「海外FXの損失は、給与と相殺できますか」「来年に繰り越せますか」。どちらも検索されている言葉です。答えは、どちらもできません。
ただ、できることもあります。その線引きを、国税庁の資料だけで引きます。先に断っておくと私は税理士ではありません。ここに書くのは公開資料に何が書いてあるかで、個別の判断ではありません。
結論:国内FXとは、税の扱いがまるごと違います
| 国内FX | 海外FX | |
|---|---|---|
| 所得の区分 | 先物取引に係る雑所得等(申告分離課税) | 雑所得(総合課税) |
| 給与などとの損益通算 | できない | できない |
| 損失の繰越 | 翌年以後3年 | できない |
| 国内FXの利益との相殺 | — | できない |
| 他の雑所得との相殺 | 先物取引の区分内のみ | できる |
なぜ海外FXは申告分離課税にならないのか
国税庁のタックスアンサーは、申告分離課税(先物取引に係る雑所得等)の対象をこう定めています。「市場デリバティブ取引」または「店頭デリバティブ取引(『第一種金融商品取引業者』または『登録金融機関』を相手方とする取引に限ります。)」。
ここが分かれ目です。相手方が日本の第一種金融商品取引業者か、登録金融機関であることが条件になっています。海外FXブローカーはこれに当たりません。金融庁の警告一覧で確認したとおり、執筆時点で調べた20社のうち18社が無登録業者として掲載されています。
だから特例の対象外になり、総合課税の雑所得として扱われます。この一点から、繰越も国内FXとの相殺も落ちていきます。
できないこと1:給与や事業の所得と相殺する
国税庁は、他の所得と損益通算できる所得を4つに限定しています。不動産所得・事業所得・譲渡所得・山林所得。雑所得は入っていません。
そのうえで、こう明記されています。「配当所得、給与所得、一時所得および雑所得の金額の計算上損失が生じることはありますが、その損失の金額は他の各種所得の金額から控除することはできません。」
つまり、海外FXで100万円負けても、給与所得は1円も減りません。ここは制度としてそうなっています。
できないこと2:来年に繰り越す
国内FXなら、損失を翌年以後3年内の各年分の「先物取引に係る雑所得等」から控除できます。これは申告分離課税の特例に付いている仕組みです。
海外FXは特例の対象外なので、この繰越がありません。その年の損失は、その年で終わります。翌年に利益が出ても、前年の損失は使えません。
ここがいちばん誤解されている部分だと思います。「FXの損失は3年繰り越せる」という説明は、国内FXの話です。
できないこと3:国内FXの利益と相殺する
国内FXは申告分離課税、海外FXは総合課税の雑所得。課税の区分そのものが違います。区分が違うので、一方の損失でもう一方の利益を消すことはできません。
できること:他の雑所得との相殺
ここは見落とされがちです。雑所得どうしなら、同じ年の中で相殺できます。総合課税の雑所得に入るもの同士、という意味です。
暗号資産の利益、アフィリエイト収入、原稿料など、総合課税の雑所得に入るものが対象です。海外FXで損失が出た年に、こうした雑所得の黒字があれば、その分は差し引かれます。
ただし相殺できるのは、その年のうちだけです。余った損失を翌年に持ち越すことはできません。
申告が必要になる線
給与を1か所から受けていて、その全部が源泉徴収の対象なら、給与所得・退職所得以外の所得の合計が20万円を超えると確定申告が必要だと国税庁が書いています。給与の年収が2,000万円を超える人も対象です。
20万円は利益ではなく所得の額です。必要経費を差し引いたあとの数字になります。経費の範囲は個別の判断なので、ここでは書きません。
利益が税務署にどう伝わるかは税務署に伝わる経路に書きました。100万円を超える国外からの送金は、日本の金融機関が調書を出します。
このページについて
出典は国税庁タックスアンサーの「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」「損益通算」「給与所得者で確定申告が必要な人」です。2026年9月19日に確認しました。
制度は改正されます。読み直して変更があれば直し、更新履歴に残します。個別の判断は税務署か税理士に確認してください。
損益通算の扱いは、会社を変えても同じです。会社ごとに違うのは規約のほうで、その比較は20社の比較表と4条件を満たした2社にまとめてあります。合格は「おすすめ」という意味ではありません。その理由も、そのページに書いています。