書いている会社が5社
返金先より重いのは、いつ返すかでした。5社が、顧客の債務や未決済の取引が片づくまで送金を後ろに倒せると書いています。
| 会社 | 書いてあること | 条項 |
|---|---|---|
| Tickmill | 相殺権を行使した後に支払う。全契約が完了するまで送金を延期できる | 第24.5条・第24.6条 |
| XMTrading | 未払額を控除。全取引が閉じるまで送金を延期できる | 第90.1条・第90.2条 |
| HFM | 将来の負債に備えて会社の絶対的裁量で控除した上で支払う | 第44.8条(c) |
| Vantage | 顧客の一切の義務が完全に履行されるまで、返還期限が到来しない | 第10.4条 |
| VT Markets | 同じ内容(英文が原文) | 第10.4条 |
VT Markets の第10.4条が、この型のいちばんはっきりした書き方でした。
原文(英語)を見る ― 出典:VT Markets 顧客規約 第10.4条
Deposits or Margin Calls deposited by the Client will not fall due for repayment until the Client’s obligations under this Agreement and under or in respect of any other account between VT Markets and the Client are satisfied in full. Until this time, Deposits or Margin Calls will not constitute a debt due from VT Markets to the Client nor will the Client have any right to receive payment of these funds.(顧客規約 第10.4条)
手が止まったのは後半です。その時点までは、預けた資金は会社の債務にならず、顧客に受け取る権利もないと書いてあります。Vantage の日本語版第10.4条も、同じ内容を日本語で書いています。
平常時はこれが問題になりません。問題になるのは、終了のときに未決済の建玉や係争が残っている場合です。だから撤退の案内が来たら、建玉を自分で閉じるのが先になります。
なお、この条項は顧客資金の分別管理とは別の話です。分別管理が9通りに分かれていることは、顧客資金はどう保管されているかにまとめています。
請求できる期限がある会社が4社
これは探していなかった定めで、読んでいて見つけました。残高を請求できる期限を書いている会社が4社あります。
| 会社 | 期限 | 条項 |
|---|---|---|
| AXIORY | 終了から6か月以内に請求しないと、会社が資金を留保できる | 第21.9条 |
| XS.com | 6年間動きのない残高は、28日の猶予を与えた上で処理できる | 第17.8条 |
| Axi | 6年間残高の動きがなければ保持できる | 第21.3条(a)(viii) |
| Tradeview | 休眠口座に残った資金は会社が留保できる(年数の定めなし) | 第13条 |
いちばん短いのはAXIORYの6か月です。撤退の案内がメールで来て、それを見逃したまま1年置いておくと、規約の上では取り戻せる保証がなくなります。6か月は、口座を放置する期間としては短いほうだと思います。
残りの22社に期限が書いていないことは、いつまでも請求できるという意味ではありません。書いていないだけです。休眠手数料で残高が削られていく定めは別にあり、こちらは休眠口座の手数料にまとめています。
撤退の案内が来たら、順番はこうです
条項を読んで、順番が決まりました。あとからは作れないものを先に残すのが考え方です。
① 建玉を自分で閉じる。多くの会社は、終了時に会社の側で決済できると書いています(Tickmill 第24.3条、HFM 第44.8条(b)、ThreeTrader 第18.5条)。会社に閉じられると、価格を選べません。
② 同意した版の規約を、日付つきで手元に落とす。会社は改訂します。撤退のタイミングで規約が差し替わると、自分が何を約されていたかを示せなくなります。PDFなら保存、ウェブページなら印刷してPDFにするだけで足ります。
③ 出金を出し、送った日時を残す。返金先が限定されている会社(上の表の7社)は、入金に使った方法が生きているうちに出すほうが早いです。
④ 会社へ書面で連絡する。チャットで済ませると、やりとりが後から参照できないことがあります。メールであれば送信済みフォルダに残ります。
この4つは撤退のときに限らず、口座を閉じるときに共通です。ほかの型はいま起きていることから、規約のどこを見ればいいかにまとめています。
読めなかった4社と、その理由
30社のうち4社は、終了条項に到達できませんでした。理由を分けて書きます。
- EBC Financial Group:顧客契約そのものが公開文書に見当たりません。
- EMCTrading:顧客同意書へのリンクが空です。
- HYCM:robots.txt が私の取得を断っているため、読みません。
- MYFX Markets:同じ理由で読みません。
robots.txt で断られているものは、技術的に取れるかどうかとは別の話です。断られているので読みません。したがってこの2社については、予告期間を「ない」とも「ある」とも書けません。未確認です。
この調査の限界
読んだのは規約です。会社が規約どおりに動くかどうかは、規約を読んだだけでは分かりません。予告2か月と書いてある会社が2か月くれるとも、予告ゼロの会社が明日止めるとも、私は言えません。
予告期間が長い会社が安全、短い会社が危険、という読み方はしていません。この表は、何かあったときに読者が立てる主張の足場がどこにあるかを示したものです。採点にも足切り(このサイトでいう最低条件です)判定にも使っていません。
調査基準日は2026年10月22日です。規約は改訂されます。ここに書いた条項番号が動いていたら、記事を直して更新履歴に残します。
一社ずつの詳しい調査は30社の比較表から、日本から撤退した会社については日本向けサービスを終えた会社にまとめています。