最終更新:2026年10月25日

「この規約、どこかで見た文だ」と思ったことがある方へ。判定はしていません。30社の規約を読むなかで、条文が番号ごと一致する組み合わせが出てきたので、条項番号を付けて並べました。
・見つかった8つの系統
・雛形は会社単位ではなく、条文の部分単位で流通しています

30社の規約を1社ずつ読んでいると、同じ文に何度も当たります。最初は自分が取り違えたのだと思って、両方を読み直しました。別の会社の、別の文書でした。

条項番号の総点検をしたときに、この組み合わせがまとまって出てきました。読んだのは顧客契約・利用規約・ボーナス規約などの一次資料です。番号を添えてあるので、原文で突き合わせられます。

結論:確かめられたことと、確かめていないこと

確かめられたこと。執筆時点で調べた30社のなかに、条文が一致する組み合わせが8つありました。うち1つは、終了条項から口座のセキュリティまで番号ごと一致しています。

確かめていないこと。同じ雛形を使っていることは、同じ運営だという意味ではありません。資本関係も、人の重なりも、私は調べていません。法律事務所やコンサルタントが作った文書が業界で流通している、という読み方のほうが自然だと思います。

雛形を使うこと自体は、不正でも手抜きでもありません。ただ、読む側としては「この会社が考えて書いた条件」と「雛形のままの条件」を区別できない、ということは知っておいて損がないと思います。

見つかった8つの系統

系統1 終了から口座のセキュリティまで、丸ごと一致(DecodeFX・ThreeTrader)

いちばん範囲が広かったのがここです。番号も文面も一致します。

条項 内容
第18.5条 会社側からの終了は30日の書面予告
第18.6条 顧客側からは随時、書面通知で
第18.7条 終了の通知後は新規建てを拒否できる
第19.1条 事前通知なく口座の資金を債務に充当できる
第3.7条 口座開設時にパスワードを交付する
第4.3条 「これらの情報を使う者の権限を確認する必要はない」
番号のない冒頭 英語以外の言語で提供される場合は情報提供のみを目的とし、準拠言語は英語

そのうえで、1文だけ違いました。注文の受付を定めた第4.1条です。両社とも「ID・パスワードで送られた注文に従う権利がある」と書いていますが、DecodeFXはそのあとに1文を足しています。

This presumption shall hold even where we possess knowledge (whether actual or constructive) that would refute the presumption.(DecodeFX 顧客契約 第4.1条)

この推定は、それを覆す知識を会社が持っていた場合でも維持される、と読めます。ThreeTraderの第4.1条にはこの1文がありません。雛形が同じでも、1文の足し引きで建てつけが変わります。

系統2 第2.2条が3社で同じ(Axi・Vantage・VT Markets)

口座情報を定めた第2.2条が、3社で同じ番号・同じ構成でした。(a)が「提供した情報は真実かつ正確であり、変更があれば直ちに通知する」、(b)が「セキュリティ情報を秘密に保つ義務」と「会社は権限を確認する義務を負わない」です。

  • Axi 第2.2条(b)——「we have no obligation to verify the authority of anyone using this information to operate your Account」
  • VT Markets 第2.2条——同じ文(Security Details という語を使います)
  • Vantage 第2.2条(b)——日本語訳では「これらのセキュリティ情報が設定された後は、当該情報を使用して口座を操作する者の権限について、当社は確認義務を負いません」

ただしAxiは、ここから先が別の系統です。終了条項はAxiが第13.2条、VantageとVT Marketsが第9.3条(a)。第2.2条は同じで、第9条は違う。

系統3 終了の効力が「発信時点」(Tradeview・Land Prime)

Tradeviewが第28条、Land Primeが第29条。どちらも見出しは TERMINATION で、文の作りもほぼ同じです。

この2社には、ほかに無い言葉が入っています。会社側からの終了が効くのは、書面通知を「発信した時点」です。原文は「upon the transmittal of written notice」。顧客側から終了する場合は、会社の本社に通知が「現実に到達した時点」(upon the actual receipt)と書き分けられています。

同じ条のなかで、会社側は発信、顧客側は到達。郵便や配信の事故を負うのがどちらかが、ここで決まります。

系統4 出金は同じ送金人へ、断ったら別の方法を提案(5社)

出金の条項が、5社でほとんど同じ文でした。

会社 条項
TradeQuo 顧客規約 第7.6条
XS.com 顧客規約 第18.12条
Traders Trust 顧客サービス契約 第10.6条
iFOREX 顧客契約 第9.3.6項
IS6FX 利用規約 第10条
原文(英語)を見る ― 出典:XS.com 顧客規約 第18.12条

Client’s withdrawals should be made using the same method used by the Client to fund his Client Account and to the same remitter. The Company reserves the right to decline a withdrawal with a specific payment method and will suggest another payment method where the Client needs to proceed with a new withdrawal request, or request further documentation while processing the withdrawal request.(顧客規約 第18.12条)

条項番号は5社でばらばらです。第7.6条、第18.12条、第10.6条、第9.3.6項、第10条。文は同じで、置かれた場所が違います。30社の外ですが、IronFXの取引規約にも同じ文がありました。

この5社が決済業者が止まったときの返金先の第1層と第3層の両方に出てくるのは、この1文のためです。

系統5 口座を凍結したときにできること(iFOREX・IS6FX)

iFOREXは凍結の条項が3つあります。第6.2.5項(登録手続きの書類が出てこない、またはマネロン規制上のリスクが疑われる)、第7.1.12項(入金された資金が違法行為によるものと疑われる)、第9.2.6項(チャージバックを受けた)。

3つとも措置の中身が同じです。「追加入金の禁止、注文の却下、出金依頼の遅延や拒否、入金元への残高の払い戻し、既存のポジションの終了」。

そしてIS6FXの第6条に、ほぼ同じ文が入っています。引き金が違うのに、できることのリストは共通でした。

系統6〜8 言語の定めも3組ありました

どの言語が効くかを定めた条文も、3組に分かれます。

30社の言語の定めをまとめたものは日本語で読んだ規約は参考訳かもしれませんにあります。

雛形は会社単位ではなく、条文の部分単位で流通しています

8つを並べて気づいたのが、ここです。1社が1つの雛形から出来ているわけではありません。

いちばんはっきりしているのがAxiです。口座情報の第2.2条はVantageとVT Marketsと同じ。言語の第21.4条(b)はMYFX Marketsと同じ。終了の第13.2条はどちらとも違います。

XS.comも同じです。出金の第18.12条はTradeQuo・Traders Trust・iFOREX・IS6FXと同じ。言語の前文はFXGTと同じ。この2つは別の組み合わせです。

つまり条文の部分ごとに、別のところから来ていると読めます。章ごとに差し替えられる形で流通しているのだと思います。

これは推測です。私が確かめたのは、どの条文が一致するかだけです。誰が作った文書なのか、どういう経路で広まったのかは調べていません。

読む側として、どう使うか

① 自分の会社の規約で、特徴的な1文を検索する。「no obligation to verify the authority」「the same remitter」「upon the transmittal」のような、言い回しが決まっている文が手がかりになります。

② 同じ文を持つ会社の記事を読む。同じ条文なら、同じ読み方が効きます。条項番号は違っても、中身は同じです。

③ 1文の足し引きを見る。系統1のDecodeFXのように、雛形に1文足されていることがあります。足したところは、その会社が選んだところです。

④ 雛形だからといって軽く見ない。雛形でも契約の一部です。「業界共通だから仕方ない」は、揉めたときの主張にはなりません。

この調査の限界

同じ雛形を使っていることは、同じ運営だという意味ではありません。資本関係も、人の重なりも調べていません。

一致を網羅したわけではありません。条項番号の総点検と言語の定めの調査で出てきた分を並べたものです。ほかの条文にも一致があるはずです。1文ずつ全社つき合わせる作業はしていません。

読んだ版の話です。規約は書き換えられます。WeTradeの顧客契約は、保存した版が2026年8月、いま配られている版が2026年10月でした。版が違えば一致も変わります。

住所で突き合わせた結果は公表された所在地で突き合わせた結果に、金融庁が備考で名指しした参照は金融庁が名指しした関係にあります。条文の一致と、住所の一致と、当局の名指しは、それぞれ別の手がかりです。

調査基準日は2026年10月25日です。条項番号が動いていたら、記事を直して更新履歴に残します。

出典

各社の顧客契約・利用規約・ボーナス規約の原文です。取得元と取得日は会社ごとの記事の出典欄に書いてあります。規約アーカイブに全文を保存してある分は、そこから引き直しました。DecodeFX・ThreeTrader・TradeQuo・Traders Trust・XS.com・iFOREX・IS6FXは、2026年10月24日から25日にかけて配信元の原文でも確かめています。

更新履歴

  • 2026-10-25 公開。条項番号の総点検と言語の定めの調査で出てきた8系統を並べた