最終更新:2026年10月25日

「日本語の規約を読んだから大丈夫」と思っている方へ。判定はしていません。30社の契約書を原文で開いて、どの言語が効くと書いてあるかだけを確かめました。
・契約書を日本語で読めるのは4社
・「英語が優先」と書いている20社
・書いてある場所が3通りに分かれます

海外FXの規約を読んでいて、途中から気になりはじめたことがあります。日本語で読めた条文は、本当にその通りに効くのか。条項番号を数えることばかりしていて、言語のことを考えていませんでした。

そこで保存してある契約書を全部開いて、言語についての定めだけを探しました。読んだのは顧客契約・利用規約・ボーナス規約などの一次資料で、公開ページの案内ではありません。条項番号を添えてあるので、原文にあたれます。

結論:確かめられたことと、確かめていないこと

確かめられたこと。執筆時点で調べた30社のうち、20社が「英語版が優先する」または「他の言語は情報提供のためだけ」と書いています。別に2社が「契約の言語は英語」と書いていますが、優先関係には触れていません。一方で契約書の本体を日本語で読めるのは4社だけでした。

確かめていないこと。この定めが裁判でどこまで通るかは、私には判断できません。準拠法と、争った場所の裁判所が決めることです。日本の消費者契約法がどう働くかも、ここでは扱いません。書いてあるかどうかだけを並べます。

被害があったかどうかも確認していません。どの会社が危ないという話ではありません。

契約書を日本語で読めるのは4社でした

まず、日本語で読めるかどうかを機械で測りました。保存した契約書の本文から、かな文字と英字の数をそれぞれ数えて比率を出す方法です。サイトのナビゲーションが日本語でも、契約書の本文が英語なら比率は下がります。

会社 契約書 かな文字の比率
Milton Markets 利用規約(日本語・バージョン6.2) 97.2%
Vantage お客様規約の日本語訳(2025年12月版) 94.5%
TitanFX 利用規約(日本語PDF) 93.2%
iFOREX 顧客契約(同じPDFに日本語と英語が並ぶ) 17.6%

iFOREXの17.6%は、日本語が少ないという意味ではありません。同じPDFのなかに日本語と英語が段で並んでいて、英語のほうが長いためこの数字になります。日本語で読み通せます。

残りの会社はどうかというと、日本語のページから入っても契約書の本文は英語でした。測った数字を挙げると、IS6FXの利用規約が2.0%、ThreeTraderのお客様規約が0.6%、HFMの顧客契約書・XMTradingの利用規約・AXIORYの利用規約は0%です。

この0%や2%は、見出しや会社情報に日本語が混じるかどうかの差で、条文はすべて英語です。日本語のサイトで口座を開いても、同意している文書は英語ということになります。

日本語で読める4社のうち、3社が「効くのは英語」と書いています

ここがこの調査でいちばん効くところでした。日本語で読める4社のうち3社が、その日本語は参考であって効くのは英語だと、同じ文書の中に書いています。

TitanFXは第1.4条です。

本契約のいずれかが英語以外の言語で提供される場合、それは情報提供のみを目的とします。本契約およびこれに基づき生じる紛争に関する準拠言語は英語とします。本契約の外国語版が英語版と矛盾する場合、英語版が優先します。(利用規約 第1.4条)

日本語のPDFの中に、日本語で、この日本語は効かないと書いてあります。読んでいて手が止まりました。51ページの日本語PDFを用意しておいて、その1ページ目でこう断る形です。

Vantageは第4条の顧客の表明保証のなかに置いています。

If this Agreement is provided to you in a language other than English, it is provided for information purpose only. The governing language of this Agreement is English.(お客様規約 第4条)

iFOREXは顧客契約の冒頭です。日本語の前文のすぐ後ろに、英語で1文だけ置かれています。

The Japanese translation to the Agreement is provided for convenience only. In case of contradiction, the English version shall prevail.(顧客契約 冒頭)

4社目のMilton Marketsには、この定めが見当たりませんでした。日本語の利用規約(バージョン6.2)を置いて、英語が優先するとは書いていない、という形です。保存した本文には「英語」「言語」「translation」のいずれも出てきません。

これはMilton Marketsが有利だという話ではありません。書いていないだけで、争ったときにどう扱われるかは別です。確かめたのは、この文書にその定めが無いということです。

「英語が優先」と書いている20社

30社を全部あたった結果です。条項番号は原文で引き直しました。

会社 場所 文書
Axi 第21.4条(b) 顧客契約
DecodeFX 番号なし(冒頭) 顧客契約
EBC 第10.5条 ウェブサイト利用規約(顧客契約そのものがありません)
Exness 第24項 ボーナス規約(顧客契約書には見当たりません)
FXDD 第29.6条 利用規約
FXGT 第18.2条 利用規約
HFM 第39.1条(目次には第40条と書かれています) 口座開設契約(顧客契約書には見当たりません)
IC Markets 第3.1条(m) 利用規約
iFOREX 番号なし(冒頭) 顧客契約
MYFX Markets 第29.6条 顧客契約
NordFX 第15.2条 顧客契約
ThreeTrader 番号なし(冒頭) お客様規約
Tickmill 第26.15条 顧客サービス契約
TitanFX 第1.4条 利用規約(日本語)
Traders Trust 第11項 200%ボーナス規約(顧客サービス契約には見当たりません)
Vantage 第4条 お客様規約
VT Markets 第4条 顧客契約書
WeTrade 番号なし(冒頭) 顧客契約
XMTrading 第95.2条(全103ページの100ページ目) 利用規約
XS.com 番号なし(前文) クライアントサービス契約

書いてある場所が3通りに分かれます

20社を場所で分けると、ここが読みどころでした。

1. 番号つきの条項に置いている11社。Axi・FXDD・FXGT・IC Markets・MYFX Markets・NordFX・Tickmill・TitanFX・Vantage・VT Markets・XMTrading。番号で引用できます。探すときも目次から辿れます。

ただし番号があっても見つけやすいとは限りません。XMTradingは第95.2条です。利用規約は全103ページで、この条項は100ページ目にあります。前の第95.1条には「本契約および本契約に基づき作成される全ての契約・文書は、英語で作成され英語で解釈される」と書いてあります。

2. 番号のない冒頭や前文に置いている5社。DecodeFX・iFOREX・ThreeTrader・WeTrade・XS.com。条項番号が付いていないので、番号で引用できません。目次にも載りません。読み飛ばす場所です。

3. 顧客契約ではなく別の文書に置いている4社。EBC・Exness・HFM・Traders Trust。顧客契約を読んでも出てきません。Exnessはボーナス規約の第24項、Traders Trustは200%ボーナス規約の第11項です。ボーナスを使わない人は読まない文書です。

HFMはもうひとつありました。口座開設契約の目次は「40. Governing Language」と書いているのに、本文の番号は第39条です。目次と本文で1つずれています。番号で探すと見つかりません。

「契約の言語は英語」だけを書いている2社

優先関係には触れず、契約に使う言語を定めているだけの会社が2社ありました。分けて書きます。

AXIORYは第4.4条です。「契約、関連文書およびその修正に用いられる言語は英語とする」。続けて、顧客が書類を提出するときも英語でなければならないとしています。

IS6FXは第19条です。「会社の公式言語は英語であることを顧客は承諾し理解する」。通知や情報も英語でやり取りするとしています。

この2社は、日本語版と英語版が食い違ったときどちらが勝つか、を書いていません。契約の言語が英語だと定めてあるので、結論は同じになるかもしれません。ただ書いてあることは違うので、同じ列には入れませんでした。

定めが見当たらない6社

BigBoss・FXCC・Land Prime・Milton Markets・TradeQuo・Tradeviewの6社には、言語についての定めが見当たりませんでした。

これは「日本語が効く」という意味ではありません。書いていないだけです。このうち契約書の本文が日本語なのはMilton Marketsだけで、残り5社の条文は英語です。英語の契約書に英語優先と書く必要がない、というだけかもしれません。

TradeQuoについては、言語に触れた文が3つありましたが、どれも「提出書類は英語が望ましい」「英語でない書類は翻訳を求められる」という提出側の話でした。契約書そのものの言語の定めではありません。

残り2社は読めていません。HYCMは規約の置かれている先が robots.txt で取得を断っているため、EMCTradingは口座開設フォームの顧客同意書のリンクが空のため、未確認です。断られているものは回避しません。

同じ文が並びます。ここも雛形でした

20社を並べていて気づきました。文面が5つの系統にまとまります。

系統1。DecodeFXとThreeTraderが、ほぼ同じ文を同じ場所(冒頭)に置いています。「英語以外の言語で提供される場合は情報提供のみを目的とし、準拠言語は英語」という書き方です。この2社は終了条項の第18.5条から口座のセキュリティの第4.3条まで番号ごと一致していて、言語の定めも同じでした。

系統2。FXGT 第18.2条とXS.comの前文が同じ文です。「会社の公式言語は英語である。翻訳版は便宜のために提供される。紛争時は英語版が優先する」。前者は番号つき、後者は前文という違いだけです。

系統3。Vantage 第4条とVT Markets 第4条。「The governing language of this Agreement is English」が同じ条番号に入っています。この2社は終了条項の第9.3条(a)も認証情報の第2.2条も一致します。

系統4。Exnessのボーナス規約 第24項とHFMの第39.1条。「英語で作成されている。他の言語の翻訳は便宜のためだけに提供される」という同じ言い回しです。

系統5。Axi 第21.4条(b)とMYFX Markets 第29.6条。「英語版と翻訳版に食い違いがある場合、その食い違いの範囲で英語版が優先する」が同じ文です。条番号は離れていますが、文は一致します。

言語の定め以外でも同じ組み合わせが出てきます。条文の一致を8系統に整理したものを雛形の系統を条項番号で並べましたに置きました。

雛形が流通していること自体は不正でも手抜きでもありません。ただ、言語の定めまで雛形だということは、そこが各社の判断で置かれたものではない可能性を示します。読む側としては、知っておいて損がないと思います。

読む側として、どうするか

条項を読んで、順番が決まりました。

① 自分の会社が20社に入っているか確かめる。上の表で場所まで書いてあります。入っていれば、日本語で読んだ条文は参考訳です。

② 入っていたら、英語版の該当条項を自分で引く。日数・手数料・禁止事項のような、数字や条件が書かれている箇所だけでいいと思います。訳のずれが実害になるのはそこだからです。

③ 同意した版を、日付つきで手元に落とす。英語版も日本語版も両方です。会社は書き換えられます。

④ 揉めたときは、英語版の条項番号で話す。日本語訳の文言だけを示しても、20社については「それは参考訳です」と返せる建てつけになっています。

実際にずれていた例は、会社ごとの記事の食い違いの欄に載せています。30社の比較表から辿れます。ほかの型はいま起きていることから、規約のどこを見ればいいかにまとめています。

この調査の限界

この定めが裁判でどこまで通るかは判断していません。準拠法と裁判所が決めることです。日本の法律がどう働くかも扱っていません。

日本語訳と英語版を全文つき合わせたわけではありません。確かめたのは「どちらが優先すると書いてあるか」です。訳そのものの正確さを1条ずつ検証したのは、記事で食い違いとして挙げた箇所だけです。

かな文字の比率は、日本語で読めるかの目安であって、訳の質とは関係ありません。機械で数えた数字です。

定めが見当たらない6社に、別の文書で同じ定めがない保証はありません。読んだのは保存してある一次資料の範囲です。ログイン後にしか出さない文書がある会社もあります。

この調査をしていて、自分の探し方で1社落としかけました。はじめは「prevail」「governing」「translation」の3語で探していて、XMTradingの第95.2条を拾えていませんでした。XMTradingは「Controlling language」という見出しで、本文も「written and interpreted in English」という別の言い方をしています。公開前に語を増やして引き直したので表には入っていますが、1通りの探し方で社数を決めると落とす、という例です。

調査基準日は2026年10月24日です。条項番号が動いていたら、記事を直して更新履歴に残します。

出典

各社の顧客契約・利用規約・ボーナス規約・口座開設契約の原文です。取得元と取得日は会社ごとの記事の出典欄に書いてあります。規約アーカイブに全文を保存してある分は、そこから引き直しました。DecodeFX・TradeQuo・NordFX・FXDD・FXCCの5社は、2026年10月24日に配信元の原文を取得して確かめています。

更新履歴

  • 2026-10-24 公開。30社の言語についての定めを原文で確かめた