最終更新:2026年10月6日
海外FXにはゼロカットがあるので、ロスカットされても追証は来ない。これは多くの社で、その通りです。ただ、ゼロカットが効くのは一連の流れのいちばん後ろのほうで、そこに行き着くまでにいくつもの段階があります。
マージンコールは出るのか。何%で決済されるのか。順番に閉じていく間、残高はどこまで振れるのか。利益が出ていた場合はどうなるのか。項目ごとには全部書いてあるのに、起きる順につないだページが一枚もありませんでした。だから作りました。
数字と条項番号は、各社の利用規約・注文執行方針・リスク開示書から取っています。確認できなかったところは「記載が見当たりません」と書いています。私が実際にロスカットされて確かめたわけではありません。読んだのは文書です。
結論:ロスカットの前後で、7つのことが順番に起きます
ロスカットの前後で、7つのことが順番に起きます
30社の規約から並べました。数字は、その段階について公開資料で確かめられた社数です。
- 1価格が飛ぶ指値やストップが、指定した価格ではなく次に付いた価格で約定します。
- 2マージンコール16社が公開水準を公開しているのは30社中16社。通知そのものを行わないと書く社もあります。
- 3強制決済(ストップアウト)25社が公開数字を出しているのは25社。0%から50%まで幅があり、同じ会社でも口座タイプで違います。
- 4残高がマイナスになる強制決済が間に合わなかったときです。ここから先が、ゼロカットの話になります。
- 5ゼロカットが効くかどうか27通り条文の書き方は30社で27通りに分かれます。「提供する」と「裁量であり保証しない」が同じ条項に並ぶ社もあります。
- 6不足額を請求される5社顧客の負担と書いている社が5社。入金の期日を日数で書いているのは1社だけでした。
- 7利益が取り消されることがある出ていた利益の側にも、取り消せると定めた条項があります。
そして、もし争うことになった場合。準拠法を日本法としている社は、30社中0社です。この段は口座の中で起きることではないので、7つの外に置いています。
1. まず価格が飛びます:注文した値段では約定しません
段階の一番目は、自分では何も操作していないところで起きます。指値やストップが、指定した価格ではなく、次に付いた価格で約定します。
これを規約上どう呼ぶかは社によって違いますが、Land Primeの顧客同意書 第30条は、はっきり「金融ニュースが出たときの市場オープン時に引き起こされる変動の激しい環境」という言い方で、窓開けを名指ししています。
滑ったとき、方向によって扱いが変わるのかは別に調べました。有利な方向の価格を渡すと注文執行方針に書いているのは3社です(スリッページは非対称か)。
ゴールドは、この飛び方が特に出やすい銘柄です。契約サイズと1回に建てられるロット数の上限はゴールドの取引条件にまとめました。建てられる量の上限を書いている社は19社で、残り11社は上限の記載が見当たりません。
2. マージンコール:水準を公開しているのは30社中16社
次に来るのがマージンコールです。証拠金維持率がある水準を割ったときに、追加入金か決済を促す通知です。ここで気づいたのは、通知の水準を数字で書いている社が思ったより少ないことでした。
2026年10月時点で調べた30社のうち、マージンコールの水準を公開しているのは16社。残る14社は、水準の記載が見当たりません。内訳はロスカット水準の一覧に出しています。
数字の幅も広く、DecodeFXは100%、XMTradingは有効証拠金が必要証拠金の50%を下回った時点です。100%というのは、含み損が出ていなくても必要証拠金ぎりぎりで通知が来るという意味になります。
電話もメールもしない、と書いている社が1社あります
読んでいて手が止まったのはここでした。Tradeviewのリスク開示には、マージンコールを電話・メール・その他の手段で行わないと書かれています。
Tradeview does not make margin calls via phone, email or other communication means.
通知が来ないことを前提に、自分で維持率を見ている必要があります。これは条件が悪いという話ではなく、通知を待つ運用が成立しないという事実です。マージンコールの扱いは強制決済とレバレッジに全社分を置いています。
3. 強制決済:25社が数字を出しています
マージンコールの次が強制決済です。ここは通知ではなく、実際にポジションが閉じられます。水準を公開しているのは25社で、未公開は5社(HYCM・Tickmill・Milton Markets・Tradeview・ThreeTrader)でした。
この25という数は、2026-10-03に数え直したものです。以前は21社と書いていましたが、21と未公開3社を足しても30社になりませんでした。経緯はロスカット水準のページに残しています。
同じ会社でも、口座タイプで0%から50%まで違います
水準は会社ごとに一つ、とは限りませんでした。同じ会社の中で、口座タイプによって数字が違う社がいくつもあります。
- AXIORY|証拠金維持率20%。ただしマックス口座は0%
- HFM|20%。ただしInfinityX口座は0%
- FXGT|OPTIMUS 0%、STANDARD・MINI・PRO・CRYPTOX 20%、ECN ZERO 40%
- IS6FX|20%。プロゼロ口座10%、ゼロ口座50%
- Exness|0%(株式CFDの日中休止時間は100%)
- Vantage|50%(顧客契約 第11条)
- IC Markets|50%(注文執行方針 8.3)
0%の口座は、残高をほぼ使い切るまで決済されないという意味です。水準が低いほうが有利とは言えません。飛んだ相場では、決済が遅れるほど残高がマイナスへ振れる余地が大きくなります。
IC Markets の50%は、利用規約ではなく注文執行方針の中にありました。数字が利用規約の外に置かれている社があるので、規約だけ読んで「記載なし」と判断すると取りこぼします。私も一度取りこぼして、後から直しています。
4. 間に合わなかったとき、残高はマイナスになります
強制決済は、指定の水準に触れた瞬間に全部が同時に閉じるわけではありません。多くの社は、含み損の大きいポジションから順に閉じる、と書いています。
MYFX Marketsは証拠金維持率20%を下回ると含み損の大きいポジションから順に強制決済、iFOREXは利用証拠金の最も大きい取引から自動決済、という書き方でした。順番に閉じていく間も価格は動きます。
IC Markets の利用規約 第15.6条・第15.11条は、証拠金の調整によって口座が証拠金要件を満たさなくなり、追加入金かポジションの閉鎖が必要になることがあると書いています。同条はそれが「急速に、事前の通知なく起こりうる」とも書いています。「間に合わない」は想定外ではなく、契約書に書かれている状態です。
5. ゼロカットの条文は、30社で27通りに分かれます
ここが、このページを作った一番の理由です。ゼロカットは「ある/ない」の2択ではありませんでした。30社の条文を並べると、ほぼ全社が別の書き方をしていて、27通りに分かれました。全文はゼロカットの条文にあります。
不足額を顧客の負担としている5社
公開ページの印象とは逆方向の条項を置いている社があります。どれも推測ではなく、法的文書の原文にある文です。
- EBC Financial Group|リスク開示書 6.11。口座がマイナス残高を示したとき、追加の証拠金の支払いが必要になり得ると書いています
- Axi|顧客契約 6.3。支払義務に足りない場合、不足額に等しい金額を債務として直ちに支払うとあります。負残高を免除する定めは、法的文書にも公開ページにも見当たりません
- BigBoss|顧客契約(コモロ名義・2026年9月7日版)第9条。9.2はマイナス残高が生じた時点から1週間以内に他の保有口座から充当すると書き、9.3で不足額を請求する権利を残しています。補填の期間を書いているのは30社でこの社だけでした
- Land Prime|顧客同意書 第30条。窓開けで生じた負残高を顧客が補填するとあります。一方で口座タイプのページは4口座すべてに「ゼロカットシステム あり」と書いています
- iFOREX|顧客契約 9.1(d)。負残高をカバーするため、顧客の他の口座から資金を移すとあります
BigBoss と iFOREX の書き方は、よく読むと同じ構造です。まず他の口座から取り、それでも足りない分がどうなるかが次の問題になります。BigBoss はその先を9.3で書き、iFOREX は書いていません。
公開ページにあって、規約に見当たらない3社
Traders Trust・DecodeFX・EMCTradingは、公開ページにゼロカットの案内がある一方で、利用規約の側に対応する条項が見当たりませんでした。
公開ページの案内は、会社が一方的に書き換えられる場所です。規約に条項があるかどうかは、同じ「ゼロカットあり」の中でも別の話になります。
逆に、記載そのものが見当たらなかったのは Tradeview・Tickmill・IC Markets の3社でした。TradeQuoは、FAQと契約書が逆を向いていました。
6. 不足額の入金を求める条項:日数を書いているのは1社だけ
負残高が残った場合、入金を求める条項を置いている社は9社ありました。全文は入金の条件にまとめています。
そのうち、いつまでに入れるのかを日数で書いているのは TradeQuo の1社だけでした。顧客契約 第4.3条(e)に、当社の求めにより10暦日以内に自己資金を入金して口座をゼロに戻す、とあります。
HYCM 第4.6条、IC Markets 第15.6条・第15.11条、MYFX Markets 第8.3条、HFM 第31章、ThreeTrader、Traders Trust、Tradeview、Land Prime にも同種の条項がありますが、期限の定めは見当たりません。期限がないことは、請求が来ないという意味ではありません。
7. 利益が出ていた場合:取り消されることがあります
飛んだ相場で損が出るとは限りません。利益が出た場合に、それを取り消す条項が置かれています。対象になる条件は利益取消の条文に出しています。
この段階で差が出るのは、反証の猶予です。DecodeFX と ThreeTrader は同じ第9.7条という条番号で、同じ趣旨の見出しを置きながら、猶予が7日と30日に分かれていました。4倍以上の差です。
DecodeFX の第9.7条には19の項目が並び、取引手法だけでなくVPS・VPN・TOR・同一IPからの接続・同一端末の使用が列挙に入っています。自動売買の環境そのものが条文に書かれている例として、EAと規約でも扱いました。
補足:争うとき:日本の法律で判断される社はゼロです
最後の段階です。請求や取消に納得できなかったとき、どこの法律とどこの裁判所で判断されるか。30社を調べて、日本法を準拠法としている社は一社もありませんでした。一覧は準拠法と裁判地にあります。
多いのはセーシェル(6社)とセントビンセント・グレナディーン諸島(5社)です。TitanFXだけが「顧客の居住国の法律」と書き、IS6FX は「居住国の法律との関係で解釈」とだけ書いています。
Tickmill とFXCCは、準拠法の条項そのものが見当たりませんでした。条項がないことは、どこの法律でもないという意味にはなりません。どこになるかが読めない、というだけです。
そして条項の多くは「非専属的管轄」です。顧客はその裁判所に縛られる一方で、会社の側は別の国でも訴訟を起こせる、という意味になります。私はこの語が並んでいるのを見て、段階の最後まで並べてみようと思いました。
この順番を、自分の口座で確かめる手順
このページは私が読んだ結果です。同じことを自分の口座で確かめるなら、順番はこうなります。
- 利用規約のほかに、注文執行方針とリスク開示書を開く。強制決済の数字はここに入っていることがあります
- 口座タイプのページで、自分の口座タイプの水準を確認する。会社ごとに一つとは限りません
- 負残高について、「ゼロカットあり」の案内と、規約の条項を別々に探す。片方しかない社があります
- 不足額の入金と、利益取消の条項を読む。期限と猶予日数が書いてあるかを見る
- 準拠法と裁判地の条項を最後に読む
ここから何が言えるか
段階ごとに見ると、会社の差がどこに出るかが変わります。マージンコールと強制決済の水準は、数字で比べられます。一方で、負残高から先は数字ではなく、条項があるかないかの差になります。
そして、公開ページが「ゼロカットあり」と書いていても、法的文書の側で顧客に不足額を負わせている社が5社ありました。この5社が危険だと言いたいわけではありません。公開ページだけでは読めない、という事実です。
条件を横に並べたい場合は比較表で絞り込めます。段階ごとの詳細は、それぞれのページに置いています。
関連するページ
- 強制決済とレバレッジ|4つの項目で30社を並べています
- ロスカット水準|強制決済25社・マージンコール16社の一覧
- ゼロカットの条文|30社27通りの書かれ方
- 入金の条件|不足額の入金を求める9社の条項
- 利益取消の条文|反証の猶予は7日と30日
- 準拠法と裁判地|日本法の社はゼロ
このページについて
2026年10月時点で調べた30社の利用規約・注文執行方針・リスク開示書・公開ページから作りました。条項番号を添えてあるので、すべて原文にあたって確かめられます。
規約は3か月に一度読み直し、変更があればこのページを直して更新履歴に残します。ここに書いたのは記載の整合性であって、出金や請求が実際にどう行われたかは確認していません。