海外FXの出金は、ブローカーから自分の銀行口座へ一直線に届くわけではありません。多くの場合、あいだに決済業者が1社入ります。bitwallet や STICPAY と呼ばれる、ウォレット型の送金サービスです。
ここを読んでいませんでした。出金が止まりうる場所は、3か所あります。ブローカー、決済業者、日本の銀行。1番目と3番目は読んだので、今回は真ん中の層の規約を原文で読みました。
結論:3か所目は、いちばん情報が少ない
2社の規約を読んで、いちばん驚いたのは条項の中身ではありませんでした。契約相手が誰なのか、という一点です。
| 項目 | bitwallet | STICPAY |
|---|---|---|
| 契約先の法人 | 記載が見当たりません(「bitwallet Service Group」とのみ) | Extimit LTD(登録番号 3-102-945230、コスタリカ) |
| 所在地・登録番号 | 利用規約・会社情報・プライバシーポリシーのいずれにも記載なし | コスタリカ。登録番号あり |
| 監督当局 | 記載なし | 記載なし |
| 出金の保留 | 第6条第2項・第14条第3項 | 3.5(裁量で取引を拒否できる) |
| アカウントの停止 | 第14条第2項・第4項 | 6.1・6.1.7 |
| 日本の資金移動業者登録 | 一覧に見当たりません | 一覧に見当たりません |
bitwallet:通知すれば、理由を問わず終了できる
条項から見ます。第6条第2項は「当社が必要と判断した場合には、利用者が出金できるウォレット残高の金額を制限することができる」とし、続けて「利用者の出金を留保することもできる」と書きます。
第14条第2項は、第13条(禁止行為)に違反した場合「またはその可能性があると判断した場合」に、アカウントやサービスの閉鎖・停止・制限ができるとします。第13条の禁止行為には「身元情報・利用者情報の調査への協力拒否」が入っています。
第14条第3項は「利用者が受領する支払の一部または全部を保留することができる」。そして第14条第4項がこうです。
「当社は、利用者に通知を行い、理由を問わず、いつでも、当該アカウントおよび利用者による本サービスの利用を終了することができる」。
「理由を問わず、いつでも」と書いてあります。通知は要る、という形です。そして解除や復旧についての定めは、私が読んだ範囲では見当たりませんでした。
検索では「出金の上限はいくらか」がよく調べられています。規約には具体的な金額が書かれていません。「当社が必要と判断した場合」に制限できる、とだけあります。
bitwallet の契約先法人が、規約から読み取れません
ここが今回いちばん引っかかった点です。利用規約は「bitwallet Service Group(以下「当社」という)」としか書いていません。法人名でも、登記された名称でもありません。
会社情報のページには「弊社は2012年にシンガポールに設立以降」とありますが、正式な法人名・所在地・登録番号・監督当局・ライセンスの記載は見当たりませんでした。プライバシーポリシーも同じで、末尾に「bitwallet Service Group」とあるだけです。
これは、このサイトがブローカー20社に当てている1つめの足切り条件そのものです。「日本居住者の契約先法人が規約に明記されている」。決済業者に同じ物差しを当てると、bitwallet はここで止まります。
サービスが悪いと言っているのではありません。誰と契約しているのかが、公開文書から読み取れない、と言っています。何かあったときに相手を特定できるかどうかが変わります。
STICPAY:契約先はコスタリカの Extimit LTD
STICPAY は逆でした。利用規約の定義にこう書いてあります。「”STICPAY” means Extimit LTD (Company Registration No. 3-102-945230), a company incorporated in Costa Rica.」
法人名と登録番号、設立国が明記されています。ここは bitwallet と対照的です。ただし監督当局の記載は見当たりません。登記はあるが、金融当局の監督を受けているとは書かれていない、という形です。
条項は6.1が「we may, at our discretion, suspend or limit access to your Account」。その事由のひとつ6.1.7が「If you refuse to cooperate in an investigation or to provide adequate identity or security information」です。3.5は、不正と認める場合に単独の裁量で取引を拒否できると定めます。
どちらも、日本の資金移動業者の登録一覧に見当たりません
金融庁が公表している資金移動業者の登録一覧(令和8年7月31日現在、全84業者)を確認しました。bitwallet、ビットウォレット、Extimit、STICPAY、スティックペイ。いずれの名称も見当たりません。
登録がない=違法である、という意味ではありません。私が確認したのは、この一覧に名前が見当たらないというところまでです。海外の法人が海外の法律のもとで提供しているサービスをどう評価するかは、また別の話になります。
ただ、読者にとって効く違いがひとつあります。日本の登録業者であれば、日本の当局に対する窓口があります。一覧に見当たらない以上、その前提は置けません。この構造は補償基金の対象かで20社について書いたことと同じです。
2026年6月1日から、この層の制度が変わりました
調べていて、いちばん驚いたのがここです。この決済業者という層そのものを対象にした法改正が、すでに施行されています。
令和7年の資金決済法改正です。
改正されたのは資金決済法2条の2。国境を跨ぐ収納代行(クロスボーダー収納代行)が「為替取引」に該当することになりました。
受取人からの委託などで債務者から資金を受け入れ、受取人に引き渡すことで、国内から国外へ、または国外から国内へ資金を移動させる行為です。
日付を並べます。法律の公布が2025年6月13日。政令の公布が2026年5月22日。そして施行が2026年6月1日です。この記事を書いている時点で、すでに3か月以上が経っています。
為替取引に当たれば、日本の資金移動業の登録が必要になります。ただし内閣府令で適用除外の類型が定められていて、銀行や資金移動業者への再委託、エスクロー、プラットフォーム事業者が行うものなど7つが挙げられています。どの業者がどれに当たるかは、外からは分かりません。
金融庁はこの改正について相談窓口を設け、その後終了しています。それだけ照会が来る論点だった、ということです。
施行から3か月。私が確認できたことと、できなかったこと
そこで、いまの状態を見ました。
資金移動業者の登録一覧(令和8年7月31日現在、全84業者)に、bitwallet も STICPAY も見当たりません。施行後に作られた一覧です。
bitwallet のお知らせ一覧(2026年7月30日付まで)にも、この改正への言及が見当たりません。並んでいるのは休業日の案内、システムメンテナンス、銀行入金の手続き変更です。
ここから先は、私には判定できません。適用除外のどれかに当たるのかもしれません。そもそも規制の対象ではないのかもしれません。別の経路に切り替えているのかもしれません。確認できたのは、登録一覧に名前がなく、公開されたお知らせにも説明が見当たらない、というところまでです。
ただ、読者にとって言えることはあります。自分が使っている出金経路が、制度上どう扱われているのかを、公開情報から確かめられない。それが現状だ、ということです。
3つの層は、同じ構造をしていました
並べると、はっきりします。どの層も「確定」ではなく「疑い」や「裁量」で発動します。
- ブローカー:出金を保留できる条項が、執筆時点で調べた20社のうち17社に。アービトラージでは「疑い」で足りると書く社がある
- 決済業者:bitwallet 第14条第2項「その可能性があると判断した場合」。STICPAY 6.1「at our discretion」
- 銀行:「マネー・ローンダリング等への抵触のおそれがあると判断した場合」
3つとも、確定を必要としていません。そして解除について書いているのは、私が読んだ範囲では銀行1行だけでした。銀行側で止まる条項に条文を置いてあります。
つまり「出金拒否された」と書かれた投稿が、3つの層のどこの話なのかは、当人にも分かりません。ブローカーの画面は「送金済み」、ウォレットには残高が見える、でも銀行に着かない。こういう形になりうるからです。読み方は「出金拒否」「詐欺」と書かれた話を、自分で確かめる方法に書きました。
自分が使う経路を確かめる手順
- いま自分の出金が、何社を経由しているかを数える。ブローカー → ウォレット → 銀行なら3社です
- そのウォレットの規約で契約先の法人名を探す。見つからなければ、それ自体が記録すべきことです
- 規約を「停止」「保留」「裁量」「terminate」「suspend」で検索する
- 解除について書いてあるかを見る。ここがいちばん差の出る場所でした
- 読んだ日付を控える。規約は改定されます
なお、この記事で取り上げた2社は、執筆時点で調べた20社の記事本文で私が触れている範囲ではbitwallet が5社、STICPAY が3社です。各社の対応状況を網羅的に調べた数字ではありません。自分のブローカーがどこを使うかは、そのブローカーの入出金ページで確認してください。
このページについて
条文は各社の公開ページから、2026年9月19日に取得しました。bitwallet は日本語の利用規約・会社情報・プライバシーポリシー、STICPAY は日本語ロケールの利用規約です。金融庁の資金移動業者登録一覧は令和8年7月31日現在のものを使いました。
ここで確認しているのは、規約に何が書いてあるかです。実際に凍結された人がいるかどうかは確認していません。規約は3か月に一度読み直し、変更があれば直して更新履歴に残します。
出金の条件そのものは出金の条件に、ブローカー側の条項は出金が止まる条項、入金の側は入金で止まる4か所にあります。
決済業者の条項も、ブローカーとは別に効きます。ブローカー側だけを同じ基準で見るなら、20社の比較表と4条件を満たした2社にまとめてあります。合格は「おすすめ」という意味ではありません。その理由も、そのページに書いています。