「海外FXの出金で、日本の銀行口座が凍結された」。この話は、検索されている形がかなり具体的です。銀行名まで付いています。ただ、これはブローカーの規約の話ではありません。読む相手が変わります。
そこで今回は、日本の銀行の預金規定を原文で読みました。手順はいつもと同じです。条番号を控え、書いてあることだけを並べ、取れなかったものは取れなかったと書きます。
先に、いちばん大事なことを書いておきます。「海外FXだから制限する」と書いてある規定は、ひとつもありませんでした。書いてあるのは別のことです。
結論:どの銀行にも、ほぼ同じ条項があります
読んだ4行を並べます。ネット銀行もメガバンクも、書きぶりはほとんど同じでした。
| 銀行 | 規定と条項 | できると書いてあること |
|---|---|---|
| 楽天銀行 | 楽天銀行口座取引規定 第11条の2 第4項 | マネロン・テロ資金供与・経済制裁関係法令その他法令等に抵触するおそれがあると判断した場合、取引の全部または一部を停止、または解約 |
| ドコモSMTBネット銀行(旧 住信SBIネット銀行) | 銀行取引規定 第19条 第3項(11)(12) | 資料の提出がないとき、または抵触のおそれがあると判断したとき、事前通知なく停止・解約。解除の定めあり |
| 三菱UFJ銀行 | 普通預金規定 第13条(取引等の制限)第1項・第4項 | 回答がないとき払戻し等を一部制限。抵触のおそれがあると判断した場合、外為取引全般を制限 |
| みずほ銀行 | みずほ普通預金規定 第12条(取引の制限等)第2項・第3項 | 同じ構造。制限対象に外国送金・外貨預金・外貨両替・外為取引への振替取引全般を明記 |
銀行を変えても、条項は消えません。検索では「ソニー銀行が」「楽天銀行が」と銀行名つきで語られますが、規定の文面という点では差がほとんどありませんでした。
引き金として書かれているのは、2つだけ
条文を読み比べると、制限の引き金は2種類に整理できます。どちらにも「海外FX」という言葉は出てきません。
1. 確認や資料の求めに応じないとき
三菱UFJ銀行の普通預金規定第13条第1項は「預金者が当行からの各種確認や資料の提出の依頼に正当な理由なく別途定める期日までに回答しない場合には、払戻し等の預金取引の一部を制限する場合があります」と書きます。
みずほ銀行も第12条第2項で同じ構造です。「何ら回答なく指定された提出期限が経過した場合」に一部を制限する、と。
ドコモSMTBネット銀行は第19条第3項(11)で「提出期限を指定して各種確認や資料の提出を求めたものの、提出がないとき」を、事前通知なく停止・解約できる事由に挙げています。
ここは自分で防げる部分です。銀行から届く「お客さま情報のご確認」を放置しない。それだけで、この引き金は引かれません。
2. マネロン等に抵触するおそれがあると判断したとき
もうひとつは判断の話です。楽天銀行第11条の2第4項は「マネー・ローンダリング、テロ資金供与もしくは経済制裁関係法令その他法令等に抵触する取引に利用され、またはそのおそれがあると判断した場合」と書きます。
三菱UFJ銀行第13条第4項は、判断の材料まで書いています。確認や資料提出への対応、具体的な取引の内容、預金者の説明内容、その他の事情を考慮する、と。
「おそれ」で足ります。違法だと確定している必要はありません。ここは、ブローカーの規約でアービトラージの「疑い」が要件になっているのと同じ構造です。
「外為取引全般」が名指しされている
ここがいちばん、海外FXの出金に近い部分です。三菱UFJ銀行第13条第4項は、制限できる取引を具体的に列挙しています。
- 不相当に多額または頻繁と認められる現金での入出金取引
- 外国送金、外貨預金、両替取引、貿易取引等外為取引全般
- 抵触のリスクが高いと判断した個別の取引
みずほ銀行第12条第3項もほぼ同じで、「外国送金・外貨預金・外貨両替取引・貿易取引等外為取引への振替取引全般」と書きます。
海外FXの出金は、海外からの送金として着金します。規定の言葉でいえば、ここに入ります。海外FXだから名指しされているのではなく、外為取引だから入る、ということです。
なお、みずほ銀行は第12条第4項で「3年以上利用のない預金口座」も制限対象にしています。出金用に作ってそのまま放置した口座は、別の理由で止まりうるということです。
解除について書いている銀行と、書いていない銀行
ここが銀行ごとにいちばん差の出た部分です。
ドコモSMTBネット銀行の第19条第3項(12)には、抵触のおそれが解消されたと認める場合には制限を解除する旨が書かれています。条文の中に、戻る道がある形です。
PayPay銀行は規定そのものを取れませんでしたが、公開ページに「ご回答いただければ口座への取引制限は即時解除されます」と書いています。
一方、楽天銀行・三菱UFJ銀行・みずほ銀行の該当条項には、解除の手続きが書かれていません。止められる条件は書いてあるが、解ける条件は書いていない。これは、ブローカーの出金保留条項で見たのとまったく同じ構造です。
条項の有無で銀行を選ぶ意味はありません。どこにもあるからです。見るなら、解除について書いてあるかどうかのほうです。
取得できなかったもの
ソニー銀行は取引約款のページに到達できませんでした。PayPay銀行は規定のページがアクセスを拒否しました。どちらも条文を読めていないので、条項としては載せていません。
見当たらないことと、存在しないことは違います。読めていないだけです。読めたら追記します。
これはブローカーの規約の話ではありません
念のため、はっきり分けておきます。この記事で読んだのは日本の銀行の預金規定です。海外FXブローカーの利用規約ではありません。
ブローカー側が出金を止められると定めた条項は、執筆時点で調べた20社のうち17社にありました。出金が止まる条項にまとめてあります。止まりうる場所が2か所ある、ということです。
そして、どちらで止まっているのかは当人にも見分けがつきにくい。ブローカーの画面上は「送金済み」なのに着金しない、という形になるからです。「出金拒否された」と書かれた投稿の一部は、実際にはこちら側かもしれません。読み方は「出金拒否」「詐欺」と書かれた話を、自分で確かめる方法に書きました。
あいだにもう1社、入っています
正確にいうと、止まりうる場所は3か所です。ブローカーと銀行のあいだに、決済業者が1社入ります。bitwallet や STICPAY といったウォレット型の送金サービスです。
そちらの規約も読みました。bitwallet は契約先の法人名が公開文書から読み取れず、STICPAY はコスタリカの Extimit LTD と明記されています。どちらも日本の資金移動業者の登録一覧には見当たりません。条文は決済業者で止まる条項に置きました。
自分の銀行の規定を確かめる手順
難しくありません。3分で終わります。
- 自分の銀行のサイトで「規定」「約款」を開く
- 普通預金規定(ネット銀行では銀行取引規定・口座取引規定)を探す
- ページ内を「制限」「マネー・ローンダリング」「解約」で検索する
- 解除について書いてあるかを見る。ここが読みどころです
- 開いた日付を控えておく。規定は改定されます
背景にあるのは金融庁の「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」で、最新は令和8年3月31日付です。各行の規定がそろって似た書きぶりになっているのは、これを踏まえた改定が入っているためです。
このページについて
条文は各行の公開ページから、2026年9月19日に取得しました。ドコモSMTBネット銀行の銀行取引規定は2026年8月20日改定版です。規定は改定されます。読み直して変更があれば直し、更新履歴に残します。
ここで確認しているのは、規定に何が書いてあるかです。実際に凍結された人がいるかどうかは確認していません。この区別は、このサイトのすべてのページで同じです。
出金の条件そのものは出金の条件に、名義や返金経路の制約は出金のルール、入金の側で止まる条項は入金で止まる4か所にあります。
銀行側の条項は、どのブローカーを使っていても効きます。ブローカー側の条件を同じ基準で見るなら、20社の比較表と4条件を満たした2社にまとめてあります。合格は「おすすめ」という意味ではありません。その理由も、そのページに書いています。