サーバーが落ちて決済できなかった。価格が飛んで想定外の値で約定した。そのとき会社に責任を問えるのか。答えは、どの規約にも同じような形で書いてあります。

執筆時点で調べた20社の顧客契約から、免責と責任制限の条項を読みました。通信の遅延を免責に挙げている社が20社、システム障害が19社、間接損害が19社。逸失利益まで明示して外している社が15社です。

そのうえで1社だけ、賠償額の上限を金額で書いていました。しかも、その上限は重過失や詐欺の場合にも適用されると読める書き方です。

結論:何が免責されているか

免責の対象 社数 備考
通信の遅延・伝送の失敗 20社 全社
システム障害・技術的トラブル 19社 EBC(ウェブサイト利用規約のみ)とEMCTradingを除く
間接損害・派生的損害 19社 Milton MarketsとEMCTradingを除く
重過失・故意・詐欺は免責の対象外という但し書き 18社 EBC、Milton Markets、EMCTradingを除く
逸失利益・機会損失 15社 AXIORY、BigBoss、EBC、HFM、Tradeview、EMCTradingを除く
賠償額の上限を金額で定めている 1社 IS6FX
規約非公開 1社 EMCTrading

「重過失・故意・詐欺は除く」という但し書きが18社にあるのは、読んでおく価値があります。免責はそこで止まる、という設計になっているからです。ただしIS6FXは、その例外にも金額の上限を置いています。

20社の条項

ブローカー 条項 書いてあること
IS6FX 利用規約(Comoros) 重過失・故意の不作為・詐欺についての請求でも、賠償責任の総額は「当該口座への入金額から出金額を差し引いた金額」が上限。さらに機会損失や保有商品の価値下落についても責任を負わない
Axi 顧客契約 第12条 LIABILITY AND INDEMNITY・第12.1条 法が許す最大限の範囲で責任を負わない対象として (a) 逸失利益・収益の損失・機会の損失、(b) 合理的に予見できなかった損失を挙げる
iFOREX リスク警告/顧客契約 極端なボラティリティ、流動性低下、システムメンテナンス、技術的障害による執行の遅延・不能を明示。金融機関や決済業者の破綻による損失にも責任を負わない
TitanFX 利用規約 プラットフォームの最新版を使っていないことで生じた損失に責任を負わない。パスワードの管理と、それによる注文の正確性は顧客の責任
FXGT 利用規約 ボーナスの取消・変更・停止によって生じた結果(ストップアウトによる決済を含む)に責任を負わない
BigBoss 利用規約 第17.12条 当社・役員・従業員・代理人の支配の及ばない事情による履行の遅延または不能、およびそれによる損失に責任を負わない
WeTrade 顧客契約 制裁対象者に関する事象(Sanctioned Persons Event)について、直接・間接・派生的損害、逸失利益を含め一切の責任を負わない
Exness 顧客契約 第13条 Liability and Indemnity 責任と補償の独立した章を置いています
HFM 顧客契約書 第7.3条 顧客は、当社・関係会社・役員・従業員・代理人を、サービス提供に関連して生じたあらゆる責任・損失・費用(弁護士費用を含む)から補償する
AXIORY・XMTrading・MYFX Markets・ThreeTrader・Vantage Trading・Land Prime・Tradeview・XS.com・Milton Markets 各社の顧客契約 免責の章はありますが、上限額の定めは読み取れませんでした
EBC Financial Group ウェブサイト利用規約 読めたのはウェブサイト利用規約のみ。日本居住者の契約先の顧客契約は掲載が見当たりません
EMCTrading 規約文書が公開されていないため判定できない

手が止まった2か所

1つめは、IS6FXです。「当社の重過失、故意の不作為または詐欺についての請求に関する当社の賠償責任の総額は、当該口座への入金額から出金額を差し引いた金額を上限とする」。つまり詐欺が認められたとしても、戻るのは自分が入れた額までで、それ以上は請求できないと読めます。

2つめは、Axiの第12.1条です。免責の一覧の最初が「逸失利益、収益の損失、機会の損失」。次が「合理的に予見できなかった損失」。予見可能性で線を引く書き方で、20社のなかでは条文として整理されているほうです。

原文(英語)を見る ― 出典:IS6FX 利用規約(Comoros)

Without derogating from the above, the Company’s aggregate liability towards the Client in respect of claims of the Company’s gross negligence, deliberate omission or fraud will be limited to the aggregate amount of the deposits less withdrawals made by the Client in the relevant Account.

ゼロカットと、この条項の関係

免責条項は、ゼロカットストップアウトとセットで効きます。「執行が遅れて損失が膨らんだ」場合、その遅れは免責される側にあるからです。

iFOREXのリスク警告は、そこを続けて書いています。極端なボラティリティ、流動性の低下、システムメンテナンス、技術的障害のときに執行が遅延または利用できなくなる場合がある、と。その状況で何が起きても、責任は負わない設計です。

ここから何が言えるか

言えないことから書きます。免責条項があること自体は、どの業界でも普通です。これがあるから不当だ、とは書きません。また、日本の消費者契約法がこうした条項をどう扱うかは、私には判断できません。

言えるのは3つです。

  • システム障害で損をしても、規約上は請求先がありません。19社が明示的に外しています
  • 「重過失・故意・詐欺は除く」は、ほぼ全社にあります。争える余地があるとすれば、条文上はここです
  • 上限を金額で書いた社が1社あります。IS6FX。入金額から出金額を引いた額が天井です

同じことを自分で確かめるには

  • 顧客契約で LIMITATION OF LIABILITYEXCLUSION OF LIABILITYIndemnity責任の制限免責 を探す
  • 免責の一覧に loss of profit(逸失利益)indirect・consequential(間接・派生)system failuredelay があるかを見る
  • gross negligence(重過失)・wilful default(故意)・fraud(詐欺)を除外する但し書きがあるかを見る。なければ、免責の範囲はさらに広くなります
  • shall not exceed/limited to があれば上限つきです。金額の決め方まで読む

争う場所そのものは準拠法と裁判所、資金の扱いは顧客資金の扱いにまとめてあります。

このページについて

2026年9月20日時点で規約アーカイブに保存してある各社の文書から、免責と責任制限の条項を読みました。各社の記事に書いた調査基準日の版です。

確認できなかったこと。社数は、条項の語がその文書に含まれるかどうかを機械的に数えたもので、条文ごとの範囲の広さまでは比べていません。EBC Financial Groupで読めたのはウェブサイト利用規約で、日本居住者の契約先の顧客契約は掲載が見当たりません。EMCTradingは規約が非公開です。これらの条項が日本の法律でどう扱われるかは、私には判断できません。「見当たらない」は、私が探して見つけられなかったという意味です。規約は3か月に一度読み直し、変更があれば直して更新履歴に残します。

免責の条項は、どの業界にもあります。そこではなく記載の整合性で絞るなら、20社の比較表4条件を満たした2社にまとめてあります。合格は「おすすめ」という意味ではありません。その理由も、そのページに書いています。