海外FXのロスカットは20%、という説明をよく見ます。執筆時点で調べた20社のうち、たしかに20%が最も多い数字でした。ただ、そこで止まると見落とすものがあります。
ひとつは、同じ会社の中で口座タイプによって水準が違うこと。もうひとつは、マージンコールの水準を公開していない社が半分あることです。ここでは公式ページと利用規約の両方から、20社ぶんを並べました。
20社の水準:一覧
記録した値をそのまま出しています。空欄は、執筆時点で確認できていないという意味です。
| ブローカー | ストップアウト(強制決済) | マージンコール(通知) |
|---|---|---|
| AXIORY(アキシオリー) | 証拠金維持率20%(マックス口座は0%) | 証拠金維持率50%(マックス口座は30%) |
| XMTrading(エックスエム) | 20% | 有効証拠金が必要証拠金の50%を下回るとマージンコール(取引条件ページ) |
| FXGT(エフエックスジーティー) | 口座タイプごとに異なる。OPTIMUS 0%/CRYPTOX・PRO・STANDARD・MINI 20%/ECN ZERO 40% | PRO口座50%、ECN口座70%(口座タイプページ)。他の口座タイプは同ページの表記を確認しきれていません |
| ThreeTrader(スリートレーダー) | 記載が見当たらない | 記載が見当たらない |
| HFM(エイチエフエム) | 20%(InfinityX口座は0%) | 50%(InfinityX口座は20%) |
| EBC Financial Group(イービーシー) | ロスカット比率30% | 記載が見当たらない |
| Axi(アクシ) | 20%(Product Schedule「The Liquidation Level is 20% unless varied by us in writing」) | Product Scheduleに水準の記載なし |
| Tradeview(トレードビュー) | 具体的な水準(%)の記載は見当たりません。顧客契約 第5条は「残余証拠金が未決済ポジションの維持に不足する場合、マージンコールとなりTradeviewが未決済ポジションの一部または全部を決済することがある」と記載 | 水準の記載は見当たりません。ゼロカット(負残高保護)の記載も、規約・公開ページのいずれにも見当たりませんでした。顧客契約 第10条の見出しは「Liquidation of accounts / deficit balances」で、不足残高が生じうる前提の条項です |
| TitanFX(タイタンFX) | 証拠金維持率が20%以下になると強制ロスカットが発動(レバレッジのページ) | 記載が見当たりません |
| BigBoss(ビッグボス) | 証拠金維持率20%以下でロスカット(スタンダード口座・プロスプレッド口座。よくあるご質問)。デラックス口座は記載が見当たりません | 証拠金維持率50%以下(スタンダード口座・プロスプレッド口座。よくあるご質問)。デラックス口座は記載が見当たりません |
| Exness(エクスネス) | 0%(Stop Out Protection を併用。株式CFDの日中休止時間は100%) | 60% |
| XS.com(エックスエス) | 20% | 40% |
| Vantage Trading(ヴァンテージ) | 50%(顧客契約 第11条) | 100%(顧客契約 第11条) |
| IS6FX(アイエスシックスエフエックス) | 20%(プロゼロ口座10%、ゼロ口座50%。EX口座は残高以上の含み損が発生した場合) | 記載が見当たらない |
| Milton Markets(ミルトンマーケッツ) | 未確認 | 未確認 |
| Land Prime(旧LAND-FX) | 30%(Prime・KAMINARI・ECN・Cent・コピートレードの全口座) | 50%(全口座) |
| iFOREX(アイフォレックス) | 証拠金保護清算。合計有効保有額が保全証拠金(利用証拠金の20%)に達するか下回ると、利用証拠金の最も大きい取引から自動決済(取引条件) | 記載が見当たりません。追証なしポリシーにより損失は入金額に限定され、段階的なマージンコールの記載はありません |
| WeTrade(ウィートレード) | 20% | 記載が見当たらない |
| EMCTrading(イーエムシートレーディング) | 証拠金維持率20%以下 | 記載が見当たらない |
| MYFX Markets(マイエフエックスマーケッツ) | 20%(証拠金維持率が20%を下回ると、含み損の大きいポジションから順に強制決済) | 90%(証拠金維持率が90%を下回るとメールで通知) |
ストップアウト水準は何社が公開しているか:17社
数字が確認できたのは20社中17社です。ThreeTrader・Tradeview・Milton Markets の3社は、水準の数字を見つけられませんでした。
Tradeview は数字がないだけでなく、顧客契約 第5条が「残余証拠金が未決済ポジションの維持に不足する場合、マージンコールとなり Tradeview が未決済ポジションの一部または全部を決済することがある」と書いています。「することがある」であって、何%で執行するとは書いていません。
水準が確認できた17社のうち、最も高いのは Vantage の50%(顧客契約 第11条)でした。数字が大きいほど早く切られるので、同じ建玉でも Vantage が最初に決済される計算になります。
反対に0%を含むのが4社。AXIORY のマックス口座、FXGT の OPTIMUS、HFM の InfinityX、そして Exness です。0%は「残高がゼロになるまで持てる」という意味で、有利とも不利とも言えません。戻るかもしれないし、そのまま全額失うかもしれない、というだけです。
口座タイプで水準が変わる社:4社
AXIORY・FXGT・HFM・IS6FX の4社は、同じ会社でも口座タイプによってストップアウト水準が違います。
- AXIORY|通常は20%、マックス口座だけ0%
- FXGT|OPTIMUS 0%/CRYPTOX・PRO・STANDARD・MINI 20%/ECN ZERO 40%
- HFM|通常は20%、InfinityX 口座は0%
- IS6FX|標準20%、プロゼロ口座10%、ゼロ口座50%
FXGT は同じ社内で0%から40%まで開きます。「FXGTのロスカットは20%」と書いた記事は、5つの口座タイプのうち4つについてしか正しくありません。
BigBoss はもう少し厄介で、スタンダード口座とプロスプレッド口座については20%と書いてあるのですが、デラックス口座については記載を見つけられませんでした。
マージンコールを公開しているのは何社か:10社
ここが、読んでいて一番意外だった部分です。マージンコール水準の数字が確認できたのは20社中10社。ちょうど半分です。
マージンコールは「これ以上下がると危ない」という通知であって、強制決済そのものではありません。だから公開の優先度が低いのだと思いますが、利用する側から見れば、猶予がどれだけあるかを決めている数字です。
確認できた10社のなかでは、Vantage の100%と MYFX Markets の90%が高いほうです。MYFX Markets は「証拠金維持率が90%を下回るとメールで通知」と書いています。維持率90%はまだ余裕がある水準なので、通知は相当早く来ることになります。
低いのは HFM の InfinityX 口座で20%、AXIORY のマックス口座で30%。どちらもストップアウトが0%や20%の口座なので、通知から強制決済までの幅が狭い設計です。
数字より効く条項:「当社が書面で変更しない限り」
Axi の Product Schedule には、こう書いてあります。
The Liquidation Level is 20% unless varied by us in writing
ストップアウトは20%。ただし当社が書面で変更しない限り、という条件が付いています。ここを読んだとき、比較表に「20%」と書き写すだけでは足りないのだと思いました。
同じ性質の条項は Vantage にもあります。顧客契約 第2.1項(g) は、レバレッジ構成と証拠金要件を単独かつ絶対的な裁量で変更できると定めています。
これは Axi や Vantage が特別だという話ではありません。むしろ、そう書いてある社のほうが、条件を明示しているぶん読みやすいと言えます。問題は、同じ裁量を持ちながら条項にしていない社との区別がつかないことです。
ゼロカットの記載が見つからなかった社
Tradeview については、もう一点だけ書いておきます。ゼロカット(負残高保護)の記載を、規約にも公開ページにも見つけられませんでした。
そして顧客契約 第10条の見出しは「Liquidation of accounts / deficit balances」です。deficit balances ―― 不足残高が生じうる前提で書かれた条項名です。
見当たらないことと、存在しないことは違います。私が読み落としている可能性はあります。ただ、他社が公開ページに明記している項目が見つからない、という事実は記録しておきます。
このページの使い方
口座タイプを決めたあとで、その口座の水準をもう一度確かめる。これがいちばん実務的な使い方だと思います。会社単位では正しくても、口座単位では違う数字が4社ぶんあります。
レバレッジのほうは別のページにまとめました。残高やロット数で自動的に下がる仕組みを持つ社が大半で、こちらはあとから効いてくるぶん、気づきにくい条件です。
ここで確認しているのは記載の整合性であって、実際に強制決済で損害が出たかどうかではありません。証拠金のハブと調べ方の基準もあわせてご覧ください。
各社の調査基準日は、それぞれのブローカー記事に書いてあります。規約は3か月に一度読み直し、変更があればこのページも直して更新履歴に残します。