最終更新:2026年10月27日

円で入金して、ドル建てのゴールドを触る。そのたびに通貨の換算が起きます。誰のレートで換算されるかを、顧客契約で引きました。
・「レートにマークアップを上乗せする権利がある」と書いた1社
・「事前の通知なく」換算できる、と書いた1社
・見出しを置いているのは5社でした

XAUUSDはドル建てです。口座の基準通貨が円なら、損益はどこかで円に換算されます。そのレートが誰のものかを、私はこれまで確かめていませんでした。

読んだのは規約アーカイブにある顧客契約39本です。条項番号を添えてあるので、原文に戻れます。公開ページの手数料表は根拠にしていません。

結論:確かめられたことと、確かめていないこと

確かめられたこと。換算のレートは、会社が選ぶと書いてあります。そして1社は、そのレートにマークアップを上乗せする権利を明記しています。

確かめていないこと。マークアップが実際に何パーセントかは分かりません。私は口座を開いて数字を測っていません。確かめたのは、文書にそう書いてあるかどうかの1点です。

「レートにマークアップを上乗せする権利がある」と書いた1社

XMTradingの利用規約 第53条が「Currency Conversions」です。いちばんはっきり書いていました。

Whenever we conduct such currency conversions, we will do so at such reasonable rate of exchange as we select. We shall be entitled to add a mark-up to the exchange rates.(XMTrading 利用規約 第53.3条)

2文に分かれています。1つめは「会社が選ぶ合理的なレートで換算する」。2つめは「レートにマークアップを足す権利がある」。続きに、その水準は Spreads and Conditions Schedule に定義されるとあります。

同じ第53条の冒頭には、別のことが書いてあります。第53.1条は、支払われるべき通貨と違う通貨で会社が受け取った場合、換算の費用を含むコストと損失を顧客が補償する(indemnify)と定めています。

第53.2条は、実現損益・オプションプレミアム・手数料・利息などを基準通貨へ換算する「権利はあるが、いかなる場合も義務ではない」と書いています。出金の条項で何度も出てくる言い方と同じ形です。

「事前の通知なく」換算できる、と書いた1社

Exnessの顧客契約書 第23条も「Currency Conversions」です。違う語が入っていました。

The Company is entitled, without prior notice to the Client, to effect any currency conversions which it deems necessary or desirable…(Exness 顧客契約書 第23.1条)

「without prior notice」です。口座の通貨と違う通貨で入金したときに、会社が必要または望ましいと判断すれば換算できる、という建てつけです。

レートについては「会社が選ぶ合理的な為替レートで」と続きます。XMTradingと同じ語の選び方ですが、マークアップには触れていません。

Axiは、定義の段階で「インターバンクレート+スプレッド」と書いています

Axiの顧客契約には「Currency Conversions」の見出しがありません。代わりに、定義の節に書いてありました。

EXCHANGE RATE means the exchange rate we may reasonably offer to you from time to time having regard to the applicable prevailing Interbank Rates and the spread that is available to you from us via the Trading Platform or on request.(Axi 顧客契約 定義)

読んでいて止まったのはここです。「インターバンクレート」と「スプレッド」の2つを考慮したレート、と書いてあります。市場のレートそのものではなく、スプレッドを織り込んだレートです。

XMTradingが「マークアップを足す」と書いたことと、言い方は違いますが向きは同じです。Axiは足すとは書かず、定義の中に入れています。

VantageとVT Markets:同じ条文で、同じ誤記まで同じでした

Vantage TradingとVT Marketsは、どちらも顧客契約 第3.3条「CURRENCY CONVERSIONS」です。

支払いに使える通貨を9つ並べています。豪ドル・米ドル・英ポンド・ユーロ・カナダドル・日本円・ニュージーランドドル・シンガポールドル・香港ドル。円が入っています。

換算の決まりは3つです。

  • 実現損益|取引に指定された通貨に換算し、ポジションを閉じた直後に口座の基準通貨へ換算する
  • 基準通貨と違う通貨で支払ったとき|会社の金融機関が提示するスポットレートで基準通貨に換算する
  • 顧客と会社のあいだのすべての支払い|別段の合意がない限り、口座の基準通貨に換算する

2社を並べて気づいたことがあります。b項の原文が「at the current sport rate」になっています。spot(スポット)が sport と綴られていて、2社とも同じ誤記です。

同じ文書の別の場所には正しく「spot rate」とあります。誤記まで一致するのは、同じ雛形を使っている証拠のひとつだと思います。この組み合わせは雛形の系統にも出てきます。同じ雛形を使っていることは、同じ運営だという意味ではありません。

「通貨換算」の見出しを置いているのは5社でした

顧客契約39本を全文検索して、通貨換算を独立した見出しにしている社は5社でした。

会社 条項 レートの決め方
XMTrading 利用規約 第53条 会社が選ぶレート。マークアップを上乗せする権利あり(第53.3条)。水準は Spreads and Conditions Schedule
Exness 顧客契約書 第23条 会社が選ぶ合理的なレート。事前の通知なく換算できる(第23.1条)
Vantage Trading 顧客契約 第3.3条 会社の金融機関が提示するスポットレート。支払いに使える通貨を9つ列挙
VT Markets 顧客契約書 第3.3条 Vantageと同一の条文。誤記まで同じ
Tickmill 顧客サービス契約 第11条 見出しは「INTEREST AND CURRENCY CONVERSIONS」。利息と同じ条にまとめています

残りの社は、見出しとしては置いていません。Axiのように定義の節に入れている社があるので、「書いていない」とは言えません。見出しで探すと見落とします。

スプレッドに乗るマークアップは、別の話です

換算のレートとは別に、取引そのものの価格にマークアップが乗ると書いている社があります。混ざりやすいので分けて書きます。

FXGTの利用規約 第14.6.1条は、顧客が支払うスプレッドを「liquidity quoted prices plus a mark-up」と定義しています。流動性提供者の提示価格に、マークアップを足したものです。

HFMはもう一段あります。紹介者(IB)経由で口座を開いた顧客には、より高いスプレッドをマークアップとして適用しうる、と顧客規約に書いています。詳細はウェブサイトで開示するとあります。

紹介経由で口座を開くと自分のコストが変わりうる、という論点です。社ごとの内訳は紹介報酬は、どこから出ているのかにまとめました。

この調査の限界

読んだのは規約アーカイブに全文がある顧客契約39本です。執筆時点で調べた30社の全部ではありません。

マークアップの実際の水準、スポットレートと提示レートの差、換算が1日のどの時点で行われるかは確認していません。口座を開いて測ってはいないからです。確かめたのは、文書にそう書いてあるかどうかだけです。

XMTradingの Spreads and Conditions Schedule は、マークアップの水準がそこに定義されると規約が指しているので、次に読む文書はこれになります。

更新履歴

  • 2026-10-27 公開。顧客契約39本から通貨換算の条項を引き、5社の見出しと3社のレートの決め方を条項番号付きで並べました