EAを動かすつもりで口座を開くとき、たいていは「EA可」と書いてあるかどうかを見ます。ところが規約を開くと、EAという言葉が一度も出てこない会社のほうが珍しくありません。

執筆時点で調べた20社について、EA(自動売買)の可否がどこにどう書いてあるかを並べました。可と書いてあるのが14社、可否の記載自体がないのが5社、明確に禁止しているのが1社です。どれも条項番号か取得元を添えてあります。

20社のEA可否

ブローカー EAの扱い EAに触れている条項
AXIORY(アキシオリー) よくあるご質問で可。規約 Paragraph 14.6(a)・30.6 は high-frequency trading and/or latency arbitrage を禁止しており、EAそのものではなく使い方を制限しています
XMTrading(エックスエム) 記載なし 取引条件・プラットフォーム・口座タイプの各ページにEAの可否の記載が見当たりません。利用規約 9.1.34条は Fraud Traffic の定義に sniping・scalping・arbitrage 等を列挙していますが、ボーナス濫用の文脈です
FXGT(エフエックスジーティー) 記載なし 利用規約 第2.6条が「arbitrage」「sniping」「scalping」を with the use of automated(自動化された手段を用いて)行うことを禁止。EAの可否そのものは書かれていません。無料VPSプログラムはあります
ThreeTrader(スリートレーダー) 規約 第9.7条「Price, execution process and Trading Platform manipulation」に9項目。EAを名指しする条項はありません
HFM(エイチエフエム) 記載なし 顧客契約書 第24.1条はアービトラージとレイテンシーの利用を禁止。EAの可否の記載は見当たりません。無料VPSは3プランあります
EBC Financial Group(イービーシー) 口座タイプ表でEAの使用と両建てを可と明示。注文執行方針 第6条はボーナス関連の禁止行為のみで、スキャルピングやアービトラージ自体を禁じる条項は見当たりません
Axi(アクシ) 記載なし 規約の定義条項に Price Latency Arbitrage。EAの可否の記載は見当たりません。/jp/vps は404で、VPSの案内もありません
Tradeview(トレードビュー) 顧客契約 第15条 System Manipulation は「接続速度などを操作する装置やソフトウェア」を、第16条 Arbitrage はレイテンシ・アービトラージ(別名スキャルピング)を禁止。EA自体は禁じていません
TitanFX(タイタンFX) 可(ただし規約は別) 公開ページは「スキャルピング、ヘッジ、EAなど取引手法制限なし」。一方、利用規約 第5.10条は「注文(ブラックボックス取引、スキャルピング、または類似の取引方法に関連する注文など)を拒否することができ」と定めています
BigBoss(ビッグボス) ガイドラインに条件つきで記載。「スキャルピング手法での取引に厳しい制限は設けておりません。但し、注文頻度が膨大な量となり当社サーバーの執行能力に支障を与えると担当部門が判断した場合」は別、としています
Exness(エクスネス) 顧客契約書 11.1(O) は価格レイテンシーや裁定機会に依拠する行為を、Part C 2.3(A) はシステムや取引プラットフォームの濫用を禁止。EAを名指しする条項はありません
XS.com(エックスエス) ただし禁止行為の列挙に「価格遅延アービトラージ(EA・プラグインの使用を含む)」とあり、EAが名指しで入っています。使い方次第で該当します
Vantage Trading(ヴァンテージ) 「Default Event」の定義(第1.3項)に commission churning・sniping・スキャルピング・オフマーケット価格のアービトラージを列挙。EA自体の禁止はありません
IS6FX(アイエスシックスエフエックス) よくあるご質問で可。利用規約 第12条 Prohibited Use は20項目超を列挙し、「米国雇用統計の発表など経済指標時」の取引にも触れています
Milton Markets(ミルトンマーケッツ) 利用規約 第24.33条(b)が「クライアントの利益のために取引システムを利用するあらゆる種類のアービトラージ戦略」を禁止し、疑いがある場合は口座閉鎖と初期預金の返還ができるとしています
Land Prime(旧LAND-FX) ただし顧客同意書の PLATFORM ABUSE の節が「価格遅延・執行遅延・エラー・技術的な弱点を突くために設計されたEA・ロボット・自動売買システム・スクリプト・プラグイン」を名指しで挙げています
iFOREX(アイフォレックス) 不可 顧客契約 第7.1.15項。「自動取引・アルゴリズム取引を目的としたソフトウェアの使用、エキスパートアドバイスソフトウェア、自動クリックソフト」を禁止。第7.1.14項はスキャルピングと複数口座・他社間の両建ても禁じています
WeTrade(ウィートレード) EAを禁じる条項は見当たりません
EMCTrading(イーエムシートレーディング) 記載なし 公開ページはMT5対応・コピートレード・PAMMを掲げていますが、規約文書そのものが公開されていないため、条項では確認できません
MYFX Markets(マイエフエックスマーケッツ) EAを禁じる条項は見当たりません

「記載なし」は、探した範囲に可否の記述がなかったという意味です。禁止されているという意味でも、許可されているという意味でもありません。

明確に禁止しているのは1社でした

iFOREX です。顧客契約 第7.1.15項が、「自動取引・アルゴリズム取引を目的としたソフトウェアの使用、エキスパートアドバイスソフトウェア、自動クリックソフト」を禁止行為として挙げています。EAを動かす目的であれば、この口座は選べません。

同じ第7.1.14項では、スキャルピングと、複数口座や他社をまたいだ同一銘柄の両建ても禁じています。取引の制限のページと合わせて読むと、この会社の設計がはっきりします。

手が止まったのは TitanFX でした

公開ページには、こう書いてあります。「スキャルピング、ヘッジ、EAなど取引手法制限なし」。3つの口座すべての特徴欄に「取引手法制限なし」と入っています。

ところが利用規約 第5.10条は、こう定めています。

当社は、注文(ブラックボックス取引、スキャルピング、または類似の取引方法に関連する注文など)を拒否することができ

ブラックボックス取引は、中身の見えない自動売買のことです。公開ページが「制限なし」と言い切っている手法を、規約の側は名指しで拒否できると書いています。これはTitanFXの記事に食い違いとして記録しました。

同じ会社に、もう1件ありました。スプレッドの解説ページは「とりわけ高頻度取引を行うFXトレーダーの皆様は、取引コストに対するスプレッドの影響を実感できるでしょう」と、高頻度取引をする読者に向けて書いています。

一方、利用規約 第5.17条(a)は、適用法違反となる注文の類型として「高頻度取引」を市場操作・ウォッシュトレードと並べて列挙しています。訴求しているものと、規約が違法類型に並べているものが同じでした。

「EA可」は、EAなら何をしてもよいという意味ではありません

可と書いている14社のうち、条項でEAを名指ししている社が2社あります。

  • XS.com|禁止行為の列挙に「価格遅延アービトラージ(EA・プラグインの使用を含む)」
  • Land Prime|PLATFORM ABUSE の節に「価格遅延・執行遅延・エラー・技術的な弱点を突くために設計されたEA・ロボット・自動売買システム・スクリプト・プラグイン」

名指ししていない社も、レイテンシーアービトラージや高頻度取引の禁止条項はたいてい持っています。禁じられているのはEAという道具ではなく、EAで何をするかのほうです。該当すると判断されたときに効いてくるのは利益取消の条項で、20社中19社が持っています。

BigBoss の書き方は、そのあたりを具体的に示しています。「スキャルピング手法での取引に厳しい制限は設けておりません」と書いたうえで、「但し、注文頻度が膨大な量となり当社サーバーの執行能力に支障を与えると担当部門が判断した場合」は別だとしています。判断するのは会社側です。

私自身が使っている口座も「記載なし」でした

このサイトでは、ゴールドのEAを実際に走らせて記録しています。動かしているのは XMTrading の KIWAMI極(デモ口座)です。

その XMTrading が、可否の記載なしでした。日本でEAを動かす人がいちばん多い会社のはずですが、取引条件にもプラットフォームにも口座タイプのページにも、EAを使ってよいと書いた記述を見つけられませんでした。利用規約 9.1.34条に sniping や scalping の列挙はありますが、これはボーナス濫用の文脈です。

禁止されているとは書かれていません。許可されているとも書かれていません。そういう状態だ、ということだけを書いておきます。

このページの使い方

確かめているのは、契約文書と公開ページにどう書いてあるかだけです。実際にEAが止められた例があるかどうかは確認していません。

EAを動かす前に見ておくとよいのは3つだと思っています。

  • 可否がどこに書いてあるか|規約か、FAQか、口座タイプ表か。FAQだけの社は、あとから確認しにくくなります
  • EAを名指しした禁止条項があるか|「可」と書いてあっても、別の条項で制限されていることがあります
  • 判断が誰の手にあるか|「当社が判断した場合」と書いてある社では、基準は事前には分かりません

実際に動かした結果のほうはEAの実測記録に置いています。規約で読むことと、走らせて測ることは別の作業なので、ページも分けてあります。

各社の調査基準日は、それぞれのブローカー記事に書いてあります。規約は3か月に一度読み直し、変わっていればこのページを直して更新履歴に残します。

EAの可否は、規約に書いていない社が多くありました。記載の有無まで含めて絞るなら、20社の比較表4条件を満たした2社にまとめてあります。合格は「おすすめ」という意味ではありません。その理由も、そのページに書いています。